幸運は準備と機会が重なったときに:キャラクターデザイナー Daniel Tarrant氏

キャラクターデザイナー Daniel Tarrant氏が、デザインに必要な要素、そして、キャリアに関する貴重なアドバイスを語ります


Daniel Tarrant
キャラクターデザイナー


Q. 自己紹介をお願いします

こんにちは、キャラクターデザイナー/ビジュアルデベロップメント アーティストの Daniel Tarrant です。イギリスのバーミンガムで、TVアニメーション制作に携わっています。現在、フリーランスとしていくつかのスタジオで働いていますが、愛犬トビーと家で過ごす時間が増えるので、とても満足しています。

A viking boy and his wolf(ヴァイキングの少年とオオカミ)

Q. 誰からインスピレーションをもらっていますか?

Instagram でたくさんの才能豊かなアーティストをフォローしているので、毎日フィードをスクロールするだけで、大きな刺激になります。

それ以外では、ビデオゲーム、映画、書籍、音楽など、消費するメディアからが多いです。ケイト・ブッシュバット・フォー・ラッシーズ のように、感情を揺さぶる、ナラティブのある曲を作るアーティストから、大きなインスピレーションを受け取っています。たとえば、曲の中から伝えたい感情を得たり、特定の歌詞をビジュアルで拡張したり、探ったりすることもあります。

結局のところ、私は大冒険がしたいだけなので、ホグワーツから手紙をもらうか、石に刺さった剣を見つけるまでは、イラストを描こうと思っています。

ただ、仕事が来るのを待つだけでなく、自分から発信することも大切です

Q. 仕事や個人プロジェクトで、どのようなソフトウェア、ツール、テクニックを使っていますか?

個人制作やキャラクターデザインのほとんどで、iPad ProProcreate を使っています。iPad Pro の画面のクオリティは素晴らしく、スケッチブックのように膝の上で使うときの触り心地も気に入っています。

Procreate には最初から素晴らしいブラシが付属していますが、Max Ulichney のブラシパックもいくつか購入しました。普段の仕事では、Photoshop で作業するのが好きです。現在、レイヤーやフィルター、テクスチャを多用する背景デザインを多く手がけているため、Procreate だけでは対応しきれません。

この2つを組み合わせると、飽きずに進められるのがいいですね! 気分転換やコーヒーが飲みたくなったら、自由に仕事場を変えることだってできます。

ハーピーキャラクターの探求(ジョン・コノリーの小説「失われたものたちの本」を題材にしたプロジェクト より)

Q. どのようにして「クリエイティブ・ゾーン」に入りますか? お気に入りの場所や時間帯はありますか?

どちらかというと 私は朝型人間なので、鳥と同時に起きています。活動を始める前に必要なのは、シリアルと一杯のコーヒーだけです。今は自宅で作業することが多いので、壁にお気に入りのアーティストのアートを飾り、インスピレーションを与えてくれるアートブックを手元に置いています。こうして、クリエイティブな気分になれる空間を作っています。犬の散歩をしているときが、最もクリエイティブな気分に浸れますね。野外では余計なことを考えずに、想像力を働かせることができます。

1940年代の少年の表情シート(ジョン・コノリーの小説「失われたものたちの本」を題材にしたプロジェクト より)

Q. あなたが考える「優れたキャラクターデザイン」とは?

キャラクターをデザインするとき、「最初に考えるのはその個性」です。形/シルエット、色使い、衣装、そしてポーズや表情などは、デザインの選択に反映されています。その人物像をしっかりと理解し、それをデザインのあらゆる側面に反映させることで、より説得力のある魅力的なキャラクターになります。

Q. あなたにとって同僚の批評は重要ですか?

尊敬している人や憧れている人に作品を気に入ってもらえると、自信になり、自分を認めてくれているような気がします。また、業界の人たちと話すことで、最新情報を入手したり、経験を共有したりできるのも素晴らしいことです。とはいえ、承認欲求を追い求めたり、他人と比べたりせず、自分のスキルや目標に集中することが大切です。

魔女のキャラクター(魔道士の一団を題材にしたアイデア用にデザイン)

杖よりも大剣を好む魔法使い

Q. これからイラストやキャラクターデザインの仕事を始める人に、アドバイスをお願いします

「アートの基礎」をしっかり理解することが大切です(※)。もちろん、大学や専門学校などの教育機関でも学べますが、世の中には素晴らしい書籍がたくさんあり、手頃な価格/無料のオンラインコースやチュートリアルもあります。その後は、練習あるのみです! 機会があれば 絵を描き、他のアーティストからインスピレーションを得て、あらゆるものをスポンジのように吸収して、自分の作品に取り入れましょう。ソーシャルメディアにはデメリットもありますが、本当に便利なツールです。作品に対するフィードバックを得たり、コミュニティに参加したり、露出を増やしたりするのに最適です。実際にネットで私の作品を見て連絡をくれた人から、仕事をいただいたこともあります。

ただ、「仕事が来るのを待つ」だけでなく、「自分から発信する」ことも大切です。「幸運は 準備と機会が重なったときに起こる」という言葉に集約されているように、まず、たくさんの学習と練習で準備をしつつ、作品を人に見てもらう機会をできるだけ多く作ります。私も最初の頃は苦労しましたが、自信を持って進んでください。集会やネットワーキングイベントに参加し、スタジオにポートフォリオを送ります。作品を人に見てもらえなければ、採用されることはありません。

「アートの原則」は、書籍『デジタルアーティストが知っておくべきアートの原則 改訂版』『デジタルアーティストが知っておくべきアートの原則:ビフォー&アフター』で詳しく学べます。

 

キャラクターをデザインするとき、最初に考えるのはその個性です

Q. もし、アーティストにならなかったら、どんな人生を送っていたと思いますか?

物心ついたときからアーティストになりたかったので、よくわからないですね。私も他の子供たちと同じように、幼い頃は恐竜に夢中で、一時は古生物学者になりたいと思っていました。しかし、本物の恐竜に出会うことはないだろうと考えるようになったです。もしかしたら、バイオエンジニアになって、化石の DNA から恐竜のクローンを作るのに貢献していたかもしれません。

Q. 近年の作品についてお聞かせください

BBC で放送された子供向けTVシリーズで背景アーティストとして働きました。面白くて、かわいくて、エピソードごとにワクワクさせられる素晴らしい番組です。また、クリスマスに BBC で放映された「Mimi and the Mountain Dragon」マイケル・モーパーゴ原作)の背景美術も描いています。この作品には、たくさんの愛と努力が注ぎ込まれており、本当に特別なものに仕上がっています。私はもともとクリスマスのアニメ特番が好きだったので、そこに携われるのは、驚きと非現実的な感じがしましたね。

★トレーラー:Mimi and the Mountain Dragon(29秒)

ハントレスのポーズシート(ジョン・コノリーの小説「失われたものたちの本」を題材にしたプロジェクト より)

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編集:3dtotal.jp