ZBrush による背景の作成:火山

Bungie のエンバイロメントアーティスト Anthony Pitts氏が、ZBrush で作成した火山を 3ds Max でまとめ、Photoshop で仕上げていきます


Anthony Pitts
エンバイロメントアーティスト|Bungie

はじめに

仕事をする上で、アーティストは過去の作品をいつでも見直す準備ができていなければいけません。どんな選択にも必ず改善の余地があります。アセットを素早く効率的に、そして非破壊的に作成/修正する能力は、あらゆるクリエイティブなワークフローにとって貴重です。

このチュートリアルでは、従来からのスカルプティング手法や ZBrush の手続き型ツールを使用して、アセットを素早く作成/修正するテクニックをご紹介します。また、ZBrush のツールでアンラップやテクスチャリングを行い、ポリゴン数を抑えながら主要な領域にディテールを作成。その後、各アセットを 3ds Max にエクスポートしてプロジェクトを仕上げます。最終イメージをレンダリングするため、系統立てたシーンをセットアップします。できるだけ手早く簡単にリアルな結果を得るため、簡単なライティングシステムを構築し、設定を微調整しながら目標とするライティングに近づけます。

レンダリングしたら Photoshop に移り、ポストエフェクトや調整を加えます。カラーグレーディングを行い、露光量を調整後、クールなエフェクトを追加して奥行きとパンチを加えましょう。

チュートリアルを終える頃には、ZBrush の手続き型ツールやスカルプティングオプションを利用してワークフローを高速化する方法について、理解が深まっていることでしょう。

用意はいいですか? それでは、始めましょう!

01. シーンをセットアップする

どんなプロジェクトでも、私は、整理整頓を念頭に置きながら始めます。そのアイデアや、どのようにセットアップしたいかを明確にしておくとよいでしょう。最初にエクスプローラでフォルダの階層を作ります。このプロジェクトでは「3ds Max Files」「Concepts and Reference」「ZBrush Files」というフォルダをそれぞれ作成します。

先ほど作成したフォルダの中に新規プロジェクトを設定することによって、3ds Max が自動的に構造を整理してくれます。3ds Max で[ファイル]>[管理]>[プロジェクトフォルダを設定]を選択して「3ds Max Files」フォルダを選択。こうすると3ds Max が自動的に必要なサブフォルダを作成します。

整理整頓がカギです。あとで後悔しないように早めに整理しましょう。
図の「Notes」フォルダは必須ではありません

02:ブロックアウト - 大まかに作成する

シーンをブロックアウト、大まかに作成しましょう。これを行うのは、次に進むのに必要な構図とスケールを決めるためです。[カスタマイズ]>[単位設定]ウィンドウで 3ds Max のスケールをメートルに、[システム単位設定]で 1単位を1メートル に設定。そして、シーンの基本的な要素を作成します。地面、前景のパーツ、2つの岩のパーツ、火山の形を作成します。また、最終イメージの寸法に設定したカメラも作成しましょう。最後に、シーン全体をOBJファイルでエクスポートして、ZBrush にインポートします。

ブロックアウトしておくと シーンが複雑になっても正しい方向性を保てます。
作業しながら 必ずアセットに名前をつけましょう

03:スカルプトの準備

レイアウトは 1つの大きなパーツとして ZBrush にインポートされます。まず[ポリグループ]>[自動グループ]をクリック、続けて[サブツール]>[グループ]>[グループ分割]をクリックし、オブジェクトをサブツールに分割します。次に地面を[ダイナメッシュ]にします。

これを行うと、形状を保持しながら 解像度を上げることができます。私はいつも低レベル(64)で[ダイナメッシュ]を適用し、均等のとれたサブディビジョンでその解像度をコントロールします。サブディビジョンレベルを保持すると、後でアンラップやテクスチャリングがグッと楽になります。ZBrush のスカルプトで解像度を切り替えられる機能は、いつも重宝しています。

[ダイナメッシュ]の前後で[ポリフレーム]をクリックして、
ツールのワイヤフレームを再確認します

04:地面のスカルプティング

地面のメッシュを[サブディバイド]して、大きいスケールのサーフェスノイズを適用します。ここでは劇的にならない程度に、メッシュの形状を変化させています。[ノイズスケール]:65 に設定して、メッシュに適用します。その後、再び[サブディバイド]して、[ノイズスケール]:32 でさらにノイズを適用します。ポリゴン数が数百万になるまで、これをあと数回繰り返します。満足したら、[Trim Dynamic]ブラシで メッシュの一部領域を平坦にします。

前景のパーツも同様にスカルプトしましょう。前景は、カメラに より近いので、ディテールをしっかりと目立たせ、[ノイズカーブ]でノイズに面白味を加えます。

大きいスケールから小さいスケールまでのノイズを適用します

05:火山のスカルプティング

これまでのプロセスとの主な違いは、最初のノイズパスで火山の上部をマスクすることです。さらに、このマスクをぼかして、メッシュにノイズを適用したときにハードエッジが生じないようにします。

まず[Zsub]に設定した[Clay Buildup]ブラシでメインの火口と溶岩溝を作成します。[Trim Dynamic]ブラシで表面を形作ったら、[サブディバイド]して[ブラシ]>[深度]プロパティをクリック、[重力強度]を高めに設定します。こうすると、スカルプトするときにジオメトリが地滑りのようにサーフェス法線に沿うので、重みと動きが出ます。次にカスタムアルファで簡単な岩のディテールを追加します。最後に再び上部をマスクしてぼかし、より大きいスケールのノイズを適用して、頂上の周辺に黒焦げのベースを作成します。

[重力強度]を高くすると、とてもクールなフォームができます

06:火成岩のスカルプティング

火成岩はシーンのあちこちに使用するつもりなので、多種多様な形状にしましょう。これは、ポリゴン数を低くする必要があります。立方体から始め、[ダイナメッシュ]に変換、ノイズを適用して、[Clay Build Up]ブラシでスカルプティングを開始します。それぞれ独特のフォームの形状を作り、面白いベースを作成するとよいでしょう。主要なフォームのスカルプティングを終えたら[ダイナメッシュ]を適用、[サブディバイド]してメインのノイズパスを加えます。最後に[Trim Dynamic]ブラシで一部領域を滑らかにします。最終的なポリゴン数は、よりコンパクトな 20万になりました。

火成岩のメインのノイズパスに使用した設定

07:テクスチャの準備をする

テクスチャリングに進む前に、まずUVが必要です。これにはZBrushの[UVマスター]を使用しましょう(サブディビジョンレベルを保持するのが理由の1つです)。精度を高めるため、モデルをポリグループに分割。前面の岩の下部をマスクし、[ポリグループ]>[マスクグループ化]を選択します。側面に関しても同じプロセスを繰り返します。[UVマスター]ダイアログを開き、[クローンで作業を行う]をクリックしてツールの複製で作業します。[ポリグループ]をクリック、続けて[アンラップ]をクリックします。[平面化]オプションでUVを確認、[Transpose]ツールでUVを移動します。終わったら、[UVコピー]をクリックして元のツールに戻り、[UVマスター]を再び開いて[UVペースト]をクリックします。

[UVマスター]では、メッシュに割り当てたポリグループに基づいてUVアイランドを作成できます