動物を描く・造る秘訣:アーティストのための 動物解剖学 入門

米国の 動物画家・アーティスト Joe Weather 氏 が 動物を描く極意 をおしえます


Joe Weathely
アーティスト|米国

はじめに

「アニマルドローイング」は独特な芸術表現の一分野ですが、特別に難解なものではありません。 ただし、人物画家がドローイングに向き合うのと同じように「強い関心」「継続的な努力」が必要です。こうした姿勢で望めば、見る人を納得させる動物が描けるようになるでしょう。そこに「解剖学の知識」が加われば、説得力と確かな技術に支えられた作品が生まれます。

動物の美術解剖学 を学ぶことは、動物をテーマにした絵画、彫刻、ドローイングの技術を向上させたいすべてのアーティストにとって不可欠です「解剖学の知識」がなくても動物は描けますが、骨格や筋肉を学ぶことで、より確実な根拠に基づいた作品を素早く、確信を持って制作できるようになります。(図01)。

図01

動物は決してポーズをとってくれません。そのため、動物画家は常に「動物のフォーム」「解剖学の知識」を頼りに制作する必要があります。解剖学の情報を欠いた動物の絵は「ぬいぐるみ」のようだと言われます。これは、骨や筋肉で体の構造が表現されていないためです。

しかし、学習者は、死んだ動物を使って、外科的な点から学ぶ必要はありません。生きている動物、写真、そして「優れた解剖図」を使う方が はるかに効果的です。その解剖図こそが、まさに 書籍『アーティストのための動物解剖学:ドローイング&リファレンス』の内容になります。動物の写真に描かれた簡潔な図解を通して、さまざまな動物の骨格、筋肉系、基本的なフォームと形状を学べることでしょう。

図02

01 ドローイングプロセス

ドローイングプロセスは 3つのステップに分けられます。第一段階では「アクション」や「ジェスチャー」を捉え、対象の動きやポーズを把握します。これは軽く、ゆるやかなストロークで行います。アクションを確立すると、リズムや大まかなプロポーションも決まり、進行に合わせて調整できます。マネキンを組み立てるようにフォームから始めると硬い絵になるため、まず基本的なジェスチャーを確立し、その上に幾何学的フォームを重ねていくとよいでしょう。「アクション」は、動物の根本的な構造と考えることもできます。

第二段階は「フォームの構築」になります。最初のラフスケッチ(ジェスチャー)の上に基本的な幾何学的フォームを重ねます。先に述べたように、基礎となるアクションなしでフォームのみを描くと、硬い絵になってしまいます。そうではなく、さまざまなフォームを使って絵を構築することを目指しましょう。ボックスは面の変化が起こる場所を示し、楕円や円柱は奥行きと遠近感を表現するのに適しています。

最後の段階は「肉付け」です。有機的にするには、フォームを分析し、リアルで説得力のある描写が必要です。このスキルは、練習の中で身についていくものです。動物を描けば描くほど、下描きなしで描いたり、軽いタッチで構成したりできるようになります。最初に大まかな動きの線(ジェスチャー)でラフを描き、その上に直接、有機的なフォームを描き込んでいくことが目標です。しかし、フォームの構築を学ぶプロセスを飛ばしてしまうと、説得力のある絵に必要な基礎が身につかず、完成度の低い絵になってしまうでしょう。

図03

図04

02 ジェスチャー

動物の描き方を学ぶ上で「ジェスチャードローイング」は最優先で習得すべき技術です。これにより、描く対象の「本質的な動作(アクション)」を捉える力を養います。ジェスチャードローイングは、それ自体が完成作品になることもあれば、より完成度の高い作品のための優れた下絵になることもあります。絵を仕上げる前に軽いタッチでジェスチャーを描いておくと、作品がより生き生きとし、個性が生まれます。

ここで肝心なのは、ディテールの描写や完成度ではなく、「対象がどんな動きをしているのか」、その本質を捉えることです。ジェスチャードローイングに特定のルールはありませんが、通常、30秒から3分という短時間で、長く流れるようなリズミカルな線を用いて、対象の動きを表現します。

これらの線は互いに交差しながら、対象の動作を伝えます。多くの場合、1本の「アクションライン(動きの線)」から描き始めるのが効果的です。背骨は体の生命力を表すため、アクションラインとしてよく使われますが、実際にはどの部位から描き始めてもかまいません。

