アーティストが自分の過去作をリメイク:『エドフ神殿』のメイキング

14 キャラクターの追加

前景にキャラクターを描きます。私にとって、環境制作で最も重要な手順は「シーンにキャラクターを加えること」です。これにより、ストーリーテリングが強調されます。このたった1 つの要素がないだけで、作品は退屈で意味を持たなくなるでしょう。船を操っているこの農夫は、川で魚を獲っているか、神殿に訪れるため、旅してきたのでしょう。

▲ 14 キャラクターによって、イメージのストーリーテリングが強調されます

15 明度を重ねる

キャラクターが後景の明度に寄り過ぎて、中央の建物に埋もれているように感じられます。では、前景と後景の明度を区別しやすいように、中景に半透明のオレンジの色相を加えましょう。同時に、鳥の群れをもっと目立たせます。要素同士にコントラストを出すときは、暗い部分に明るい明度を重ね、明るい部分に暗い明度を重ねます。このコントラストによって、異なる要素をはっきり区別できるようになります。

▲ 15 明度をはっきりと区別することにより、異なるオブジェクト同士を分けます

16 コントラストの微調整

最終的な形がだんだん見えてきたので、全体のコントラストを微調整しましょう。全体が少し明る過ぎるため、前景の明るさを一部抑えると、コントラストがよりシャープに際立ちます。これにより、映画的なルックが強くなり、明度の構造にまとまりが出ます。手前の船、左奥の小さい砂浜、神殿のオベリスク周りなど、ディテールの足りない領域を修正しながら、全体の調整を続けます。

▲ 16 コントラストを修正すると、明度にまとまりが出ます

17 興味深い要素

コントラストの構成を修正できたので、構図をサポートするためのオブジェクトをさらに追加します。ここでは、水面から突き出ている崩れた柱を描いて、「この神殿の横には峡谷があり、雨が降ると神殿の階段に達するまで一帯は浸水し、風化した柱だけが表れる」ことを示唆しています。また、船の帆をもう1つ加えて、機能的なパーツを増やすとともに、焦点としての存在感を高めています。

▲ 17 要素を追加すると、構図全体をサポートすることができます

▼プロのヒント:大、中、小

構図を考えるときは必ず、大きい形から小さい形へと、徐々に作っていきます。このルールを覚えておくと、シーン内のオブジェクトの配置に関して、より賢明で意識的な判断を下せるようになります。最初からディテールに着手するのではなく、先に「全体像」を確立することで、焦点がより明確になるでしょう。

▲ 大きい形、中くらいの形、小さい形の階層を作ると、簡潔にグループ分けできます

18 色相を強調する

寒色寄りの影で、青の彩度を強調していきます。こうすると、ベースの茶色がかった色相を残しつつ、影の色味を増やし、全体を引き締めることができます。全体が単一色に見えないように、神殿、柱、岩などの周囲に青を加え、補色の色相でバランスをとりましょう。この段階で、旅の荷物を入れるリュックサックなど、キャラクターのストーリーテリングを強調する要素も加えておきます。

▲ 18 影にさらに青みを加えると、より鮮やかに感じられます

19 ディテールの最終調整

作品を完成させるため、建築物と空のディテールを仕上げます。神殿の右に柱をもう1 本追加すると、空虚に感じられた空間が埋まります。また、微妙な雲の形で空をならし、絵画調の感じを強くします。水に浮かぶ樽も、船にさらなるディテールや特徴を加えています。最後にもう1 度コントラストを微調整し、シーンに統一感を持たせます。

▲ 19 コントラストやディテールを調整し、作品を最終形に押し上げます

20 雲を追加する

オレンジ色の雲を追加して、作品を完成させましょう。この雲で、何もない空は観察すべき別の焦点となり、夕焼けの暖かさはさらに強調されます。雲と光の方向は完全に対応していませんが、こちらの方が魅力的に見えるため、「芸術的な脚色」とします。 これでイメージは完成です! 「ディテール」「目を休める領域」はバランス良く配置され、視線がシーンの各要素に注がれるようになりました。

▲ 20 作品を完成させるため、ドラマチックな雲の層を加えます

▼まとめ

▲ 旧イメージ(ビフォー):ライティングはダイナミズムに欠ける/ 効果的でない遠近法/ カラーパレットは改善の余地がある

▲ 新イメージ(アフター):ライティングは信憑性や没入感がある/ 遠近法の改善によりスケール感が生まれる/ エッジやディテールが明確でわかりやすい

2つのイメージを見比べると、ムード、遠近法、ライティングキーの調整によって、シーン全体が再構築されているのがわかります。新イメージは生き生きとして、威厳があります(パースを下げ、キャンバスで建物が占めるスペースを増やしたため、旧イメージより巨大で印象的なスケールに感じられます)。

新イメージでは、影の彩度が低く抑えられていますが、 ライティングはとても自然で魅力的になりました。また、前景の人物と背景の神殿の距離は明確になり、柱、埃、霞、水面の波が、さらに奥行きを出しています。

 

完成イメージ

※本チュートリアルは、書籍『デジタルアーティストが知っておくべきアートの原則:ビフォー&アフター』からの抜粋です

 


編集部からのおすすめ: 色、構図、遠近法.. アートのセオリーを学ぶ/再発見するには、書籍『デジタルアーティストが知っておくべきアートの原則 改訂版』をおすすめします。

 


翻訳:STUDIO LIZZ
編集:3dtotal.jp