スタイライズしたキャラクター「オタクっぽい少年 ネルソン」のメイキング
ブラジルの キャラクターモデラー Joao Victor Ferreira氏 が、スタイライズしたキャラクター「オタクっぽい少年 ネルソン」のメイキングを紹介します(ZBrush、3ds Max 等使用)
はじめに
こんにちは! ブラジルのキャラクターモデラー Joao Victor Ferreira です。この作品は個人プロジェクトとして制作しました。オタクっぽい少年 ネルソン(Nelson)が 教室で、先生の質問に最初に答えようとはりきっているシーンです。
01. モデリング
ネルソンをモデリングしようと決めたときの目標は「かわいいキャラクターを作ること」だったので、形状だけでなく、表情にも取り組まなければなりませんでした。モデリングは ZBrush で行いました。まず最初に ボリュームを作成、次に プロポーションを調整し、最後に ディテールを追加しました。モデルの準備が整ったら、3ds Max にエクスポートしました。おおよその髪型を把握したかったので、髪の毛(ヘア)もモデリングしました。これは Ornatrix(ヘア用プラグイン)を適用するときに 髪の毛のループに基づいたガイドとして使用します。
02. リトポロジー
ベースメッシュ を元に ネルソン をモデリングしたので、少し時間の節約になりました。つまり、すべてをリトポロジーせずに、エッジループやカットのような調整のみ行いました。図でメッシュのエッジループを確認できます。私は 3ds Max でこの微調整をしました。
03. リギング
このキャラクターをアニメーションさせる予定はなかったので、ポーズ用のリギングを行いました。腕の IK/FKブレンディングシステム、キャラクターの曲げを可能にする FK と IKシステムを兼ね備えたハイブリッドスパイン(背骨)、伝統的なリバースフット、そしてフェイシャル用ブレンドシェイプのシンプルなコントロールを作りました。
04. 教室
教室には 多数の同じようなオブジェクトがあったので、手速く作成できました。私は イースター・エッグ のように、シーンに「妻の名前」や「過去の作品」をいくつか隠しておきました。教室のディテールは ネルソンと同程度に保つように 控えめにしました。
05. シェーディング/マップ
V-Ray レンダラーで、このイメージのシェーディングを作成しました。肌のディフューズ(拡散反射光)マップは ZBrush で、服のマップは Photoshop でペイントしました。さらに、唇の小さなしわや爪のディテールは、ZBrush の法線(ノーマル)マップやディスプレイスメントマップで抽出しています。
06. ルックデヴ
ルックデヴは V-Ray で行いました。HDRIマップのドーム型ライトと、肌の質感確認用のバックライトを配置しました。ライトを作成したら、シェーディングの設定を始めます。私は、肌に[VrayFastSSS2]、服に[VRayMtl]を使いました。肌のシェーディングでは[sss color]チャンネルの[falloff](減衰)マップを使うのが私の好みです。さらに、出力オプションで 2つめのマップを明るくして、柔らかい外観を与えました。下の図のような設定です。
07. シーンのライティング
シーンのライティングでは、環境をよく照らすために天井に多数の[VRay Plane]を使用しました。続けて、メインライトに[VRay Sun]、次に[VRaySky]を使用。[VRay Sun]を少し沈めて、夕焼けのように見せています。ネルソンの顔の片側を照らすように Sun を配置し、キャラクターに光と影のコントラストを作り出しました。
08. 構図
机のシンメトリ(対称性)を利用して、調和のとれた構図を作成しました。キャラクターのシルエットを生かすため、中央の列のスペースを増やし、背景にポスターを置きました。私は、この高さにカメラを配置、机の消失点とキャラクターの頭の上で「ピラミッド (三角形)」にしました(青い部分)。また、縦を 3つの部分に分割しました(後ろの壁、黄色の中間の机、手前の空間 )。
09. ポストプロダクション
ポストプロダクションには Photoshop を使いました。このタスクでは、直接光、ワールド法線マップ、アンビエントオクルージョン、ボリュームライト、スペキュラなどのパスをレンダリングしました。法線マップパスでは、RGB の3つのチャンネルを個別に選択して、それぞれのカーブにマスクを配置。ワールド座標に基づいて 光をコントロールしました。アンビエントオクルージョンパスも同様に、チャンネルを選択して カーブにマスクを配置、そして、そのマスクを反転しています。
編集部からのおすすめ:ZBrush による制作テクニックを学ぶには、書籍『ステップアップのための ZBrush ガイド』 を、キャラクターのリギングについて学ぶには、書籍『3ds Max リギング』や『Maya リギング 改訂版』をおすすめします。