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【インタビュー】『スパイダーマン:スパイダーバース』にも制作参加:コンセプトアーティスト/アートディレクター Bastien Grivet氏

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映画『スパイダーマン:スパイダーバース』にも制作参加した スイス出身のアートディレクター Bastien Grivet氏 の新作は、ドラマ『ハンドメイズ・テイル 次女の物語』の影響を受けて制作されたものです。プロジェクトの詳細とその素晴らしい作品をご覧ください


Bastien Grivet
コンセプトアーティスト/アートディレクター|Wardenlight Studio、フランス

Q. 自己紹介をお願いします

私は南フランスを拠点に活動するスイス出身のアートディレクター/コンセプトアーティスト/作曲家です。妻の Jessica Rossier と共に Wardenlight Studio の代表を務め、世界中の AAA作品のためにさまざまな世界観を作っています。モンバザンにある私たちの小さなスタジオで『コール オブ デューティ ブラックオプスIII』『シャドウ・オブ・ウォー』『エルダー・スクロールズ・オンライン』のシネマティック、そして『スパイダーマン:スパイダーバース』のエンバイロメント デザイン(環境設計)を担当しました。

> 『スパイダーマン:スパイダーバース』のデザイン(制作:Wardenlight Studio)

 

★『スパイダーマン:スパイダーバース』のトレーラー(2分43秒)

Q. 制作ワークフローをおしえてください。アイデアはどこから得ましたか?

個人作品のほとんどは、特定のアイデアから始まるわけではありません。でも、ここ数ヶ月は「本当に言いたいことや見せたいこと」を考え、優れた音楽(チャイコフスキー、ラフマニノフ、ストラヴィンスキー)を聴いて、頭の中にアイデアやイメージが浮かぶのを待っていました。

新作はドラマ『ハンドメイズ・テイル 次女の物語』を見たあとに描いたものです。レズビアンであることを理由に迫害されている「あるキャラクター」のストーリーに、私はとても感動しました。同時に、船の墓場にある「巨大な難破船」を戦争や紛争によって作られた過去の男らしさの象徴にみたて、その2つを組み合わせると壮大なシーンになると思いました。

 

この作品には、私が守りたいもの、迫害や不当な評価を受けてきた友人たちへの詩が込められています。憎しみが勝ることは決してありません。私たちはいつも嫌な記憶の残骸でさえ愛します。憎むべきものなどありません(Photoshop、Cinema 4D 使用)

Q. 制作で苦労したことはありますか? 新しい学びはありましたか?

「伝えたいこと」「それを美しく壮大な静寂の中に表現すること」の完璧なバランスを見つけながら、露骨すぎず、恥ずかしすぎず、適切な感情に仕上げることが課題でした。技術的な学びはそれほどありませんでしたが、コンフォートゾーンの壁を打ち破り、自分の作品で本当に意味のあるものを見いだせたのは新しく、これまでにないエキサイティングな経験となりました。

 

アートワーク(iPad Pro 12.9インチ、Procreate 使用)

Q. 仕事や個人プロジェクトで他に使用しているソフトウェアはありますか?

はい、あります! 愛用しているのは、iPad Pro 12.9インチの Procreate です。私は外に持ち出して、行きつけのコーヒーハウスや交通機関で自由に絵を描ける道具をずっと待ち望んでいました。Cintiq で実現できることは知っていましたが、軽くてバッテリーの長持ちするものが欲しかったのです。Apple が「アーティストのみなさん、長い間あなたたちのことを忘れてごめんなさい。ここに新しいプロダクトをご用意しました」と発表したときに、これこそ自分の求めているツールだと確信しました。そして今では「元に戻す」機能を使って、外で絵を描くのを楽しんでいます!

