【インタビュー】素晴らしい彫刻作品とインスピレーションの源:キャラクターアーティスト Daniel Peteuil氏
米ロサンゼルスの 3Dモデラー/キャラクターアーティスト Daniel Peteuil氏が、見事なスカルプトと その背景にあるインスピレーションについて語ります
Q. 自己紹介をお願いします
Daniel Peteuil です(発音は "ピーティ")。ゲーム業界に身をおき、Ready at Dawn(レディアットドーン)でキャラクターアーティストをしています。現在、ロサンゼルスのダウンタウンに住んでいます。
習作:ジャック・ヒューストン演じるリチャード・ハローの肖像(ドラマ『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』より
Q. 常にアーティストになりたいと思っていましたか? 3D業界へはどうやって入りましたか?
1つめの質問に関しては何とも言えません。子どもの頃はスポーツに夢中でした。アートも気になっていましたが、あまり強く追求することはありませんでした。小学2年のときに「将来、フットボール選手とアーティストの両方になりたい」と書いた気がします。高校生になると、プロ野球選手だった義兄の後押しもあり、フットボールの道に進むことに決めました。しかし、怪我をしてしまい、結局、自分にはその進路に立ち向かうほどの情熱がないと気づきました。 その後「何をしたいのか」を真剣に考えました。もともと彫刻・映画・ゲームなどに魅力を感じていて、3D はそのすべてを追求できる手段のような気がしました。進路をいくつか調べた後、高校3年のときにデトロイトのアートスクール College for Creative Studies(CCS)の Maya入門クラスに登録しました。それまでにもいろいろなことがありましたが、私を今の場所に導いてくれたのは CSS だと思っています。
青銅彫刻
Q. アーティストとして最大のインスピレーションは何/誰ですか?
ほぼ何でもインスピレーションの源になります。ただ、私は「ストーリー」から最も影響を受けていると思います。今日、素晴らしいビジュアル ストーリーテリングが豊富にあり、刺激を受けないようにするのは難しいでしょう。もちろん、小説も多くのインスピレーションを与えてくれますが、体験する(読む)のに時間がかかります。文学の良い点は、技術的な制約や誰かの視覚的な解釈に縛られず、自分の想像力を使えるところです。 個人的には、ブルース・リー(武道家・俳優・脚本家・映画プロデューサー)と リッキー・ジャーヴェイス(俳優・コメディアン・脚本家)からインスピレーションを受けています(奇妙な組み合わせですね)。彼らの「プライド・品位・効率性・全体の見通し」は、私の仕事への取り組み方にも影響しています。
ガラハッド卿のブラックウォールヤードシャツのしわマップ(ゲーム『The Order:1886』より)
芸術的に最も影響を受けているのは、フランスの彫刻家 オーギュスト・ロダン です。彼の魅力は、テクニックと解剖学的な正しさだけにとらわれず、効果的に感情を伝えていることです。現代アートでは、Gary Weisman、Robert Liberace、Roberto Ferri が、伝統的なアート形式において大きなインスピレーションの源となっています。 もちろん、エンターテインメント業界ではたくさんのアーティストが活躍しており、こうしたすべての感動的なビジュアルストーリーに貢献しています。この業界で働くのは素晴らしいことです。多くの場合、隣にいるアーティスト仲間があなたに刺激を与え、改善を後押ししてくれるでしょう。
習作:キリアン・マーフィが演じるトミー・シェルビーの肖像(ドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』より)
Q. どんなソフトを使っていますか? また、お気に入りのヒントやコツがあればおしえてください
作業の大部分は、ZBrush、Maya、Photoshop、Keyshot で行いますが、必要に応じて 他のソフトも使います。 ZBrush で最近取り組んでいるのは、物事をより物理的に正確にすることです。布に継ぎ目があれば、ブラシを使わずにメッシュを分解して、物理的な継ぎ目を作成します。特に[Insert Multi Mesh]ブラシのステッチなどを使う方が、よりシンプルできれいな結果になると感じます(※編集部注:ステッチの作り方は「ZBrush使用、アーミーブーツの仕上げ方」も合わせてご覧ください)。
また、スカルティングで ZBrushノイズを使い始めると、そのマテリアルをよりうまく表現できるようになりました。たとえば、布のスカルプティングで布のアルファを使うと、その材質を簡単に視覚化できます(※編集部注:ノイズの使い方は「ZBrush の基本を知る - テクスチャリング編」のステップ7 も合わせてご覧ください)。 [Smooth]ブラシを使えば、布のディテールが失われる心配もありません。後のワークフローでタイリング可能な布パターンをオーバーレイする場合、適用後にスカルプトディテールが維持されるかを確認するのに役立ちます。そして、完成モデルでよく見えるように、もっと誇張する必要があるかどうかもわかることでしょう。
テスト作品(ZBrush 4R7 ベータ版 使用)
Q. あなたは3D彫刻の他に、伝統的な彫刻・写真・2Dアートにも取り組まれていますが、最も楽しんでいるのはどれですか? その理由もお聞かせください。また、他のスキルはデジタル3D制作に影響していますか?
私は、新しいアート形式を学ぶのが大好きです。それによって、互いに情報を補完し合うだけでなく、アーティストとしても成長できると思っています。3Dフォームは私の情熱です。最も楽しんでいるのは 伝統的な3D(立体造形)とデジタル3Dで、理由は私にとって 最も居心地のよい場所だからです。一方、2Dには苦労しています。すぐに集中できなくなるので、そのための練習も大事だと思います。それは、粘土のように、時間を要する物理的な性質のものとは違うとわかってきました。 家の外でアートを追求したり、自分の住んでいる地域を探索したりするために写真を始めましたが、プロジェクトに集中していると 続けていくのも一苦労です。
Q. 将来の計画や目標は何ですか?
何よりもまず上達することです。私は自分の仕事に満足するのを恐れています(満足すると技術は停滞します)。だから、技術の向上に役立ちそうなものがあれば、なんでもやってみたいと思っています。 追求したい工芸やスキルはたくさんあります。たとえば、自分専用のナイフの作り方を知りたくてうずうずしています。また、机から離れて自然の中で行う仕事のスキルも身につけたいです。モノ作りが大好きなので、身につけたスキルで面白いものを作り、貢献したいと思っています。
テスト作品(ZBrush 4R7 ベータ版 使用)
Q. 忙しい 1日の仕事の後、どのようにリラックスしていますか?
私は、スタンドアップ コメディが大好きです。そして、ロサンゼルスには、定評のあるコメディアンが出演する無料のコメディショーがたくさんあります。10代の頃はビデオゲームをしたり、TVでスタンドアップコメディを見たりして過ごしました。今は、昼にゲームを作り、夜はバーや中華レストランで(私が見て育った)コメディアンを見て楽しんでいます。 それは息抜きに最適ですが、そんな時でさえ、人々が創造的にふるまい、技術の習得に努力しているのを目にします。スタンドアップは人前でしか実践できないという点で、珍しいアート形式です。ただそこに立っているだけで面白いというのはシンプルですが、やりがいのあることでしょう。見て、とても楽しめます。私は新しい技術を学ぶのが好きなので、他の人が自分の技術を磨き、向上する姿を見るのは本当に刺激になります。
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