この段階ではあまり作り込まずに、対象の動きや物語を素早く伝える線を描くことに集中しましょう。ペンを紙から離さず、動物のフォームをなぞるように描きながら、動作を感じ取ってください。手首ではなく肩から動かすと、よりリズミカルで流動的な線が描けます。

図05 始め方:ジェスチャードローイングを始める際は、単純で直接的なアプローチが有効です。前肢と後肢の動きは、骨格の動きと長さを反映した1本のリズミカルな線で表現しましょう。動物の本質を簡略化して捉えたスティックフィギュア(棒人間のような線画)をたくさん描いてから、ボリュームや解剖学のディテールを加えていきます

ジェスチャードローイングは、「動きそのものを記録する行為」と言い換えることもできます。意識的に描くことで、最小限の線で対象の特徴を捉えられます。対象の個性や解剖学的特徴、ポーズの本質を表現する重要な部分を見極めながら描いてください。

動物は常に動き回るため、ジェスチャードローイングの練習に最適です。こうした練習を重ねるうちに、絵のバランスが良くなり、知識も深まります。何より重要なのは、長時間かけて静止ポーズを描く際にも、硬さがなくなることです。最終的な目標は、完成作品の中にも生き生きとしたジェスチャーを保つことです

図06 アクションを捉える:ジェスチャードローイングでは、技術的な完璧さや正確さよりも、「対象が何をしているか」を捉えることが重要です

03 内側から外側へ描く

「内側から外側へ描く」とは、最初に対象の輪郭を描くのではなく、ジェスチャードローイング や 簡単なスティックフィギュアから始めることです。この手法は、立体的で 3次元的な見た目を作り出すための鍵となります。外側の線から描き始めると、どうしても 2次元的な考え方になってしまいます。そのため、立体的なフォームを求めるなら、まず内側の線を描きましょう。

この手法は、解剖学的なドローイングにおいて特に効果的です。なぜなら、最初に描くジェスチャーラインが骨格構造として機能し、その上に体のフォームを構築していけるからです。この考え方は 家を建てることに似ています。家の目に見える部分は、家を支える頑丈な柱(骨組み)の上に成り立っています。

輪郭だけで描いてしまうと、絵は平坦になり、その上を構築するときに必要な構造が欠けてしまいます。内側から外側に描くことで、ディテールに進む前に、対象のポーズを確認し調整することもできます。

図07 スティックフィギュアの骨格:内側から外側へ描く簡単な方法として、まず棒状に簡略化した骨格から始め、これを土台にして、ボリュームや形を加えていきます

図08 思考線:内側にある「思考」線やトーンも、内側から外側へ描くアプローチの一部です。これには、「骨のランドマーク」「フォーム同士の重なりやつながり」「楕円」「最初のジェスチャーライン」「筋肉のマッスや形」などが含まれます

04 知っていること と 見ているもの

実際に 観察して描く場合、通常、動いている動物を捉えることになります(眠っている場合を除く)。これは、ポーズを取っている人物モデルを描くのとは異なり、特別なアプローチが必要です。動物は動いているため、「見ているもの」よりも「知っていること」 の描き方を学ばなければなりません。ただし、ドローイングが型にはまらないよう、実際に観察している要素も取り入れる必要があります。

信憑性のある動物画を描くためには、動いていても描けるように、フォーム、解剖学、形、プロポーションを記憶する必要があります。同時に対象を見て批判的に分析し、それを作品に取り入れなければなりません。つまり、知識(知っていること)と観察(見ているもの)を組み合わせて描くのです

知識に基づいて描くには、フォーム、解剖学、特徴、プロポーションを学び、安定した画力を培う必要があります。そのために、解剖学の本 を観察し、複雑なフォームを単純化して、位置を特定し記憶できる基本的な形にします。この手法で 写真を活用し、重要な要素だけを抽出すれば、単なる模写を超えた表現ができるようになります。

図09 実物観察と記憶によるドローイング:このスケッチは、動物園でクマを観察しながら描いたものです。クマはほとんどじっとしていた(頭部はよく動いていました)ため、見たままを描くことができました。ただし、これまでクマを研究し、描いてきた経験と知識も、この絵を仕上げる際に活かされています

図10 動いている対象:この例では、クマが動き回っていたため、見ているものだけで描くことは困難でした。そこで、クマの解剖学に関する確かな知識を活用しながら、同時に目の前の対象の形や動きを観察しました

※このチュートリアルは、書籍『アーティストのための動物解剖学:ドローイング&リファレンス』からの抜粋です (※部分的に調整あり)。

 


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編集:3dtotal.jp