コンセプトアート『ヴァンパイア』のメイキング

仕上げ

髪の毛は、広がりを抑えてシルエットを整えた後、別レイヤーで少し長くし、ハイライトも追加しました。別レイヤーにしたのは、万が一、左右を入れ替えたり元の長さに戻したりしたくなった場合を考えてのことです(図15)。「eye color」という新しいレイヤーを追加し、[乗算]モードに設定して、両目の周りの赤みを加えています。

図15:髪の毛は、広がりを抑えてシルエットを整えた後、別レイヤーで少し長くし、ハイライトも追加しました

このチュートリアルの間に背景色が変わっていたことに気がついたでしょうか。キャラクターとは別のレイヤーにしておくと、こういう利点があります。全体の明暗を変えたい場合もあるでしょうし、このヴァンパイアのケースに限って言えば、血飛沫のテクスチャを追加したいと思う場合もあるでしょう(図16)。このカスタムブラシは、かなり前に作ったもので、めったに使いませんが、血飛沫のペインティングにはうってつけでしょう。血飛沫をペイントするために、もう1つレイヤーを追加します。

図16:このヴァンパイアのケースに限って言えば、血飛沫のテクスチャを追加したいと思う場合もあるでしょう

イメージはほとんど完成していますが、さきほど、左手を変更したので、右手との一貫性が崩れ、ちぐはぐな感じがします。手首と前腕の角度が取ってつけたように不自然で、サムネイルに忠実であり過ぎた弊害がここにも出ています。鏡を見ながらポーズを検討した結果、ジェスチャーを変えることにしました。その結果が図17です。

図17:鏡を見ながらポーズを検討した結果、ジェスチャーを変えることにしました

おわりに

ヴァンパイアを描くのは初めてだったので、楽しく取り組みました。何と言っても、実際にプロジェクトが始まるまで、ヴァンパイアがどんな姿形をしているのかすら、よく知らなかったのですから。

アイデアや感覚がペインティングの過程で徐々に発展し、形をなしていくのを見るのは、実に面白いものです。チュートリアルを通してキャラクターがどのように変化していくかもよく分かったと思います。正確なルールに沿っていない部分もあるでしょう。たとえば、ガウンが身体にまとわりつく感じなど、ファッション業界のプロから見れば山ほどおかしな点があるに違いありません! しかし、アートとしての観点からは、ガウンのひだが作りだす流れやリズムが気に入っています。

ブーツのデザインと両手のジェスチャーは、制作の過程でずいぶん良くなりました。ガウンの袖口が片方だけ裂けてボロボロになっているのもまた、最初から意図していたことではありません。しかし、このように作業の流れの中で新しい方向性が生まれ、作り手自身を驚かせてくれるところも、クリエイティブな作業の醍醐味でしょう!そして、これが完成作品です(図18)。

図18:これが完成作品です

※このチュートリアルは、書籍『Digital Painting Techniques 2 日本語版』にも収録されています (※書籍化のため一部変更あり)。


編集:3dtotal.jp