ネコのキャプテン・アメリカ!? 『キャプテン・ミーチョ』のメイキング

イタリアの Matteo Caruso氏 が、3Dキャラクター「キャプテン・ミーチョ (Captain Micio)」の制作ワークフローを紹介します


Matteo Caruso
フリーランス アーティスト|イタリア

はじめに

新しい作品に取り掛かるのは大変ですが、良いインスピレーションがあれば手を着けやすくなり、パイプラインもより簡略化できるでしょう。今回のインスピレーションは、才能豊かな John Nevarez氏 の コンセプト から得ました。私はマーベルの世界が大好きなので、キャプテン・アメリカを猫で表現するのは、とても面白そうに思えたのです。

01 大まかに造形する(ブロックアウト)

スカルプト作業にすべてを集中させるステップです。この作品では ZSphere を使いたくなかったので、新しいアプローチを試し、形を整え、表面をクリーンアップしていきました。

図01:プリミティブでブロックアウトすれば、素早く基本形状を作成できます

02 ダイナメッシュ

今回は ZBrush を使った スカルプティング のパイプラインで、新しい作業スタイルを試しました。まず、インサートメッシュブラシを使って、大まかな初期フォームから始めます。今回のモデルにおいて、[ダイナメッシュ]は、スカルプトに十分な自由度と快適さを保つ最良の選択の 1つです。

図02:この段階では基本形状に集中します

03 Zリメッシュ

できる限り最高のスカルプトを実践するために、良いトポロジーが必要です。よって、リメッシュは非常に重要なステップになります。トポロジーの良し悪しは、グルーミング段階でも決定的な差になるでしょう。ZBrush の[Zリメッシャー]は便利で強力なツールですが、スパイラル(らせん状)を避け、必要なループを取得することに集中してください。

図03:ブラシを何度も試し、最も有効なループを見つけました

04 ポージング

キャラクターに初めて生命を吹き込み、作品をチェックできるポージングは、私のお気に入りのステップです。通常、この段階では[トランスポーズマスター]とさまざまなマスクを使います。これにより、迅速にポーズを作成できるので、さまざまなパターンを見る良い機会になります。

図04:ときには最高のポーズになるまで、さまざまなポーズを試してみることをお勧めします

05 UV とテクスチャリング

良いトポロジーがあれば、ZBrush で扱いやすいUVを簡単に作成できます。私は目・口・頭・鼻などを定義するために、たくさんのポリグループを作成しました。これらのグループと[UVマスター]を使えば、UVセットの精度が向上し、きれいな仕上がりになります。

図05:ファーの色が最高の結果になるように、ブラシには有機的なアルファのみ使用します

06 マップ抽出

スカルプティングに半分の時間をかける場合、残りの半分はマップの作成に専念します。優れたマップを使った場合のみ、そのモデルは ZBrush のルックでレンダリングされます。通常、私はすべての3D要素のハブとして Maya を使っています。Maya では大量のポリゴンを扱えませんが、ディスプレイスメントマップと法線マップがあれば、ディテールと形を維持できるでしょう。

※ZBrush でのレンダリングについては「ZBrush のBPRレンダー使用『Goddess -女神』のメイキング」も合わせてご覧ください。

図06:ZBrush から抽出したマップ

07 Xgen でファーを作る

基本的なマテリアルを設定し、スカルプティングから 元のジオメトリを復元したら、いよいよ ファーの出番です。私は作業を始める前に、自然界の中でファーを探して研究するのを楽しんでいます。初期コンセプトは起点になりますが、一貫したモデルを実現するには、適切なリファレンスを研究することが基本です。

図07:ヘルメットをかぶっているため、顔と目の部分にのみファーを作りました

08 シェーディングとライティング

すべてのテクスチャとマップをまとめ、最高のシェーディングを施すときがやってきました。Substance Designer / Substance Painter は、プロセスの高速化に貢献する素晴らしいツールです。まず Maya の Arnold サーフェスから始め、次に Substance で作成したすべてのマップをリンクさせます。また、マップとシェーダの間のブリッジとして[範囲設定]ノードを置くのも良い習慣と言えるでしょう。これは、マップの値を調整して、ディテールや細かいスペキュラを明確にするのに役立ちます。

ライティングをドームから始めると良いワークフローになるかもしれません。私は、最初のステップで、アンビエントライトを確立しました(HDR は素晴らしいスペキュラを持っています)。次のステップでキーライトに柔らかい影を持つエリアライトを選択しましたが、今回はイメージにインパクトを出すのにリムライトが役立ちました。

図08:典型的なサブスタンスノード シェーダと Arnold でのレンダリングテスト

09 AOV

この段階では、イメージを別ピースに分割します(※複数のレンダーパス、AOV でレンダリング)。注意して分割する必要があります。特に「Z深度」「IDマット」 に注意してください。この2つは、最終イメージ調整時に重宝し、リアリズムをさらに取り入れたいときに役立ちます。

図09:AOV のコレクション

10 合成と最終イメージ

最終合成は Nuke で行いました。全体像を把握するために、まず、すべての AOV を Merge(統合)することから始めます。次に、光のムードを演出するため、Glow(グロー)とBlur(ぼかし)ノードをいくつか配置します。

もう 1つの重要なステップは、IDマットで実現されています。特に このケースでは「盾」がキャラクターに大きな影を落としているので、わかりやすくきれいなポーズに見せるため、ライトを多めに追加しています。

最終イメージ

 


編集部からのおすすめ:ZBrush による制作テクニックを学ぶには、書籍『ステップアップのための ZBrush ガイド』『ZBrush キャラクター&クリーチャー』をおすすめします。

 

 


翻訳:STUDIO LIZZ (TK)
編集:3dtotal.jp