光差し込む 落ち着いた部屋、『Reading Room』のメイキング

ヨルダンの 3Dアーティスト Firas Ma'ayah氏 が、光が差し込む 落ち着いた部屋。ディテールあるクラシックなインテリアシーン『Reading Room (読書室)』のメイキングを紹介します(3ds Max、Substance Painter、Marvelous Designer、V-Ray 等使用)


Firas Ma'ayah
フリーランス デザイナー&3Dアーティスト | アンマン、ヨルダン

はじめに

このプロジェクトは 3ds Max(+ V-Ray)と Substance Painter のワークフローの演習として始めました。最終的には、私のプロジェクトの中で、最も手の込んだ思い入れのある作品になりました。できる限り最高のものをゼロから作成したいと思い、ディテールだけでなく 全体の構成にも細心の注意を払いました。以下は、私のワークフローと制作プロセスの簡単な概要です。

01. ブロッキング(大まかにモデリングする)

モデリングする家具の種類、配置、スケールの大まかなアイデアを得るため、スケッチのように 初期シーンを形作ることから始めました。さらにカメラも加えて 初期カメラアングルを選び、作成した要素を配置。こうして、構図のスケッチを作成しました。初期ライティングも このタイミングで作成しています。

ブロッキングの段階。配置は完全にランダムに見えますが、私には各オブジェクトが表すものについて明確なアイデアがありました

02. リファレンス

私には、全体のイメージとアンティークのルックについての良いアイデアがありました。リサーチした結果、考えていたものに最も近いのは、ルイ15世(ロココ)様式のアンティーク家具だとわかりました。今回のプロジェクトにうってつけのリファレンス画像は アンティークショップのもので、それらはさまざまな角度を捉えていたので、それぞれの家具を把握するのに役立ちました。制作した家具の多くは、収集したさまざまなリファレンスの要素を組み合わせたものです。

さまざまな家庭用品のリファレンス画像

03. モデリング

モデリングを始めるにあたり、プロジェクトを 大きな塊に分割して扱いやすくします。私は、それぞれの家具を別ファイルでモデリング。そして、それらを 1つずつメインファイルにマージしました。家具モデルは すべて 3ds Max でモデリング、布(クロス)パーツは Marvelous Designer でシミュレートしたものです。

 

それぞれの家具のモデル

最終シーン(ワイヤフレーム表示)

モデリングでは Substance Painter を使用する テクスチャリングのワークフローを念頭に置き、ポリゴン数を最小限に抑えます。裏側のような部分は削除しています 。

 

ブロッキングから最終モデルまでのモデリングプロセス

04. UVWアンラップ

各パーツをモデリングしたら、3ds Max の[UVWアンラップ]モディファイヤで展開します。ジオメトリは ほとんど中サイズのポリゴンなので、作業の大部分は簡単でした。それぞれ展開後に、さまざまな部分をまとめてアタッチし、最終的なテクスチャの解像度に留意します。全体的な質感を高く保つために、家具の一部を いくつかのオブジェクトに分割しています。家具全体に 1つのテクスチャセットを使用するのではなく、さまざまな部分に複数のセットを使用しました。

全体的なテクスチャ品質を高く保つため、それぞれの家具オブジェクトに個別のテクスチャセットを使用

05. ライティングとカメラの設定

主なライティングは HDRI Haven の Dome Light や V-Ray Sun、窓からの適度なライト透過用の Sky Portal です(※図を参照)。ランプには、暖色の V-Ray Meshライトを使用し、カメラの後ろにあるスカイブルーの低い拡散光で反対から照らしています(※後ろの壁を無視)。

ほとんどのマテリアルは暗くなります。部屋の側面が暗くなりすぎるのを防ぐため、私は、後ろの壁に光を反射するシンプルなマテリアルを適用し、V-Ray Sun からの多くの光を反射させています。これを行うには、カメラを壁の外側に配置します(※そうしないと歪みが発生)。そして、カメラをシーンの後ろに配置し、背後の壁は映らないように設定しました。

ライティング設定

06. マテリアルとテクスチャ

すべてのマテリアルとテクスチャは Substance Painter で作成しました。その多くに、わずかな汚れと使い込みのマスクを使用しています。木のマテリアルは、Mario Della Bona氏 の「Free wood smart material pack」を組み合わせたものです。またアンティークな外観を与えるため、所々に Jonas Ronnegard氏 の素晴らしい装飾用ブラシセット「JRO - 55 Ornament Brushes/Alphas」を使いました。3ds Max の多くのマテリアルは Substance Painter から直接接続していますが、布(クロス)のマテリアルは自己照明(セルフイルミネーション)によって減衰を加え、折り目のエッジを表現しました。

わずかな布(クロス)の自己照明によって、減衰を加える

家具オブジェクトのサンプル(マテリアルを適用 / Substance Painter のI-Rayでレンダリング)

07. レンダリングとポストプロダクション

レンダリング設定では、GIのライトキャッシュ付きのイラディアンス(放射照度)マップを使用。Denoiser(デノイザー)はプログレッシブに設定して 4K解像度でレンダリングしました 。そして、Photoshop で基本的な色補正(色・明るさ・コントラストの調整)などをして、最後にビネット効果と窓からの光線を加えています。

 

Photoshop でポストプロセス

最終シーン


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翻訳:STUDIO LIZZ (TK)
編集:3dtotal.jp