ダークなキャラクター『Plague Doctor -ペスト医師』のメイキング
ブラジルの 3Dアーティスト Michael Robson氏 がダークなキャラクター『Plague Doctor -ペスト医師』のメイキングを紹介します
はじめに
皆さん、こんにちは。ブラジルのクリチバ在住の 3Dアーティストの Michael Robson です。3Dアートを始めて1年半くらいになりますが、このメイキングでは、アニメーションに使えるような 3Dキャラクターの作成プロセスをご紹介します。これは Boris Rogozin氏 のコンセプトアートを元にしたキャラクターです。
01 リファレンス収集
リファレンス収集は、クリエイティブ プロセスの中で最も重要なステップの 1つです。今回は、コンセプトアートを具現化するのに役立ちそうな実際の写真を研究しています。たとえば、このコンセプトアートを見ると、キャラクターの身体のほとんどは衣服で覆われています。そこで、さまざまな種類のマテリアル分析に時間をかけました。
図01:リファレンスには実際の衣装の写真もあります
02 ベースメッシュを大まかに作る
キャラクターのベースメッシュのブロッキングを開始します。ZBrush のベースモデルに[Move]ブラシと[ClayBuildup]ブラシでポーズをつけていき、コンセプトアートの姿勢に合う素敵なシルエットを作成しました。このステップは急がず、時間をかけてください。単色にして シルエットをチェックすれば、ディテールに気を取られることはありません。
図02:コンセプトに合わせてベースメッシュをポージング
03 2次的な要素を大まかにつくる
ベースメッシュに満足したら、衣服や小物などの2次的な要素に取り組んでいきます。ここで使っている手法は非常にシンプルで、基本的にマスク([MaskPen]ブラシ)・抽出・移動([Move]ブラシ、[ClayBuildup]ブラシ)・[Zリメッシュ]です。この時点で細かいことは気にしません。ベルト・チェーン・ランプなどの小物は Maya でポリゴンモデリングしました。
図03:ベースメッシュを抽出して二次的要素を作る
図04:Maya でモデリングした小物類
04 衣服を作る
Marvelous Designer が自分に合っているか試すため、非常にしっかりとした衣服のベースを抽出しました。このソフトウェアで見映え良い衣服を作りたいなら、実際の衣服がどのように縫い合わされているか確認してみましょう。各パターンの寸法をお互いに一致させれば、クロスシミュレーションを実行しても、布が奇妙に伸びることはありません。ベースに満足できたらパターンをクローンして、2層目の生地レイヤーとして貼り付けます。このとき[粒子間隔](particle distance) を小さくし、[収縮](Shrinkage) を最初の生地レイヤーよりも高い数字に調整します。
図05:Marvelous Designer で衣服を作る
ヒント:Marvelous Designer では、レイヤーを使って作業することをお勧めします。そうすれば、衣服が整理され、シミュレーションがうまいくいきます(アーティファクトも生じません)
図06:2層目の[粒子間隔]は小さく、[収縮]は大きくします
05 リトポロジー
キャラクターにだいたい満足したら、リトポロジーを実行します。[Zリメッシュ]に慣れている人もいると思いますが、私の好みは すべて手作業で行う方法です。そうすれば、メッシュ上で四角ポリゴンの分布を完全に制御できるでしょう。まず ZBrush でデシメートしたメッシュを Maya に読み込みます。次に[四角ポリゴン描画](Quad Draw)を使って、その上にサーフェスを再作成していきます。
図07:Maya に読み込んだメッシュ(間引いたもの)に[四角ポリゴン描画]でリトポロジーを実行します
06 UV
キャラクター全体のリトポロジーを終えたら、Maya でUVを展開します。リトポロジーから計画しておけば、展開時に問題は起こらないでしょう。こうしたことからわかるように、リトポロジー段階は、焦らず 注意を払うべき大切なステップの 1つです。
図08:Maya でUVを展開する
07 ディテールを追加する
UV を準備できたら、その UV付きメッシュを ZBrush にインポートして、ディティール制作に取り組みます。この段階の私のアプローチは、リファレンスを意識しながら、ZBrush レイヤーで非破壊的に作業し、サーフェスノイズでサーフェスに面白みを加えていきます。今回は、継ぎ目のない生地のテクスチャをロードしました。
図09:傷や縫い目などをレイヤーで分けて作業する
図10:サーフェスノイズでディテールを加える