3dtotal.comから海外のデジタルアート最新情報
(映画、ゲーム、映像関連)を日本語でお伝えします!

コンセプトアート『Dust』のメイキング

Pocket

米国のアーティスト Chase Stone氏が、コンセプトアート作品『Dust』のメイキングを解説します(Photoshop 使用)

このプロジェクトで私が目指したのは、暗闇の中の緊迫した雰囲気を表したイメージです。大部分を陰に沈ませ、メインの要素にスポットライトを当てて浮かび上がらせようと思います。ルネッサンス期の偉大な画家、カラヴァッジョの作品がヒントになっています。極めて現代的なモチーフを古典的なスタイルで描くという組み合わせが面白そうに思えました。

ブラシは何種類か使いましたが、大部分は、使い慣れた定番ブラシ、チョークブラシを、[筆圧]をオン、[シェイプ]をオフにして使いました(図01)。

図01:使い慣れた定番ブラシ、チョークブラシを、[筆圧]をオン、[シェイプ]をオフにして使いました

まず、ざっくりとした白黒のスケッチから取りかかります(図02)。最初のサムネイルを描く時は、正確さや解剖学的な整合性はもちろん、構図すらほとんど気にしません。この段階で一番重要なのは、頭にあるイメージの要点を紙の上に描き出すことです。そうすると頭がすっきりして、ビジョンもはっきりしてきますし、新しいアイデアも広がってきます。

スポットライトは右から当てることにしました。戦車の陰から先を覗いている一番手前の兵士の顔を照らすことができるうえに、ミステリアスな空気感が出て、この兵士の視線の先にいったい何があるのだろうかと、見る人の想像が膨らむだろうと思ったからです。描き始めた時点では、2人めの兵士のポーズは決めていなかったのですが、ある要素を決めると、自然に次が決まる場合があります。この場合は、ライティングを決めたことによって、2人めのポーズが確定しました。スポットライトで顔の輪郭を照らしたいと思ったので、必然的に、戦車の横から立ちポーズで向こう側を覗く感じになります。

図02:ざっくりとした白黒のスケッチから取りかかります

そこで、もう少し詳しい2つめのスケッチを描きました(図03)。ライフルの角度も調整しています。2本のライフルが矢印のような役割を果たし、見る人の視線が、手前の兵士の顔に集まるようにしようと考えたのです。この調整では、手前の兵士の手とライフルにもスポットライトが少し当たるという、予期せぬ副効果がありました(これが分かったときには興奮しました)。また、2つめの光源を左から当て、2人の姿が浮かび上がるようにしました(図04)。

図03:もう少し詳しい2つめのスケッチを描きました

図04:2つめの光源を左から当て、2人の姿が浮かび上がるようにしました

この作業を進める間、色は最初のスケッチからほとんど変わっていません。戦場のざらざらした空気感を出すには、モノクロが一番合うと考えたからです。しかし、最終的には、もう少し色をつけても良かったような気もしています。

構図とライティングとポーズがだいたい決まったので、仕上げに入りました。私の場合ですが、プロジェクトの最終アプローチには2 種類あります。ズームアウトしたままで全体を仕上げていく方法と、ズームインして部分的に仕上げていく方法です。今回は後者に飛びつくのが少し早過ぎたようです。普段は、スケッチをしっかり仕上げてからでないと最終的な描き込みには手をつけないのですが、今回は完全に納得しないうちに始めてしまったのです。その結果、満足のいくものが仕上がるまでに、どの兵士もバリエーションを数点ずつ作ることになってしまいました(当然フラストレーションのおまけ付きです)。

最初に手をつけたのは、戦車の前面です。参考資料の重要性は日頃から分かっているつもりでしたが、現存するメカに関しては、参考資料が極めて重要だということを思い知りました。たまたま、エイブラムスのプラモデルが机の上にあったので、決めた方向からライトを当て、直接見ながら描きました(図05)。手元にモデルがあったので、この部分は順調でした。

図05:たまたま、エイブラムスのプラモデルが机の上にあったので、決めた方向からライトを当て、直接見ながら描きました

先にも述べましたが、兵士たちに関しては、ペイントの段階でいくつかバリエーションを描く必要がありました。当初は、一番手前の兵士はもう少し身を乗り出す感じで、顔に防具はつけていませんでした(図06)。しかし、目をもっと強調したかったので、このアングルはやめにして、もっと顔に光があたるポーズに変えたのです。この兵士の目の表情が、プロジェクト全体の成否の鍵を握る唯一、かつ最大のポイントだとわかっていたので、友人に頼んで、この表情をしてもらい、写真を撮りました(図07)。正確を期したければ、資料は自分で撮るのが一番です。写真を隅から隅まで、そっくりそのまま写し取るのは避けたほうが賢明だし、トレースなど絶対にすべきではありません。写真資料に頼り過ぎると、イメージが死んでしまうのです。目の描写に関しては写真をじっくりと観察しましたが、ヘルメットとゴーグルは想像で描きました。

図06:当初は、一番手前の兵士はもう少し身を乗り出す感じで、顔に防具はつけていませんでした

図07:友人に頼んで、この表情をしてもらい、写真を撮りました

2人めの兵士には最も時間をとられました。迷ったのが主な原因です。頭部が特に問題でした。当初は顔に防具はつけないつもりでいましたが(図08a)、人格が出過ぎる気がしたので、目出し帽を被らせ、ゴーグルを不透明にして、正反対に一切の人格を消しました(図08b、c)。そうすると今度は、手前の兵士との結びつきが薄れて過ぎてしまったので、中間をとってゴーグルを透明にしたところ、落ち着きがよくなりました(図08d)。

図08:2人めの兵士の4つのバリエーション

3人めの兵士には、ありがたいことに、紆余曲折はほとんどありませんでした。同じようにバリエーションを考えはしましたが、そう大きな変化はありません(図09)。3人の兵士が完成したので、背景はかなり早く決まりました。アイデアはいたってシンプル。埃っぽい背景の中に霞んで見える瓦礫の山です。瓦礫を描くときは、特に何も考えず、ただ、シェイプを置いていくのが一番です。本物の瓦礫は無秩序に散らばっているのですから、描くときも同じように無秩序に描いた方が良いと信じています。瓦礫を描き終わったら、目につくところを手直しして全体をまとめます。

図09:3人めの兵士

描画部分が完成したら、調整用に作ったレイヤー上で全体の明るさとコントラストを調整し、軽いノイズを全体にかけて、ほんの少しだけテクスチャを加えます。これで完成です! このチュートリアルが皆さんのお役に立てば幸いです(図10)。

図10:完成イメージ

※このチュートリアルは、書籍『Digital Painting Techniques 2 日本語版』にも収録されています (※書籍化のため一部変更あり)。

編集部からのヒント

コンセプトアートについて学びたいなら、書籍『The Art of INEI コンセプトアート』をお勧めします。


編集:3DTotal.jp

Pocket