【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード35:GEHENNA ~その軌跡7 -ロケーション探し-

ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!


片桐 裕司 / HIROSHI KATAGIRI
彫刻家、映画監督

東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。
東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。

エピソード35:GEHENNA ~その軌跡7 -ロケーション探し-

制作の資金集め、クラウドファンディングKickstarter(キックスターター)がどうにか成功し、最低限の資金が集まりました。いよいよ、撮影に向けての準備です

>>>>エピソード29:GEHENNA ~その軌跡6 -面白ビデオ集- のつづき

まずは、映画に出てくる作り物の制作を開始しました。予算を節約するには自分自身でできるだけのことをしなければなりません。同時に、脚本の仕上げ、役者の募集とオーディション、追加資金集め、ロケーション探し、絵コンテの作成などなど、私自身が直接関わったものだけでもこんなにあります。

そして、特に苦労したのはロケーションの確保でした。日本軍の基地を作るのにそれを建てる場所が必要になります。そこで初めて知ったのですが、ロサンゼルス(LA)という街は、ロケーション代が異常に高いという事。例えば、ホラー映画に使われるようなコンクリートのセットがダウンタウンにあって、そこには、牢屋の格子やら気味の悪い廊下とかいろいろと揃っていて、いいなぁと思って、値段を聞くと、なんと、1日6000ドルというじゃないですか! 日本円にして70万円近くですよ! しかも、1日で!

1日6000ドルの景色

その他にも何軒か回ったけど、どこもかしこも、使用料が1日1万ドル前後! 映画の撮影がどんどん LA から離れていくのがよくわかりました。高すぎるどころじゃない! 異常です! 大作映画がそういう金を実際に払っているのだろうけど、それを、スーパー低予算のインディー映画にも求めるなんて酷すぎます。このような苦労の末に、どうにか、いい感じの倉庫を確保。そこでセットを建てられることになりました。

結構広い

セットの様子

セットの様子

セットの様子

場所が決まれば、セットもあれよあれよという間に3週間で建ってしまいました。日本軍の地下壕なので、小道具なんかはロサンゼルスの小道具会社で結構レンタルがあるのです。太平洋戦争ものの映画やドラマも多いですからね。

そして、物語はサイパンが舞台なので、次に必要なロケ地は海沿いのリゾートホテル。そこで、まず、パロスバーデスという LA の高級リゾートホテルに当たって値段を聞いてみると、撮影するだけで、場所使い賃1日2万ドルとのたまうではありませんか! 200万円以上ですよ!!! しかも1日ですぞ 1日! そして、ワンランク下の海沿いのホテルを見つけて交渉したら、そこでも1日8000ドル! 約90万円!

「やってられっか」と途方に暮れていた時に「じゃあ、サイパンだったらどうなんだろう?」という疑問が湧き、いろいろ調べてみることに。しかも「日本から4時間で行ける」というのも魅力だったので、自分の 彫刻セミナー で日本に行った時についでに、サイパンを訪ねてみることにしました。

サイパンを訪ねてみることにしました

そして、ダメ元でこのようなホテル。さすがに南国の気風か、どんなことを頼んでもいい感じの受け答えで、いよいよ最重要の撮影料に関して聞いたところ、出てきた答えは何と! 200ドル(約2万2千円)。これには思わず同行したプロデューサーも「1時間でですか?」と聞いてしまったほど(※LA は安くても1日8000ドル)。クルーの移動費を換算しても、これはサイパンに行かない手はない! ということで、外の撮影はサイパンと決定したのでした!

ホテルだけでなく隣の島ティニアンには旧日本軍の司令基地跡や...

ラティストーンと呼ばれる遺跡

とてつもなく美しい海の横に未だに残る砲台跡

セットじゃ作れない不気味な雰囲気を持つ掩体壕(えんたいごう)入り口

などなど素晴らしいロケ地がたくさんありました。それは、撮影まで2ヶ月を切った頃でした。(つづく

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■片桐裕司さんのブログ
http://blog.livedoor.jp/hollywoodfx/

■ハリウッドで活躍するキャラクターデザイナー 片桐裕司による彫刻セミナー
http://chokokuseminar.com/ ※仙台/名古屋(9月)申し込み受付中

映画『ゲヘナ 死の生ける場所 (Gehenna Where Death Lives)』予告編 (2分8秒/ 監督:片桐裕司 / 日本語字幕)