世界のモンスターを描く:コカトリス

フィールドノート(調査・資料収集)

ヨーロッパのニワトリ

世界各地には多種多様なニワトリが存在するので、コカトリスの素晴らしいリファレンスになります。ヨーロッパの品種の一部には、「アンテナのような奇妙な形状の突起物」「くちばしの付け根から垂れ下がった耳たぶのような肉垂」「頭頂部の薄いとさか」「カールした冠羽」があります。これらの特徴を使えば、面白いシルエットを作成できるでしょう。垂れ下がった肉垂は不安をあおると同時に、視覚的な重量感と躍動感を強めてくれます。

ロードアイランドレッドのオス

ロードアイランドレッドのオスは、あらゆる品種の中で最も印象的なとさかを持っています。頭頂部の大きなとさかには硬いしわがあり、色は鮮やかな赤です。そして、印象的なとげのシルエットは危険をはらんでいます。オスはこのとさかでメスの気を引くと同時に、ライバルを威嚇して追い払います。それが通用しないときは、かかとの鋭い蹴爪で戦います。とさかのルックと動きが気に入ったので、コカトリスのデザインに似た要素を取り入れることにします。

ヒクイドリ

ヒクイドリは、オーストラリアに生息する大型の飛べない鳥です。角のような形をしたカスク(かぶと)は主に飾りですが、敵に頭突きして決定的なダメージを与えることもあります。年老いたヒクイドリのカスクに見られるごつごつとした亀裂や傷は、過去の戦いで勝利した証です。こうした特徴はコカトリスの凶暴さを強調し、デザインを面白くしてくれるでしょう。さらに、しわの寄った首は、ハゲタカなどの腐肉を食べる動物を連想させます(コカトリスもおそらく腐肉を食します)。

ムチヘビ

一般的に、コカトリスは動物寓話集で「ヘビ」として描かれます。中でもムチヘビ(東南アジアの熱帯雨林に生息、うねうねとした体が特徴)に似ています。それは、薄いリボンのような形をした抜け目ない樹上のハンターです。うろこに沿って派手なストライプのマークがあり、体を曲げて驚異の模様を作ります。私の想像するコカトリスは、魅惑的な模様のカーブした尻尾で獲物をおびき寄せ、毒牙の餌食にします。

イーチー

デザインの参考となる動物は現代にもたくさんいますが、数百万年前にもこの伝説にうってつけのクリーチャーが存在しました。それは「イーチー」という小型の獣脚恐竜で、ジュラ紀中期から後期にかけて最も繁栄したそうです。羽毛の生えた鳥の体に、ドラゴンを彷彿とさせる膜状の翼がついています。部分的に羽毛で覆われた奇妙な翼の構造は、現代の動物や絶滅種には見られません。こうした体の基本計画が、私の考えるコカトリスのルックを上手く形作るのです。

人は「羽=飛ぶこと」とよく考えますが、飛行とは無関係な羽の種類も数多く存在します。ダウン(綿羽)は最もふわふわした羽です。その層が体全体の熱を保ち、外側の硬い羽が逆立ったときにのみ見えます。基部にダウン、先端に硬いセグメントを持つ羽(半綿羽)は、複数の機能を果たします。フェザー(正羽)は鳥を保護する外側の層を形成します。羽でフォームを描くときは、このフェザーに細心の注意を払いましょう。

羽の構造を研究するときは、地元の動物園、水族館、猛禽類センターなどの関連施設に足を運び、実物を参考にしましょう。そうすれば、動物を立体的に構築する羽の構造をじっくり観察できます。体全体に羽の層を描くとき、私はよく交差する線でグリッドを作成。実際に羽で覆われているようにフォームの輪郭に沿わせます。こうして引き伸ばされたグリッドの「四角形」が、上下に重なり合った羽の先端になります。

羽の輪郭を描くときは、それが光の影響を受けた立体的なオブジェクトであることを意識しましょう。羽弁は2つに分かれて、光源に最も近い側は光り輝き、反対側には影が落ちます。図ではこの原理をグリッド内の羽の先端に適用しています。また、すべての羽を1 枚残らず描かないでください。猛禽類の胸部のフォームにある影は、強い明度で描くことができます。こうして全体にメリハリをつけ、目を休めるスペースを作りましょう。

隆起した角

角は「装飾」であり、「動物界で起こる戦い」を示す重要な特徴です。ヤギなど哺乳類の角は、特別な毛穴から生えています。そしてこれらは戦いに使われるため、非常に隆起しています(らせん状に伸びていることもあります)。一方、カメレオンなど爬虫類の角は、うろこが進化したものです。これは取っ組み合いに使われ、哺乳類のものほど頑丈ではありません。また、ヒクイドリのような鳥のカスクは骨の芯で形作られ、外側は薄い革のような質感で覆われています。この外装は戦いや老化で著しく摩耗します。

これらの角はすべて同じ基本構造(ケラチンというタンパク質)で作られています。この属性をすべて組み合わせれば、機能的で、視覚的にも面白いデザインを作成できるでしょう。私は大きなカスクのようなフォームで、戦闘の衝撃にも耐えられる盤石な基礎を作成。その後ろに、ヒツジの角に似た鋭いらせんを取り入れました。これはカメレオンの角のように、先端に向かうにつれ徐々に細くなります。この繊細な形状は、シカの枝角のように戦闘でライバルと組み合うために使われるほか、健康と強さの象徴にもなります。

こうした複雑な角を描くときは各要素を自然に統合し、テクスチャからテクスチャへと徐々に遷移させましょう。下のスケッチでは、角先端の繊細なリングが中間の隆起に流れ込み、そしてカスクの基礎の滑らかな面に移り変わっていく過程に注目してください。ここでは、フォーム全体にわたって、さまざまな形状とテクスチャを試していますが、バリエーションを3~4種類に限定し、デザイン全体に視覚的な一貫性を持たせました。また、頻繁に使われる領域にひびや摩耗を加え、時の流れと数々の戦いに勝利してきたことをほのめかしています。