スピードペインティング:「スチームパンク・メカニカルデストロイヤー」
スウェーデンのコンセプトアーティスト Daniel Ljunggren氏 が「スチームパンク・メカニカルデストロイヤー」のメイキングを紹介します
はじめに
この「スピードペインティング(早描き)」という与えられたトピックについてしばらく考えた後、私は何か子供向けのものを思い浮かべはじめました。
遊べるフィギュア付きのおもちゃのコマーシャルで、そのおもちゃのうちの1つが「スチームパンク・メカニカルデストロイヤー」(ただ箱の裏にそう書いてあるだけですが)というのはどうだろうと。
そして、そのメカニカルデストロイヤーは、大きなロボットでありながらも、友好的な存在であったら面白いなと考えました。そうすると、確かにこの「デストロイヤー(破壊者)」という部分が一番の問題で、私が求めているポジティブな雰囲気を出すには、この部分は何かそれほど暴力的でないものに変えなければならないでしょう。
作品の雰囲気を何か別のもっと深刻で暗く、暴力的な方向に持っていってもよかったのですが、それだとあまり独創的な感じがしませんでした。友好的なロボットが独創的だとは言いませんが、この題材のタイトルに対しては、こちらの方がもう少し意外性のあるアプローチではないかと思ったのです。私はこのテーマを絵というよりもコンセプトアートのように解釈したので、そのようなつもりで読んでいただけたらと思います。
ステップ 01
フルサイズのコンセプトをディテールを含めて細かく描いたりペイントしたりする前に、いくつかの小さなサムネイルスケッチを作成してみるのが速くて良いデザインの決め方です。こうすると、全体の形、シルエット、コンセプト全体の印象などに集中することができます。しばらくサムネイルスケッチをした後、何かこれで行けそうなものが見えてきました(図01)。
図01:何かこれで行けそうなものが見えてきました
スケール感を出すために、適当に描いた人間も置いてみました。もう少し作業を進めていくとデザインが見えてきて、完全にレンダリングしたバージョンも見てみたくなりました(図02)
図02:完全にレンダリングしたバージョンも見てみたくなりました
ステップ 02
そこで、サムネイルをリファレンス画像として使い、メインの題材と背景を別のレイヤーに分けた状態で、このロボットをもう少し面白い角度から解像度を高くしてスケッチし始めました。デザイン、プロポーション、ポーズ、パースなど、さしあたって優先したい要素に集中できるので、作業はグレースケールのままで進めていきます。
この作業で一番難しいのは、パースを付けた画像でサムネイルと同じ印象を出すことです。この印象をつかめないまま次の手順に進んでしまうと、結局求めているような作品にならずに、おそらく後々捨てることになるのは分かっています。ここで粘り強くがんばっておくと後で報われます(図03)。
図03:ここで粘り強くがんばっておくと後で報われます
ロボットにもう少しボリュームとディテールを足して、背景にブラシストロークを追加しながら、この作品に使いたいライティングやコントラストを探します。メインライトの光源になる場所がどこだか分かるように、自分の覚書としてハイライトを追加しておきます(図04)。
図04:自分の覚書としてハイライトを追加しておきます
ステップ 03
モードの設定をカラーにして、ロボットと背景に大きなブラシでざっくりと色塗りします(図05)。この方法だと下にある画像の明暗の影響で、探している色が見つからないこともありますが、この作品に使う全般的なカラーパレットを手早く決めるには良い方法です。
図05:ロボットと背景に大きなブラシでざっくりと色塗りします
ここで少し作業を止めて、このロボットから受ける印象について考えてみます。そして、ハイライトを直ちに消して、色も私が求めている色に変えるべきだと判断しました。新しいレイヤーを作成して(通常モード)、直接色を使ってペイントし始めると、すぐに思い描いていたものに近づいてきました(図06)。
図06:すぐに思い描いていたものに近づいてきました