アーティストが自分の過去作をリメイク:『エドフ神殿』のメイキング

08 青い影

影に青い色相を加え、暖かい光に対して自然に見える温度のコントラストを作ります。青は、中間色寄りの茶色よりも目立つため、建築物の影の部分に興味深い変化が生まれます。全体的なパレットの彩度はまだ低めで、引き続き、レイヤーを重ねて彩度とバリエーションを作り込んでいく余地があります。

▲ 08 影にかすかな青いトーンを加えると、茶色が生き生きとします

▼プロのヒント:構図を分析する

背景で作業するときは、「黄金螺旋」「三分割法」などのガイドを利用し、構図の流れを常に確認するようにします。シーン内の各要素は互いにつながりを持ち、構図は好むと好まざるとにかかわらず、どんな描写よりも優先されます。作品の描写がいくら優れていても、構図が悪ければ、すぐにまとまりがなくなり、鑑賞者は退屈して興味を失います。そのため、目を飽きさせないように、最初から「力強い構図」を作りましょう。

▲ シーンの構図を正しく作ることは、最も重要な基礎の1つです

09 ブラシワークを強化する

空を調整し、より魅力的に見せましょう。ここでは、ストロークの表現をもっと目立たせていきます。絵画調の雲の形を見るとわかるように、ブラシストロークのエッジをはっきりさせると作品に流れが生まれます。また、構造物のエッジを目立たせながら、神殿に追加要素をペイントし、少しずつ作品を作り込んでいきます。水彩画家がブラシでペイントする方法を模倣し、光の領域の周りに「絵の具」の斑点を加えると、全体がきれいに整って見えなくなり、伝統的な絵画の雰囲気になります。

▲ 09 芸術的で無駄のないブラシストロークを使うと、伝統的な雰囲気の作品に見えてきます

10 ハイキーの暖かみを加える

リッチゴールドやオレンジを使い、ハイキーの領域にさらに暖かみを加えましょう。前のステップでは、ライティングの一部がまだ少しくすんで見えたため、こういった色の彩度を上げていきます。これにより、「水平線に沈む強烈な夕日に照らされている感じ」が出ます。引き続き、光と影で建物の輪郭をはっきりさせながら、着実に神殿を構築していきます。

▲ 10 明るい部分に暖かい色相(暖色)を加えると、時間帯がわかりやすくなります

11 ディテールと目を休める部分の対比

構造物を加えて、さらに奥行きを出しましょう。神殿の中央部に「焦点」として柱を何本か配置し、構図全体に反射や影(キャ
ストシャドウ)を生み出す光を加えます。これらとバランスを取るため、空の一部を滑らかにして「目を休める部分」を作ると、構図はさらに見栄え良くなるでしょう。イメージの隅々まで「ディテール」で埋めないでください。一休みする場所を作れば、鑑賞者は細かい部分を見続けることができます。

▲ 11 神殿の手前にディテールを加えると、関心を引く領域が増えます

12 背景の雰囲気

ここで、シーンの「大気」を強調したいと思います。周囲の土地から吹き込んできた砂埃を示すため、オレンジの色相を水面に加えましょう。この霞がかった効果で、建物がずっと遠くにあるような印象を与え、前景に暗い要素を取り入れる余地を残します。現実世界に見られるように、前景付近のオブジェクトは、遠方のオブジェクトよりも暗くなる傾向があります。 また、遠景におぼろげな構造物を加え、歴史的な場所でありながら、興味をそそるSF的な印象も感じられるようにします。

▲ 12 環境効果と遠方の神秘的なオブジェクトを使って、雰囲気を作ります

▼プロのヒント:ライティングでナラティブを強化する

人は、感情を揺さぶられるイメージに惹かれるものです。観客の感情を揺さぶるには、ライティングシナリオをしっかり確立することが大事です。ライティングだけでイメージを作成できれば、デザインの知識が少々足りなくてもうまくいきます! 蛾が夜の光に引き寄せられるように、人間の目は明るく照らされたコントラストのある領域に注目します。コントラストを利用し、シーンやストーリーで最も重要な焦点に目を誘導しましょう。

▲ 強いライティングを使えば、さまざまな焦点領域を目立たせることができます

13 ブラシストロークの調整

一部の構造物のエッジをシャープにし、より明瞭にしていきます。多くの重要なエッジを失うと、イメージはくすんで見えるので、特定の領域を引き締め、観察するディテールを増やします。たとえば、建物の上部の輪郭をくっきりさせ、空に溶け込まないようにします。さらにこの時点で、 水辺や神殿の周囲に「鳥の群れ」を加え、野生動物を取り入れましょう。これで、この背景は生き物の存在する場所になるため、空虚で魂のないシーンにならずに済みます。

▲ 13 ブラシストロークを調整すると、マークメイキングにおいてより良い判断ができるようになります