【インタビュー】ただ純粋に楽しむ:アートディレクター/キャラクターアーティスト Sam King 氏
南アフリカのアートディレクター/キャラクターアーティストの Sam King は、クライアントの仕事をしながら、3Dキャラクタープリントの制作も楽しんでいます
Q. 自己紹介をお願いします
こんにちは! 私はキャラクターアーティスト/アートディレクターであり、コレクタブルスカルプターとしても活動しています。日中はケープタウンを拠点とするゲーム会社 Balisti Studios でアートディレクターをしており、Electronic Arts や Unity Technologies などのクライアントと仕事をしています。仕事の後は、コレクター向けのミニチュアやフィギュアをデザインしています。また、自分でプリント、ペイントし、収集できる独自のコレクタブルアイテムシリーズも制作しています。
「Firewarrior - Artstation Challenge」:ゲーム用PBRキャラクター(コンセプト制作:Mikael Bombete)
Q. 「The Archvillain」の制作ワークフローをおしえてください。アイデアはどこから得ましたか?
技術的には、デザインも見た目も非常に簡単な作品でしたが、いくつかの方法を試しています。興味深い方法がいくつかあったので、次の質問で回答しましょう。この作品は、クライアントからの依頼で、コンセプトを基に制作しました。必要に応じてさらにデザイン、スカルプトし、3D プリント用にエンジニアリングする必要がありました。
「The Archvillain」:コレクターズアイテム(3Dプリント)として造形されたフィギュア
Q. 制作で苦労したことはありますか? 新しい学びはありましたか?
課題は常に生地でした。当時、Marvelous Designer の学習に時間を費やしていたので、このプロジェクトで使用できるかもしれないと思いました。というのも、本作のほとんどは布地制作だからです。最初に Marvelous を使いましたが、必要に応じて折り目の流れをアートディレクションしていくのに苦労しました。技術的には良好な結果になりましたが、それぞれの折り畳まれた形を希望どおり配置するため、ソフトと格闘していました。
また、私のフィギュアは動きが激しいので、これをシミュレーションで表現するのは大変です。最終的に、Marvelous sim のいくつかのパーツをベースにして、あとですべての生地をスカルプトすることにしました。これは私にとって、布のスカルプトとダイナミクスに関する大きな教訓となりました。このプロジェクトでは、すべての折り畳み形状を制御する必要があったため、シミュレーションにあまり頼らず、必要に応じて ZBrush でスカルプトする方が簡単でした。
ただスカルプトするだけで、より彫刻的で芸術的なルックになります。それが本作で必要な要素でした。もっとリアリズムが必要な場合は、シミュレーションの方がよいでしょう。
生地をZBrushでスカルプト
Q. 仕事や個人プロジェクトで他に使用しているソフトウェアはありますか?
新しい視覚的な結果が得られそうなら、何でも喜んで試しています。Marvelous Designer、Marmoset Toolbag でのマップベイク、Redshift や KeyShot でのレンダリングなどについて学んだり、個人制作から優れた造形物を得るために、3Dプリント技術を研究したりしています。
「Fenrir Chained」:コレクターズアイテム(3Dプリント)として造形されたフィギュア
Q. ポートフォリオをアップデートする秘訣・ヒントがあれば おしえてください
それは単純明快です。好きなものを作り続けるだけです!余暇に、自分の情熱や好きなものを反映させた作品を作れれば、同じような趣味を持つ多くの人とつながり、モチベーションが後押しされます。時には、あなた好みの作品をもっと見てみたいと頼まれることさえあるでしょう。
それがどんなに奇妙であっても、好きなものを作るだけです。誰かのためではなく、自分の好きなものを作り続ければ、アート制作に飽きることなく、継続できるでしょう。もちろん、新しいものを生み出すため、机に向かうのに苦労することもなくなります。ただ、純粋に楽しめばよいのです。
「The Battle Chicken」
Q. SNS を使っていますか? お気に入りのハッシュタグをチェックしていますか?
SNS に詳しいわけではありませんが、Instagram と ArtStation は定期的にチェックしています。3D プリントを楽しんでいるので、よくそれに関連するハッシュタグを見て、どんな素晴らしい作品が世に登場しているかを確認しています。また、game art(ゲームアート)、art direction(アートディレクション)、art theory(アート理論)、character art(キャラクターアート)に関するものも見ていますね。
「The Mimic」:コレクターズアイテム(3Dプリント)として造形されたフィギュア
Q. 芸術的な目標はありますか?
目標は、今歩んでいる道を楽しみながら進み続けることです。ゲーム業界で働きながら、アートディレクターやリーダーとして成長すること、そして、コミュニケーションスキルと顧客との関係を磨くことに取り組んでいます。
デザイナー兼スカルプターとして、将来的にはもっと大きく複雑な彫刻に挑戦したいです。実物で 30cm以上ものに取り組んでみたいですね。大きく複雑で詳細な実物のフィギュアやコレクターズアイテムを制作することができたら嬉しいです。
「The Orc」:コレクターズアイテム(3Dプリント)として造形されたフィギュア
Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください
自分にとって核となり、良い影響があるものをよく見ています。時間が許せば、これらの作品を研究し、そこからインスピレーションを得た作品を制作して、自分のスタイルをさらに明確にするようにしています。
最近興味を持っている芸術家や芸術運動は、バロック、古典芸術、具体的にはカラヴァッジオ、ルーベンス、ベルニーニなどのアーティストです。『2000AD』などの出版物や、Simon Bisley、Brom などのアーティストによって制作された 70〜80 年代の古典的なパルプコミックブック アートも研究しています。また、初期のボードゲームアート、例えば初版の D&D や初期の Games Workshop のマニュアルなども見ています。スタイライズされたゲームアートはいつ見ても美しいので、Blizzard Entertainment などのアーティストが作る作品は、視覚的にも楽しめます。
「The Sorrow Barron」
Q. 近年の作品についてお聞かせください
3Dプリント用のフィギュアやコレクターズアイテムの制作に力を入れています。さまざまな企業と協力し始めているので、今後はもっとそういった仕事が増えていくことでしょう。ゲームアートのスキルを磨き続けたいので、ゲームアートの分野でコンテンツを作成し、必要に応じてチームを率いていく仕事も続けていきます。中でも、スタイライズされたプロジェクトに取り組むのが楽しいので、今後はそうした作品の制作に注力していくつもりです。このような機会を頂き、本当にありがとうございました!
「The Slaad」:3Dスカルプト
「The Slaad」:キーイングと分割(左)、3Dプリント(右)
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