【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード23:GEHENNA ~その軌跡4 -クラウドファンディング開始-

ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!


片桐 裕司 / HIROSHI KATAGIRI
彫刻家、映画監督

東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。
東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。

エピソード23:GEHENNA ~その軌跡4 -クラウドファンディング開始-

今回は、片桐さんの長編映画作品『GEHENNA ~死の生ける場所』の クラウドファンディング の話です。

>>エピソード19:GEHENNA ~その軌跡3 -資金集め- のつづき

クラウドファンディングの Kickstarter(キックスターター)での資金集めに向けて、着々と準備を進めていきました。まずは、アイコンとなるポスターが完成です。

田島光二 氏デザインの不気味な老人ポスター

それから、オープニングシーンのためのセットの製作です。知り合いの工房の一角を使わせてもらい、セットまで自分たちで作ったのです。

木の枠を作り、発泡スチロールのボードをくっつける

発泡スチロールを粗く削り、色を塗る

ライトを当てれば、立派な地下壕の出来上がり!

結果はこちら

★オープニング映像:opening sequence of GEHENNA(4分16秒/ ※このオープニングの意図は、謎を見せ、気になる終わり方にして「続きが見たかったら投資するんだ!(笑)」という感じになるよう作りました。実際の本編とは違います)

キックスターター用のプロモーション映像の準備も着々と進めました。様々なキックスタータープロジェクトを研究し、ページを作り、ビデオを作り、万全の態勢で臨みました。そして、キックスターターの開始2週間前に『GEHENNA』の Facebook ページ を立ち上げたところ、そこに載せたアートワークの出来もあって、一気に広がりました。キックスターターは全て自分だけの力でやってみました。目標金額を 25万ドル(約2800万円)に設定しました(※キックスターターは「目標金額に達しないとお金が入らない」という All or Nothing(オール オア ナッシング)という厳しい仕組みです)。

「これをやるぞ」と決心してから、ほぼ1年間準備に時間をかけ、いよいよ、資金集めのキャンペーンをスタートさせました。そして、なんと、しょっぱなに 5000ドルの出資者が2人もついて、初日は1万2000ドル(140万円くらい)と好調なスタートを見せました。しかしながら、始めてから多くのことに気づきます。とにかくやることが多い。特典についての質問や定期的なアップデート、それから様々なオファーへの返答もありました。『エルム街の悪夢』の監督の ウェス・クレイヴン が関わっている、次世代のホラー映画監督を発掘するリアリティーショーのオファーなんてのもありましたよ(笑)。

このキャンペーンに関してすべての対応を自分一人でやっていたため、それには限度がありました。そして、仕事も同時にしていたため、その時間が取れるはずもありません。1年かけて準備しましたが 25万ドルを目標にして、集まった額は5万3000ドル(600万円くらい)という散々な結果に終わってしまいました(※『GEHENNA』の Kickstarter ページ)。

こうして、人生初のクラウドファンディングの挑戦が終わりました。
結果は、目標金額に達せずに失敗です

今まで1年間苦労して準備してきたことは全て無駄だったのか?
こんな挑戦しなければよかったのか?

長い人生の中で「何かをやって無駄だったかどうかは 1、2年の短期間では決められない」と思います。キックスターターでの資金集め自体は失敗したけれど、このプロジェクトの評判と反応はものすごい良かったので「絶対になんとかなる」という確信はありました。「この経験を生かして次をどうするか?」 失敗しても、私の頭はそこにありました そして半年後、次の挑戦を決意したのです。(つづく

 

★バックナンバーはこちらから

■片桐裕司さんのブログ
http://blog.livedoor.jp/hollywoodfx/

■ハリウッドで活躍するキャラクターデザイナー 片桐裕司による彫刻セミナー
http://chokokuseminar.com/

映画『ゲヘナ 死の生ける場所 (Gehenna Where Death Lives)』予告編 (2分8秒/ 監督:片桐裕司 / 日本語字幕)