人は細い糸で吊るされたダモクレスの剣の下で生きている:「Garden of Damocles」のメイキング

オーストリア、ウィーンのイラストレーター Csaba Bánáti氏 が、「Garden of Damocles -ダモクレスの庭園」の制作ワークフローを紹介します(3ds Max、V-Ray、Marvelous Designer、Photoshop 使用)


Csaba Bánáti
イラストレーター|オーストリア


はじめに

これから「Garden of Damocles -ダモクレスの庭園」の制作の裏側を紹介します。このメイキングに特別な解説はありませんが、ストーリーと、イメージを通して「どのようにメッセージを伝えたか」に重点を置いています。

 

「Garden of Damocles -ダモクレスの庭園」

01 アイデアとリファレンス

コンセプトは、私自身の「理解したい」という超シンプルな感覚から生まれました。インターネットでいくつかの中庭の画像を見て、「不思議な感覚」を覚えたのが始まりです。なぜ、私の中にこのような反応が生まれたのか、確認してみたくなったのです。制作に取りかかると、その過程でアイデアがどんどん湧いてきました。

私の中に「特別な感情」を呼び起こした中庭のリファレンス

02 モデリング

モデリング自体はシンプルなボックスモデリングで、好みのルックになるまで、頂点を押したり引いたりするだけです(3ds Max 使用)。また、この場所自体もリファレンスに基づいているので、余計な思考は必要ありませんでした。

空間を埋めるためのオブジェクトや重要度の低いものには、既成モデルを使っています。主役は「爆弾」「ビニールカバー」なので、モデリング時間の大半をそれらに費やしました。ビニールカバーは、Marvelous Designer で作成しています。

完成シーンと爆弾モデル

モデルを配置する前の中庭モデル

カバーモデルの最終イテレーション

男も女も子供も、細い糸で吊るされたダモクレスの剣の下で生きている。それは、事故、誤算、狂気によって、いつ切れるかわからない(意訳:核戦争の危機が、常に身の回りに存在している。それは、事故、誤算、狂気によって引き起こされるため、我々はその脅威から逃れることはできない)

-ジョン・F・ケネディ

03 構図

最終的な完成イメージについて、とても強いビジョンがあったため、良いアングルを探すのにあまり時間をかけていません。私は正面からのショットに、前景要素で奥行きを出したいと思いました。このシーンで少し厄介だったのは、「爆弾の配置」でした。わかりやすくするため、最適なサイズとスポットを見つけると同時に、ストーリーをサポートするため、違和感のない爆弾の吊るし方も見つける必要がありました。

カメラアングルのイテレーション

04 ライティング

ベースとなるスケッチを描かないときは、なるべく早い段階でライトを試します。この場合も、マテリアルが揃う前から試し始めました。そうすることで、ディテールに取り組む前に、ムードを確認できます。一般的なドームライト、爆弾のキーライト、後ろからのフィルライトを使い、派手なものはありません。

簡単なセットアップ

05 マテリアル

普段のマテリアルは超シンプルで、複雑なブレンドマテリアルは作りません。基本的なディフューズ、光沢、反射、バンプのみです。そして、思いどおりのものができるまで、それぞれの値を弄っていきます(V-Ray 使用)。

今回は、一部のモデルをアンラップしなくても、十分な見栄えが得られるように、普段と少し異なるプロシージャルなマテリアルも作成しました。最初はリアルなものを作りますが、それを自分のニーズに合わせて調整していきます。リアルさよりも、自分自身を表し、気持ちを伝えることに重点を置いています。

壁、爆弾、ビニール

爆弾と壁にはブレンドマテリアルを使い、必要な部分に汚れや錆を加えます。ビニールマテリアルは超シンプルですが、2種類のバンプをミックスしています(1つは大きな折り目用、もう1つは小さな折り目用)

06 ポストプロダクション

図のように、この段階でかなり変化しています。自分のストーリーに合わせて、イメージに強いパンチを加え、映画的な感覚を出せるように試みています。また、ディテールを失ってもいいので、少しアナログなものを取り入れます。最終的な色の調整は、納得がいくまで何度か繰り返し、グローとフレア以外の余分な要素は加えていません。

イテレーション

完成イメージ

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編集:3dtotal.jp