【インタビュー】リアル と スタイライズ の間を模索:キャラクターアーティスト Robson Barros 氏
ブラジルのキャラクターアーティスト Robson Barros が、これまで学んだヒント、ワークフロー、そして、ポートフォリオを紹介します
Q. 自己紹介をお願いします
こんにちは。キャラクターアーティスト/アートプロジェクト マネージャーの Robson Barros です。ブラジルを拠点に活動しており、ゲーム、アート、非現実的な宇宙に関するものに興味を持っています。
長年、UI/UX デザイナーとして、大企業向けの退屈なものを作る企業研修会社で働いてきました。端的に言うと、興味の持てない環境で働いていて、幸せを感じられなかったので、仕事を辞めて状況を変えることにしました。しかし残念なことに、いくつかのトラウマになるような出来事が起こり、結局、すべてを失ってしまいました。人生がいかに儚く短いものであるかを悟った私は「これ以上1分たりとも自分の好きになれないことで人生を無駄にしたくない」と思い、3Dスカルプトの勉強を始めました。
「Archer statue (アーチャー)」(コンセプト制作:Anna Kharitonova)
Q. 制作ワークフローをおしえてください。アイデアはどこから得ましたか
「アーチャー」をつくり始めたのは、Alvaro Ribeiro の素晴らしい「ZBrush for Collectibles (コレクティブルのためのZBrush)」コースを終えた後でした。クラスでトップ5 に入れたので、学んだ知識をすべて使い、繰り返し使える彫像を作ろうと決め、良いコンセプトアーティストを探しました。すぐに Anna Kharitonova を見つけ、彼女のコンセプトを基にスカルプトする許可を得ることができました。
私のワークフローはとてもシンプルです。まず、コンセプトを決め、Tポーズでブロックを作り、キャラクターの各パーツをできる限り作ります(この時点ではTポーズのまま)。次に、トランスポーズマスターでポーズを取り、変形した部分をリファインしてやり直し、アセットを追加してレンダリングします。
トランポーズマスターでポージング
ターンテーブルは ZBrush でレンダリングし、Photoshop で合成
Q. 制作で苦労したことはありますか? 新しい学びはありましたか?
「過度にスタイライズされたコンセプトではなく リアリズムを残したい」と思いました。そのため、単にコスチュームを着た人物ではなく、真実味のあるキャラクターにするのに苦労しました。この部分に関しては、メンターの Alvaro Ribeiro に感謝しなければなりません。彼のおかげで視野が広がり、Anna のコンセプトの良さを最大限に引き出すことができました。それと同時に、リアリズムという目標を失うこともありませんでした。
リアリズムとスタイライズ(様式化)の間をちょうど良い塩梅で変化させた顔の例。右はリアル寄り、左はリアリズムを残しつつ スタイライズしたもの
Q. 仕事や個人プロジェクトで他に使用しているソフトウェアはありますか
業界に入ったばかりの頃から、ZBrush と Photoshop を使い、スカルプトとプレゼンテーションでベストを尽くすことに全力を注いでいます。幸いにも、順調に進歩しているので、近い将来、他のソフトでリアルタイムレンダリングやテクスチャリングを行うようになるでしょう。
シンプルなモノクロの方がうまくいくこともあります
「The Punisher - Statue (パニッシャー)」の3Dプリント
Q. 芸術的な目標はありますか?
業界に入ったばかりの頃は、短期的な目標としてスキルアップを掲げ、クライアントの期待以上の仕事を提供できるように努力していました。ソーシャルメディアでもっと存在感を示し、若いアーティストにフィードバックを与え、できる限りグループに参加し、コミュニティのために貢献するよう努めています。
ZBrush でモデリング(コンセプト制作:Guilherme Motta)
「Mecha Hunter Mark V (メカハンター マーク5)」の 3Dプリント(塗装:Luiza Varella、写真:José Lima)- Loot Studios のために制作
Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください
何人か挙げるとすれば、私のメンターでもある Alvaro Ribeiro、そして、すべてのブラジル人にインスピレーションを与えてくれる Rafael Grassetti です。また、Daniel Bel の人生にも大いに共感しています(彼の作品が多くを物語っています)。
たくさんのアーティストをフォローし、彼らが見せるものから常に学ぼうとしています。ここで重要なのは、スカルプトを長時間観察し、そのアーティストが作ったものを理解しようとしたり、自分ならどうアプローチするか考えたりすることです。
「Fennec fox (フェネック フォックス)」:「Rafa Grassetti's Art challenge Sculpt it yourself」参加作品
Q. 近年の作品についてお聞かせください
今はコレクターズアイテムのスタチューをスカルプトしています! ポートフォリオを見てもらえればわかるように、常に自分自身に挑戦しています。あるキャラクターとシンプルなベースから始めたら、次の作品ではさらに要素を加えるといった具合に、毎回、より複雑な作品と、この素晴らしいコミュニティに貢献するためのチュートリアルをお届けしたいと思っています。
ZBrush でモデリング
Photoshop で合成
「The Hydra (ヒドラ)」の 3Dプリント(塗装:Marcia Georgina)- Loot Studios のために制作
編集部からのヒント:人型キャラクター制作のリファレンスには『アーティストのための人体解剖学ビジュアルリファレンス』を、制作テクニックを習得するには、書籍『3Dアーティストのための人体解剖学』 やおすすめします。