痣、銃創..、リアルな傷跡の描き方

英国のイラストレーター/リード アーティスト Gina Nelson氏 が、肌や皮下組織にさまざまな傷跡をペイントするプロセスを紹介します


Gina Nelson
リード アーティスト|英国


はじめに

このチュートリアルでは、肌のリアルな傷をペイントするためのヒントとトリックを紹介します。特に「痣(打撲傷)」「銃創」「さまざまな種類の傷跡」を見ていきます。私は Photoshop を使いますが、これらの手法やテクニックは他のデジタルペイント ソフトでも応用できるでしょう。制作にはペンタブレットが必須で、私は ワコム の製品を使っています。

なお、このチュートリアルでカスタムブラシは一切使っていません。以下に示す傷は、デジタルペイントソフトの標準のチョークブラシやエアブラシでペイントすることができます。

傷跡をペイントしましょう

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01 痣

ゾンビのテクスチャを作成する場合でも、怪我をしたキャラクターのイラストを描く場合でも、肌や皮下組織の傷を受けた場所に現れる「痣」を理解しておくと役立ちます。これはデジタルアートでよく見られます。

痣の最初の注意点として、さまざまな色で構成されていることが挙げられます。それらの色は時間経過を表し、痣ができた原因について多くのことを教えてくれます。

痣はさまざまな色で構成されています

02 ブラシ

痣を作るため、Photoshop の[レガシーブラシ]>[チョークブラシ]を選択、[ブラシ設定]で 「散布」を適用します(テクスチャブラシでも似たような効果が得られるでしょう)。痣は皮下で毛細血管が破裂してできるので、滑らかにならないブラシを使うのがポイントです。また、破裂した毛細血管の間には隙間があるので、まだら模様やテクスチャで表しましょう。

[散布]を設定したチョークブラシを使います

03 痣の変化

一般的に、痣の色は治癒のさまざまな段階を示し、原因となった最初の怪我の大きさや深刻さを説明するのに役立ちます。怪我をすると出血が始まるので、痣は通常、濃いピンク色に見えます。そして、最初の傷から遠ざかるにつれて出血が少なくなるため、縁の色はやや薄くなります。

時間が経過すると、色はピンクから濃い紫や青みがかった色へ変化していきます(ヘモグロビンにより)。治癒している間、身体はヘモグロビンの分解を始めます。これにより、ヘモグロビンに含まれるアミノ酸と鉄分が分離して、痣の色が紫から茶緑色(ビリベルジン)に変化します。治癒プロセスの最終段階では、ビリルビンという酵素が生成され、痣は黄色くなります。完治すると痣は消えていきます。

これらの色をすべて含む痣がよく見られるのは、それぞれで治り具合が異なるからです。通常、その時点の怪我の程度に関係します。たとえば、腕に石がぶつかったところを想像してください。おそらく、接触した箇所が最もダメージを受けて出血し、治癒に時間がかかるでしょう。しかし、外側の部分は接触箇所よりも早く治癒します。そのため、痣の中心部が紫になり、外側が黄色くなることがよくあります。

これを使って、痣の原因となったアクションを説明することができます。たとえば、絞殺による打撲では、被害者の首の周りに紫色の手の跡ができ、外側に向かって薄い打撲傷が見られるでしょう。

痣の色は治癒の段階を表します

04 銃創

銃創(銃弾で受けた傷)には、たいてい「入口」と弾が通過したときの「出口」がありますが、これらの傷はそれぞれ異なります。たとえば、キャラクターが逃げるときに撃たれた状況など、ストーリーを伝えるのに役立てることができます。

銃創は、入口の傷か出口の傷かで見え方が異なります

05 ブラシ

ここでは、Photoshop のレガシー チョークブラシを使い、ブラシ設定で「散乱」を適用します。標準のエアブラシも使いますが、追加の設定はありません。

チョークブラシとエアブラシを使います

06 弾丸の入口の傷

弾丸が貫通する間にほぼ止血するため、侵入口は非常にきれいで出血も少ないです(もちろん弾丸の種類にもよります)。また、弾丸が貫通して体外に出ないなら、まったく出血しない傷もあるでしょう。これらの傷は、血液が最も濃く溜まっている中心部は暗くなり、周辺部は明るくなる傾向があります。傷の外周は少し腫れ、時間が経過していれば多少の痣も見られるでしょう。

弾丸の入口の傷

07 弾丸の出口の傷

出口の傷は入口と異なり、とても散らかった状態です。肌や皮下組織が引き裂かれ、ひどい傷に見えるかもしれません。弾丸が押し出されたところから、大きく皮膚片がはみ出していることが多く、小さなものから非常に大きなものまで、さまざまな裂け目を伴います。弾丸が貫通した出口の傷の周りに、血液が飛び散っていることもよくあります。

弾丸の出口の傷