【インタビュー】独自の手法でフォトリアルなキャラクターを制作:キャラクターアーティスト Emerson eCello氏
ブラジルのキャラクターアーティスト Emerson eCello氏 は、広告業界でアートディレクターとして働いた後、現在、フリーランスとしてキャラクター制作を行なっています
Q. 自己紹介をお願いします
私は デザイン科を卒業し、12年ほど広告のアートディレクターとして働きました。イラスト・コンセプトアート・写真、そしてキャンペーンを作るためにあらゆる作業を行いながら、3Dモデリングやテクスチャリングなど CG業界に進むための勉強をしていました。幸いなことに、ポルト・アレグレ(ブラジル)でフルタイムのフリーランス キャラクターアーティストとして働く機会に恵まれました。
『The Legend Lives (伝説は生きている)』© Emerson ëCello
Q. 作品について。アイデアはどこから得ましたか?
アイルトン・セナは、私が子どもの頃から(そして今でも)大きな指標となっています。彼の最大の資質は決断力なので、それを念頭に置き、目的達成ために必要なことは何でもやりました。
プロジェクト『The Legend Lives』の背景にあるのは、「自分のスキルをアピールし、映画/アニメーションの仕事に携わる準備をすること」でした。そこで、憧れのスタジオでよく使われているツールを調べてみたところ、知っているツールは2つ(Maya と ZBrush)だけだったので、他はすべてやりながら覚えていきました。
『The Legend Lives (伝説は生きている)』© Emerson ëCello
>> 『The Legend Lives』のメイキング(日本語訳)は こちら
Q. 制作で苦労したことはありますか? 新しい学びはありましたか?
広告業界でも 3Dモデリングの仕事をしていましたが、それらはスタイライズされたカートゥン作品であり、リアリズムとは無縁のものでした。そのため、似顔絵(ポートレート)と解剖学を研究しました(本当にたくさんのことを学び、理解していきました)。
それに加え、すべて手作業で作りたいと思っていました。今日では、3Dスキャンによる高精細なマップ/テクスチャ/ベースメッシュがありますが、すべてゼロから始めたかったのです。『The Legend Lives』では、テクスチャ・写真・アルファを使わずに肌のディテールをシミュレートし、リアルなマップを描きました。この手法の目的は、デジタルヒューマンの複製ではなく、芸術的な解釈を加え、そっくりなものを作ることです。
スタイライズされたカートゥン調のキャラクター © Emerson ëCello
表情のスケッチ、リトポロジー、ライティング © Emerson ëCello
手作業でリアルな肌を再現しています © Emerson ëCello
Q. 仕事や個人プロジェクトで他に使用しているソフトウェアはありますか?
私の仕事および個人制作のワークフローは以下のとおりです。
モデリングとスカルプトには Maya と ZBrush、アルベド・スペキュラ・SSSマップの作成には MARI(特に複数の UDIM を持つ場合)、ハードサーフェスや UVマップが1つしかないオブジェクトには Substance Painter(膨大なマテリアルライブラリがあり、とても便利です)、衣服や生地は、Marvelous Designer を使います。Maya ではヘアとファーに XGen、レンダリングに Arnold を使います。
Q. ポートフォリオをアップデートする秘訣・ヒントがあればおしえてください
映画業界で働きたいと思っていたので、CGI を次のレベルに引き上げるために企業が何を開発し、使用しているかを常に追いかけてきました。自宅の非力なコンピュータでもプロジェクトを作成し、技術や研究の成果を示すだけでなく、芸術的な視点(美しいプロジェクトを作るために私を突き動かすもの)を示すようにしています。
芸術的な視点を作品に込めています © Emerson ëCello
Q. SNS を使っていますか? お気に入りのハッシュタグをチェックしていますか
Instagram、Artstation、LinkedIn をよく使っています。Instagram ではアーティストが日々制作している作品を追いかけ、気軽に声をかけることができます。Artstation と LinkedIn はよりプロ向けのもので、企業と連絡を取ったり、自分のプロジェクトに対するフィードバックを得たりしています。毎日チェックしているハッシュタグは #3D と #CGI です。
Q. 芸術的な目標はありますか?
映画やアニメーションの仕事を本格的にやりたいですね。広告業界でのキャリアを捨て、自分が情熱を持って取り組めることを仕事にしたのは 大きな1歩になりました。残念ながらブラジルではそう簡単にいきませんが、願わくば、どこかの会社に見つけてもらい、自分の好きなことをして生きていければよいですね
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のアニメシリーズのキャラクター「Venger」© Emerson ëCello
Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください
映画監督の スティーブン・スピルバーグ と ロバート・ゼメキス です。好きな作品は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)、『ロジャー・ラビット』(1988年)、『ジュラシック・パーク』(1993年) など、たくさんあって語り尽くせません。彼らは私にとって唯一無二の存在です。同様に、Kris "Antropus" Costa と Rafael Grassetti も外せないでしょう。彼らは素晴らしい友人であり、業界でも(特にブラジル人の間では)よく知られています 。
https://www.youtube.com/watch?v=-A-AHBt-piM
Q. 次回作についてお聞かせください
このプロジェクトのクオリティには満足しています。特に、2019年の半年の進化(ソーシャルメディアに投稿したもの)を比較すると、もっと上を目指せる気がします。また CGI制作でハードウェアは必要不可欠であり、最近のツールに求められるスペックも上がっています。そのため、すぐにでもコンピュータをアップグレードし(私のマシンは旧型なので、アイルトン・セナのレンダリングでは悲鳴を上げていました)、魅力的なプロジェクトを作成するためのパワーを手に入れたいと思います。
似顔絵やルックデヴの勉強を始めてからの経過 © Emerson ëCello
編集部からのヒント:フォトリアルな CGキャラクターの制作テクニックを学習するには、書籍『3Dアーティストのための人体解剖学』 や 『MAYA キャラクタークリエーション』をおすすめします。