コンセプトアート『ヴァンパイア』のメイキング

ディテールの作成

この時点で大事なことに気づき始めました。ここまでずっとサムネイルをベースに膨らませてきましたが、サムネイルですから正確ではありません。その不正確さを、ほとんどそのまま最終バージョンまで引きずってきてしまったのです。プロポーションです。キャラクターがずいぶん背が高く見えるだけではなく、肋骨の位置が低すぎます。さらに、左腕も長すぎます。こうした誇張によって、よりデザインが引き立つ場合がありますが、この例では、小さい頭部と長い腕によって、ヴァンパイアに気味の悪さが醸し出されてしまっています。また、頭を小ぶりにするというのは、キャラクターのヒーローらしさを高め、ある種のパワーを表現するときに役立つテクニックです!

しかし今回は、少し寸を詰めることにします。この作業には、[編集]>[変形]>[拡大・縮小]を使います。まず、左腕(向かって右側の腕)を新規レイヤーに複製し、そこで適切な位置に動かした後、消しゴムツールを使って元の線とブレンドし、それから新旧2つのレイヤーを結合します。図11の赤のポイントが元の位置です。どのように変更したかが分かります。

図11:赤のポイントが元の位置です。どのように変更したかが分かります

身体構造のプロポーションを修正したところで、もう少しディテールを加えます。地面にしっかりと立たせるのです。両脚はガウンですっぽり覆ってしまおうとか、イメージの下の方を暗くしてキャラクターが宙に浮いているような感じにしようとか、あれこれ考えを捻りましたが、最終的にはブーツを履かせてガウンに小さな飾りを付ける案に落ち着きました(図12)。グラデーションをもう1つ追加、イメージの下の方を暗くして、白い肌の色が浮かび上がるようにしました。

図12:最終的にはブーツを履かせてガウンに小さな飾りを付ける案に落ち着きました

ガウンの飾りはどこに置いてもしっくりせず、あちこち動かして悩んでいましたが、最終的に、左足のブーツの縁に落ち着きました。置いた瞬間、ここしかないと思いました。この飾りのおかげで、絵の下のほうにも視線を引くちょっとしたアクセントができました。

もう1つ、ずっと悩み続けていたのが両手です。左右対称すぎて、まるで王座にでも座っているかのようです。そこで、ヴァンパイアの性質について、また獲物を魅了し、誘惑する、彼らに備わる有名な能力について、いま一度よく考えてみました。左手を上向きに変え、迎え入れるような感じにしたのです(図13)。

図13:左手を上向きに変え、迎え入れるような感じにしたのです

キャラクターにリアリティを出したいときは、何と言ってもシンメトリ(対称性)を崩すのが一番です。しかし、図14を見ると、ヘソの位置が身体の中心線から大幅にずれてしまっていて、これでは奇妙です。

図14:ヘソの位置が身体の中心線から大幅にずれてしまっていて、これでは奇妙です