コンセプトアート入門:コンセプトアートの主なソフトウェア
コンセプトアーティスト Jan Urschel が、コンセプトアートの仕事に役立つ 主なソフトウェアについて 解説します
はじめに
ここでは、プロの環境で触れる可能性のある業界標準のソフトウェアについて学びます。他のデジタルアート プログラムとの違いや、正しいソフトウェアを知り、潜在的な雇い主にアピールする方法を見ていきましょう。
01 Photoshop
Photoshop は、コンセプトアーティストを雇用する4つの主要業界において、最もよく使われているソフトウェアです。もともと写真編集ツールとして作られたため、コンセプトアーティスト向けの特別仕様ではありません。しかし、画像編集ツール、汎用性、そして簡単に調整できるブラシによって、この職種における最適かつ最強のソフトウェアとなっています。
コンセプトアーティストは、スタジオやアートディレクターの要求に応えるため、さまざまな方法で仕事をすることが求められます。たとえば、写真から簡単なコンセプトを制作することや、テクスチャブラシを使った昔ながらのタッチでシーンをペイントすることもあるかもしれません。広範囲なツールセットはプロセスを合理化してくれる一方、さまざまな方法でそれぞれの目標を達成するのに利用できます。
ゲームや映画業界で働く多くの 3Dアーティストも使用しているため、コンセプトアーティストが作成したアセットやテクスチャは、プロダクション パイプライン後半の3D制作でもよく利用されています。このような効率化やアセットの再利用は、時間や費用の節約に繋がるので、プロの業界では極めて重要です。
他のソフトウェアに比べて使いづらいところもあります。アーティスト向けの仕様ではないため、ツールや設定の名称がわかりにくく感じられることが多々あります。しかし、プロのコンセプトアーティストの多くが選択するソフトウェアなので、ペイント方法を説明する専門書やオンライン リソースの量は、以下のリストのどのソフトウェアよりも多くなっています。
02 ArtRage
2000年に発売された ArtRage は、リアルなブラシエフェクトをシミュレートすることに特化されています。開発者は現実世界の反応に似せるために時間をかけてブラシを完成させ、ペイント用のさまざまなテクスチャサーフェスも作成しました。つまり、選択したサーフェスによって、ペイントブラシの反応が変わります。
プロのコンセプトアートの環境でも使用できますが、実際のところ、コンセプトアーティストはあまり使用していません。しかし、昔ながらのルックを再現する際に、一部のアーティストがパイプラインの中で使うことはあるかもしれません。
ユーザーインタフェースは操作しやすいため、すぐに習得できるでしょう。ソフトウェアの使用に役立つオンライン チュートリアルもありますが、そのレベルと量は限定的です。デジタルペインティングやコンセプトアートの概念になじみがない人にとって、練習用の良い選択肢です。使い始めたばかりの新しいグラフィックタブレットに慣れるのにも役立つでしょう。
03 Painter
Painter の強みは、現実世界と反応がそっくりの、わかりやすい名前のブラシがあることです。実用的で使いやすいカラーホイールという利点もあり、比較的手に入れやすいソフトウェアです。多くの人は趣味用のソフトウェアと考えています。しかし、開発の Corel がこの数年間で加えたアップデートにより、プロのコンセプトアーティストにも役立つ強力でユニークなツールを獲得しています。
現在は、有名な 3Dスカルプティング ソフトウェアの ZBrush でレンダリングしたパスを直接取り込める[ZAppLink]があります。多くのスタジオは、クリーチャー/キャラクターデザイナーが一部の3Dパッケージを使いこなせることを期待しています。そこで Corel は ZBrush と連携することにより、現代のコンセプトアート環境で実用的に利用できる最先端のツールを生み出しました。
コンセプトアート業界において、Photoshop ほど広く普及していませんが、汎用性が非常に高く、デジタルアートを始める手描きアーティストにとって、ブラシやツールがわかりやすくなっています。実際、写真の編集や取り込みに関して、わずかに及ばないだけです。もしあなたがアートワークに写真を多用するコンセプトアーティストというよりも、デジタルペインターに近い存在なら、このソフトウェアはぴったりでしょう。
さらに ブラシは、「ウェットアクリルブラシ」のように機能を表す名称が付いていて、現実世界と同じように反応するため、比較的覚えるのが簡単です。どのソフトウェアでも言えることですが、可能性を最大限に引き出すにはある程度の学習が必要です。インターネットを探せば、オンラインリソースは簡単に見つかるでしょう。
04 Procreate
Procreate は Appleデバイス専用のアプリで、iOS/iPadOS の App Store からダウンロードできます。主にシンプルかつ汎用性の高いブラシオプションと設定を持つデジタルペインティングソフトウェアです。モバイルデバイスで使用する Procreate の強みは、現場で使用できる携帯性です。
しかしながら、プロの環境でコンセプト制作に広く使用されているわけではありません。これは、プロの要件を満たしていないというより、比較的新しいソフトウェアだからかもしれません。昔ながらの描き心地や多用途のブラシ等、コンセプトアーティストがプロのコンセプトを作成するのに十分なツールが提供されています。Photoshop と比較すると写真編集オプションは制限されているものの、多くのレイヤーモードオプションを備えており、素晴らしいポータブルツールとなっています。
比較的簡単に習得できるソフトウェアであり、新規ユーザーは個々の必要要件に合わせてツール類を簡単に配置・調整できます。さらに、ファイルを PSD として保存できるため、iPad と Windows/Mac 間でプロジェクトを移動することもできます。
05 ZBrush
ZBrush は、デジタル粘土でスカルプトやデザインを行えるデジタルスカルプティング ソフトウェアです。本物の粘土を扱うようにして、有機的なフォームを作るのに最適です。さらに機能的なツールセットのおかげで、乗り物や武器などのハードサーフェス コンセプトデザインでも非常に重宝します。
あらゆるコンセプトアーティストの役割に「パイプラインの後半で、プロダクションアーティストに役立つ実用的なコンセプトを作成すること」があります。現在では多くのスタジオが、何かしらの3Dソフトウェアを使いこなせるコンセプトアーティストを求めています。たとえばキャラクターデザイナーは、デジタル3Dスカルプチャの上にペイントしたいと思うかもしれません。ZBrush で作業する利点はコンセプトを作成したあとでも、スタジオの要求に応じて簡単にポージングできることです。コンセプトアーティストが作成した3Dモデルは、パイプラインの後半で3Dアーティストも使用できるので、プロセス全体の効率化・合理化につながります。
感覚的に操作でき、モデリングというよりもスカルプティングに近いため、他の市販の3Dソフトウェアよりも表現力が豊かで芸術的であると考えられています。しかし、簡単に習得できるわけではありません。覚えるには、マニュアルやトレーニングリソースが必須です。スタジオはクリエイティブなプロセスの効率化を目指しているため、キャラクターアーティストやクリーチャーアーティストは、ZBrush でコンセプトを制作することを期待されるでしょう。
※本チュートリアルは、書籍『コンセプトアーティストになるために知っておきたいこと』からの抜粋です
編集部からのおすすめ: 色、構図、遠近法.. アートのセオリーを学ぶ/再発見するには、書籍『デジタルアーティストが知っておくべきアートの原則 改訂版』をおすすめします。