【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード40:GEHENNA ~その軌跡8 -恐るべき特殊メイク-

ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!


片桐 裕司 / HIROSHI KATAGIRI
彫刻家、映画監督

東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。
東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。

エピソード40:GEHENNA ~その軌跡8 -恐るべき特殊メイク-

自ら脚本・監督した長編映画『GEHENNA 死の生ける場所』。当然、この映画では、私自身のキャリアである特殊メイクアップをいっぱい使っています。多くの人がそれを期待していると思うし、自分が監督するならではのことでもあるので。今回は、映画『GEHENNA』でどんなものを作ったのかを紹介したいと思います。

>>>> これまでの「GEHENNA ~その軌跡」は こちら から

まず、映画を作るよりも はるか前に始めたのが、キャラクターのデザイン造形。これらは クラウドファンディング である Kickstarter(キックスターター)の景品にもしました。

1/1スケールの不気味な老人デザイン。「お前ら出てけ~」と言っているところをイメージしています

1/3スケールの「不気味な老人」「不気味な老婆」「不気味な子供」と何のセンスもないネーミング(この時点で)のキャラクターたち。これらもクラウドファンディングの景品だったので、持っている人がいるかもしれませんね

そして、ポスターにもなっている重要なキャラクターである不気味な老人は「クリーチャーを演じさせたら この人!」といわれる Doug Jones(ダグ・ジョーンズ)という役者が演じてくれました。

映画『パンズ・ラビリンス』(2006年)のパン役や映画『ヘルボーイ』(2004年)のエイブの役者といえばわかる人も多いと思います。

Doug Jones氏が演じた数々のキャラクター

彼はとても背が高く、体も細いのでクリーチャーを演じるのに最適な体をしています。その彼を「もっと細くしてやろう」と画策した結果「顔と首は彼の顔で、そこから下はパペット」という文楽人形的なギミックを考え付きました。

Doug Jones氏の体を削って、その上に造形しています。そうするとプロポーションがぴったり合います

頭部の造形

首から下はパペットです

不気味な老婆「Madre」のシリコンマスク原型。後ろの写真は著書『アニマル・モデリング』用の資料

不気味な老婆「Madre」もキックスターターの景品にしました! 世界で3人、これを持っている人がいます

シャーマン(呪術師)がかぶる人の皮で作ったマスクの造形

シャーマンのミイラは即身仏をイメージしています(1/1スケール)

日本兵の特殊メイク用の造形や

子供の幽霊の特殊メイク用の原型

色も塗ったりしてます

スタッフの1人 Daniel が 800歳の男の体の原型を

スタッフの1人 Eriちゃんが怖い女性のダミーの原型を

800歳の男の頭部

顔が変形していくエフェクトのダミーの原型

合間に絵コンテなども描いておりました

こうして振り返ってみると「ずいぶん作ったなぁ...」というのが素直な感想です。これらの写真の他にも、まだ、作り物があります! とにかく低予算なので、かなりのものを自分で作るしかなかったので、監督業をやりながら、このような作業を続けたわけです。その中で心の中でずっと思っていたことは「いつか絶対出世してやる!(笑)」ということでした。予算があれば、ここまで自分でやらなくて済みますからね。

しかし、このようにいっぱい作っておきながら、作り物を前面に押し出すのは嫌いなのです。ストーリーが重要なのであって、クリーチャーを見せることがメインではないので。自分の中では「作り物は所詮つくりもの」。人一倍見る目は厳しいので、どうしても長く写せないのである。これだけの苦労をして作り上げた これらの造形物は、果たして映画にどう使われたのか?? それは是非、皆さんが映画『GEHENNA 死の生ける場所』を見て、確かめてみてくださいね。

映画『GEHENNA 死の生ける場所』予告編 (2分8秒/ 日本語字幕)

■GEHENNA:死の生ける場所 公式サイト
http://gehennafilm.jp/

 

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■ハリウッドで活躍するキャラクターデザイナー 片桐裕司による彫刻セミナー
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