「嫉妬」というテーマで:『Envy』のメイキング

ウクライナのアーティスト Maria Poliakova氏 が「嫉妬」というテーマの作品メイキングを紹介します


Maria Poliakova
フリーランス 2Dアーティスト|ウクライナ

はじめに

ここでは「嫉妬」というテーマに基づきキャラクターの制作プロセスを紹介。作品で最も重要な段階を冒頭から取り上げていきます。主な目的は、妬みや不健康な欲望とも言える「嫉妬」をテーマに描写し、見事なポーズ、ふさわしいムード、美しいカラーパレットを作成することです。

01 自由な線

通常、着手する前に手のウォームアップを少し行います。スケッチブックを手に取り、1つの具体的なテーマから自由に流れる線を描きましょう。この練習でリラックスしている間、以下のような思考プロセスが起こります。「テーマは“ 嫉妬”... 女性の肖像画をペイントするのが好き... 悪の女王のようなキャラクターかもしれない... 女王は堂々としたポーズで髪がなびいている... 頭には立派な飾りがある...」これは瞑想のようなもので、良いアイデアが浮かぶことも多く、同時にドローイングに向けて心の準備をする時間にもなります。

図01:シンプルな線は手を使う練習になり、アイデアも生み出しやすくなります

02 サムネイル

流れる線を描き終えたら、最も気に入ったものを選び、引き続き 線を整えながら、スケッチのベースとして利用します。これは紙の上で行うことも、直接 Photoshop で行うこともあります。今回はスケッチブックを使用しています。

私は、たなびく髪の毛を持つ、傲慢で、どこかしら邪悪な女性の肖像画(腰までの長さ)を描くことに決めました。頭の上には角または冠を載せ、手には嫉妬を象徴するような物を持たせています。初期段階で具体的なコンセプトが思い付かないときは、ペインティング段階でディテールを考え出します。このステップでは主に、構図を練り、幾何学フォームを配置しましょう。それらはお互いを補完して引き立たせます。この段階で、細かいディテールはさほど重要ではありません。

図02:Photoshop で作業を始める前の小さなサムネイル

03 カラーラフ

Photoshop で色を素早く効率的に変更して、カラーオプションをいくつか試します。これは重要な段階で、先ほどのスケッチと同じ方法で取り組みます。すなわち、基本のカラーストロークだけを用いて、全体を見渡せるようにズームアウトします。まだディテールは描きません。さまざまな効果を得るため、異なるツールで素早く行います。ここでは、明る過ぎる色の組み合わせを作ってみるなど、試行錯誤するだけです。ペインティングの最終段階では、これらの色を影や中間調によってトーンダウンさせます。

図03:簡単なカラーオプション

04 スケッチと色を組み合わせる

スケッチと選択したカラーラフを組み合わせ、ペインティングのベースを作成しましょう。クイックスケッチの後に、基礎となる顔と体の輪郭を細かく描きます(図04)。

Photoshop で線画の描画モードを[乗算]に設定、お気に入りのカラーラフ(嫉妬に合わせた緑の色味の強いパレット)を開いて、線画の下に配置します(図05)。これで、ガイドとなる色のついたベースができました。手描きで作業しているなら、下塗りとして選択したカラースキームをスケッチに加えてください。

時々イメージをグレースケールで表示し(またはリファレンスとして明度分析を作成)、定期的にイメージからズームアウトする(一歩引いてみる)と良いでしょう。複数のビューで見ると、作品を常に遠くからグレースケールの明度で確認できるので、フォームとライティングの感覚が失われません。

図04:色を塗る前のラフなシルエットと、少しだけディテールの施された顔

図05:線画のスケッチとカラーラフを組み合わせたもの

05 ディテールを追加する

下塗りが整ったので、今度はディテールを加えていきましょう。シンプルなテクスチャブラシでキャラクターの頭飾りをスケッチ、顔と首をラフに描き、髪の毛の色を変更します。私が最初によくテクスチャブラシを使う理由は、少しディテールのあるシンプルなフォームを作成し、作品に雰囲気とダイナミズムを加えるためです。

たとえば、頭飾りは[ハードライト]モード(ペイントしている領域に、とても明るいスポットライトを当てているような効果を作る)のブラシで作成します。これは作品にコントラストと色味を加えます。

図06:テクスチャブラシで作業を進めます

06 顔と髪の毛をスケッチする

顔を描き始め、パースを修正していきます。彼女を邪悪に見せたいものの、不快に感じさせたくないので、目を黄色にして瞳孔は描かきません。冷たい表情で、孤高に見せています。

さらに、髪の毛のボリュームと形状をスケッチ、青は暖色系の目と対比して引き立たせ、鑑賞者をイメージに引き込みます。手の配置も考えてみましょう。最終的な表情やポーズはまだ思案中なので、顔にはたくさんの変更が加えられています。

図07:ぴったりの顔を模索します。好みのバリエーションが見つかるまで描き続けます