 

私の「ファイル安置所」から作品。すべての未完成PSDファイルはこの暗い場所で横たわり、新しい「ひらめき」があるまで(時には何年も)利用されるのを待っています。この作品が眠っていたのは「たった4ヶ月」でしたが、ようやく「ひらめき」を見いだすことができました。(iPad Pro 12.9インチ、Procreate 使用)

Q. ポートフォリオをアップデートする秘訣・ヒントがあれば おしえてください

まず、個人作品の重要性を理解してください。やるべきことを教えてくれる人はいません。むしろ、それはあなたの心と頭の中にあるものです。もし、そのアイデアやスタイルを見た意中のスタジオに採用されたら、喜びもひとしおでしょう。

そしてもちろん、食べていくためには「誰かのために」描かなければならないので、自分の創造性にある種の自由を保つための方法とも言えます。私は月に1度、個人作品を作るようにしています。強制はしませんが(無理はしない方がよいでしょう)、頭の中でアイデアが育つまで 2週間以上かけることはありません。

 

「リバー エンジェル」:新しいプロジェクトに登場する最初の女性(Photoshop 使用)

Q. SNS を使っていますか? チェックしているお気に入りのハッシュタグはありますか?

お気に入りは Instagram で、インスピレーションを得るための良い手段になっています。大好きなアーティストやたくさんのフォトグラファー、そして、nature(自然)、food(食べ物)、custom motorcycles(カスタム バイク)、naked people(裸の人々)など、さまざまなテーマのハッシュタグをフォローしています。それらは、たくさんある中のほんの一部に過ぎません。

 

もう1つのアートワーク(Procreate 使用)

Q. あなたにとって同僚の批評は重要ですか?

仕事を始めた頃、それは本当に大切なことでした。しかし仕事にも慣れ、好きなアーティストにたくさん会ってみると、批評の中には期待外れのものもあるとわかってきました。でも、それでよいのです! 「人は人、自分は自分」です。今ではよく知っている人や、並外れた才能を持つ人に認めてもらうことに集中しています。私自身、「自分が会ってみたいと思えるような人」になりたいと思っています。

 

「発明とバイクが大好きな女の子」:毎年秋になると、自分のストーリーをベースにした作品を 1~2点制作しています。

Q. 芸術的な目標はありますか?

たくさんのアイデアとテーマで実験しています。たとえば、今はヌードの世界にハマっています。私は幸運にも有名なヌード フォトグラファーと友達になり、いくつかのイラストプロジェクトで一緒に仕事をする機会がありました。新作は、これから発売されるアートブック『Hardcover』のためのもので、凄腕のアーティストがたくさん登場します(注意:それは本当に「ホット」な作品になります)。

 

「友よ、あなたを見ています。どこにいてもすぐに見つけてあげるから...」(Photoshop 使用)

Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください

「一目惚れ」した作品は、アレクサンドル・カラメ、アルバート・ビアスタットトーマス・モランフレデリック・エドウィン・チャーチ など、過去の伝統的なアーティストたちのものです。こうした ハドソン・リバー派 の人たちはもちろん、Alberto Mielgo(『スパイダーマン:スパイダーバース』のアートディレクター)、Andrew TischlerJames Gurney など現代のペインターたちもいます。ここですべての名前を挙げることはしませんが、私はそれらの作品をこよなく愛しています。それはエベレストのようなもので、さまざまな試練があり、決して山頂に到達することはできない偉大な山なのです。

 

映画『NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム』の色づかいにインスパイアされたトロン風シーン(Photoshop 使用)

Q. 次回作についてお聞かせください

難しい質問ですね。たくさんの裸の人たち(言い過ぎかな?)や、モンペリエで女性向け恋愛シミュレーションゲームを手掛ける 1492 STUDIO とコラボレーションしたモバイルゲームなど、NDA(秘密保持契約)の下でまだたくさんのプロジェクトのスチルイメージが控えているので、お見せできるのを楽しみにしています。

 


編集部からのおすすめ:世界のプロに学ぶ仕事術、上達法、セルフプロモーション、キャリアアップのヒント。書籍『コンセプトアーティストになるために知っておきたいこと』

 


翻訳:STUDIO LIZZ (TK)
編集:3dtotal.jp

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