2Dのコンセプトアートを3Dに:『Max』のメイキング
ポルトガルの Ricardo Manso氏 が、2Dのコンセプトアートを 3Dにする工程を紹介します
はじめに
このチュートリアルは Max Ulichney の コンセプトアート を基にしたプロジェクト『Max (マックス)』のメイキングです。制作パイプラインを誰でも理解できるように、ブロッキングから最終レンダリングまで、すべてを網羅します。
01 ブロックアウト
最初のステップで、キャラクターをブロッキングします。私は、全体のシェイプ(形)を得るのに 一次フォームのみで表します。このようにシェイプを低解像度にしておけば、各部位を簡単に動かせるでしょう。この段階では、すべてのシェイプを完璧にすることにあまりこだわらず、適切なプロポーションを模索します。すべてのフォームを作成できたら、ZBrush のダイナメッシュで統合し、各シェイプをもう少し整えます。
ブロックアウト
02 一次&二次的シェイプ
すべてのプロポーションを洗練させ、一次的なシェイプで作業したあと、二次的なシェイプに進みます。まだ完成には程遠く、多くの改善の余地があります。
ダイナメッシュのシェイプを洗練させる
03 頭部のリトポロジ
ダイナメッシュのジオメトリは粗いので、トポロジをクリーンアップする必要があります。リトポロジをゼロから行う代わりに、クリーントポロジのベースメッシュの頭部を使い、ダイナメッシュモデルのディテールをクリーンモデルに投影します。クリーンモデルができたら、メッシュの解像度を上げながら形を洗練させ、ディテールを追加することができます。
クリーントポロジ
04 ボディとヘルメット
顔のディテールを詰める前に、他の要素をすべてブロッキングして、全体のルックを確認できるようにしましょう。クリーントポロジでボディとヘルメットを作成し、すべて低解像度に維持すれば、必要に応じて簡単に変更できます。毛(髪、口ひげ、眉毛)もブロッキングし、形がコンセプトに即しているかを確認します。ここまで終えたら、サブディビジョンを増やし、各要素に必要なディテールを加えていきましょう。
ボディのブロッキング
ディテールを追加する
05 テクスチャリング
すべてのオブジェクトのディテールが揃ったところで、UV展開を始めます。この作業には Maya と UDIM を使い、頭部に2つ、すべての衣服とプロップに4つ設定しました。UV をすべて設定したら、Substance 3D Painter に書き出してペイントします。
Maya で UV展開する
Substance 3D Painter でテクスチャリング
06 マップ
ZBrush から 32ビット ディスプレイスメントマップと法線マップをエクスポートします。法線マップを Substance 3D Painter にインポートすれば、布テクスチャのようなディテールを追加できるでしょう。Substance からディフューズ、法線、ラフネス、スペキュラウェイト、スペキュラーカラー、メタルネスをエクスポートしました。これらは、私が普段シェーダで使っているマップです。
マップ
07 シェーダ
すべての低解像度メッシュを Maya に読み込み、シェーダを設定します。私はシンプルにすることを心がけています。レンダリングには Arnold を使い、マップを適切な場所に接続します。あちこちに調整ノードを加えて、設定を微調整しましたが、特別なことはしていません。
布のシェーダ
頭部のシェーダ
目のシェーダ
08 グルーミング
グルーミングには Maya の XGen を使い、できるだけ分けています。XGen ディスクリプション は、髪の毛に3つ、眉毛に1つ、上まつげに1つ、下まつげに1つ、口ひげに1つ(口ひげをもっと細かく分けることもできますが、今回は1つで十分です)、小さな髭、産毛、鼻毛にも1つずつ加えています。
主に集中して作業したのは、XGen のガイドです。このガイドが問題なく機能すれば、作業の80%は完了しています。その後、[ノイズ][クランプ][カット]などのモディファイアを適用します。よりリアルに見せるために、衣装にも毛を加えています。
XGenガイドとヘア
09 ライト
ライトもシンプルにとどめ、信憑性を追求しました。影とハイライトの部分でコントラストを作成したかったので、ドームライトと3つのエリアライトを使い、そのうちの1つは暖色系、もう1つは寒色系にしています。さらに、雰囲気を出すため、カラーパレットに合わせて青みがかったトーンで大気を加えています(Engironment > Atmosphere > Atmosphere Volume)。
ライティング設定
10 レンダリング
このプロジェクトでは、3Dでできる限りのことを試してみたいと思いました。エラーを最小限に抑え、綿密なポストプロダクションを行わずに、最終レンダリングで雰囲気を作り出しています。最終レンダリングはパスに分けず、Photoshop で色調整とビネットを加えて完成です。
ワイヤーフレーム
クレイレンダー
完成イメージ
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