【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード9:GEHENNA ~その軌跡 – 3本の短編映画 –
ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!

エピソード9:GEHENNA ~その軌跡 - 3本の短編映画 -
今回は、私の長編映画作品『GEHENNA 〜死の生ける場所』の着想までの行動と出来事の話をしたいと思います
エピソード5:監督作品『GEHENNA 〜死の生ける場所』 のつづき
よく勘違いされるのですが、私は、別に「ホラー命」というわけではありません。小さい頃からドラマ、SF、アクションからミュージカルまで、あらゆる映画を見てきて、全てのジャンルが大好きです。
しかし、映画監督への道の第一歩の作品は「完全自主制作映画」になるのでお金もそんなにかけられません。「少人数のキャストで、場所もそんなにいらないけど見栄えがいい作品」として考えると、自分の中でできそうなのはドラマかホラーでした。「じゃあ、ホラーにしよう」ということで、2005年に『Pulse』という短編映画を作りました。
『Pulse』- 幽霊屋敷と噂される家でジェニファーは恐ろしい怪奇現象に取り憑かれるその時はまだ、日本的なホラーはアメリカでは浸透していなくて、『Pulse』はかなりいい評価を受けました。その当時働いていたStan Winston Studio(スタン・ウィンストン・スタジオ:ターミネーター、ジュラシックパーク、プレデターやエイリアンを生み出した工房として有名)には映画製作プロダクションがあり、そこのプロデューサーやスタン本人も大変気に入ってくれ、私が長編の脚本を執筆中だと告げると「できたら是非持ってきてくれ」と言ってくれました。
しかしながら、同年、日本のホラー映画『呪怨』のハリウッド リメイク版である『Grudge』がアメリカで公開され大ヒット。メジャーな作品が出てしまったので、私の映画は二番煎じとなってしまったのです。ところが、『Pulse』を評価してくれた知り合いの紹介で、100万ドル(=およそ1.1億円)の予算の長編映画の監督候補になる事ができました。残念ながら、最終的には選ばれませんでしたが、結果として、その映画は『Slaughter』というタイトルでDVDリリースされたようです。
見ていませんが。
それからしばらくは悶々と過ごしていましたが「どうしても映画を撮りたい」という気持ちを満足させるために、もう1本短編を作る事を決意。今度は20分ものの『Crayon』という短編を撮影しました。一軒家の中だけで起きる出来事で、日本の都市伝説『赤いクレヨン』が題材です。
『Crayon』- 格安な新居に越してきたケイトたちが、その家の恐ろしい秘密を知るそして、それが完成する頃にまた長編監督のオファーがありました。日本的なホラー映画で予算は300万ドル(=およそ3.3億円)。プロデューサーはとても私の事を気に入ってくれたのですが、出資者が有名監督の起用を望んだため、残念ながらここでもチャンスはもらえませんでした。よくあるケースですね。また、結果的に、この映画の企画も立ち消えになったそうです。
悔しい思いを何度かしましたが、自分の中の熱い思いは消す事はできません。その後、前の2本とは違った感じのホラーを作りたくて、もう1本短編を作りました。『Hindsight』というサイコスリラーです。
『Hindsight』 - 元彼の暴力から逃れてきたジェニファーの身に起こる不可思議な出来事そして、これらの短編3本を1枚のDVDにまとめ、販売できるまでにこぎ着けました。
米アマゾンで販売中です。字幕はありませんが、興味のある方はどうぞ。画質もHDの前の時代なので良くありません(※下記のようにネットでも見れますが)。
しかし、これ以上短編を作っても次に進めない。
人に期待するのではなく、自力で長編を作らねばならない。
そう考えた私はいよいよ長編の構想に取り掛かります。
今から約10年前。2007年頃のことだったと思います。
「いい内容であれば、いつかは絶対に形にする事ができる」と信じて。(つづく)
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