3Dアーティスト はじめの一歩:ハードウェア

「3Dアーティストになりたいけど、何から始めてよいかわからない」 そのような方のために 英国の Paul Hatton氏 が その選択肢を紹介。このパート3 では ハードウェアを見ていきます


Paul Hatton
3Dビジュアライザー|英国


はじめに

「3Dアーティスト はじめの一歩」シリーズは、ソフトウェア、ハードウェア、リソース、チュートリアル などを順に取り上げ、3Dアーティストとしてのエキサイティングな旅の前準備、正しい方向に進むための要素を掘り下げます(※全6回)。

>> はじめの一歩:3Dモデリングソフト
>> はじめの一歩:レンダリングソフト
>> はじめの一歩:チュートリアル
>> はじめの一歩:リソース
>> はじめの一歩:成功のための 10の秘訣

3Dビジュアライゼーションの世界に足を踏み入れたのは、新人のとき、私が19歳、右も左もわからない状態でした。そんな旅の途中で、多くの人々に助けられました(とても感謝しています)。このシリーズが、3Dアーティストを目指す人々にとって役立つガイドになることを願っています。

 

必要な機能を備えたハードウェアを購入しましょう(画像提供:Unsplash)

このシリーズではこれまで、ソフトウェアをモデリングの観点から掘り下げ、レンダリングにも少し触れました。習得したいソフトに慣れてきたら、次は要件に合ったハードウェア、つまり「コンピュータ」を選ぶことができます(※本記事には、モニター、ドローイングタブレット、アクセサリといった内容は含まれません)

これから、3つのセクション(「3Dモデリングとアニメーション」「CPUレンダリング」「GPUレンダリング」)で、CPU・GPU・RAM・ストレージについて説明し、ユーザーにとって最も重要なことと、上手く作業を進めるための検討事項に焦点を当てます。検討が必要なすべての分野を網羅するわけではありませんが、初心者にとって、購入や深掘りするときの基礎となるでしょう(※モデリングとレンダリングでは、必要なスペックも異なります)

もし あなたが3Dビジュアライゼーションに不慣れで、ハードウェアに関して初心者であれば、自分のニーズに合った既製品を手に入れるとよいでしょう。本記事を読めば、どんなことに気をつけるべきかわかることでしょう(※記事の最後に、3DCG 制作入門向けパソコンへのリンクがあります。参考にしてください)

01. 3Dモデリングとアニメーション

モデリングを重視するのであれば、クロックスピードの速い CPU がよいでしょう(画像提供:Unsplash)

ジェネラリストとして、創造的なすべてのプロセスを行うアーティストもいれば、モデリングなど特定のプロセスに焦点を当てたアーティストもいるでしょう。モデリングやアニメーションに集中したいなら、「高速なハードディスク」「できるだけ高いクロックスピードのCPU」、そして「十分な容量のRAM」が必要です。では、これらを順に見ていきましょう。

まずディスクストレージは、「ソフトウェアの起動」「さまざまなファイル、テクスチャ、リファレンスの読み込み/保存」を行います。そのため、ディスクが高速であればあるほど、すべての読み込み/保存が速くなります。ソフトウェアの準備に無駄な時間を費やさないためにも、これは非常に重要です。ここでは、SATA SSD が活躍します。

モデリングとアニメーションで使う CPU は、コアの数よりクロックスピードの方が重要です。ソフトウェアはすべてのコアを使用するわけではないので、使用中のコアが高速であることを確認してください。そうすれば、必要な計算をいち早く行えるでしょう。このことを念頭に置き、8~16コア、3.4GHz 以上の CPU をお勧めします。AMDIntel は、この速度を実現する優れた CPU を製造しています。また、CPU に Turbo Boost(Intel)Turbo CORE(AMD)機能が搭載されていることも確認してください。これは、CPU が電力と熱の限界に達するまで、自動的にコアをオーバークロックすることを意味します。つまり、基本的に謳われている速度よりも速いコアを得られます。

最後に RAM を見てみましょう。これに関するアドバイスは非常に簡単で、できるだけ多くの RAM を手に入れることです(これだけでは、アドバイスと言えないかもしれませんね!)。最低でも 32GB、それ以上の容量を確保できるのであれば、ぜひ購入してください。

モデリングとアニメーション向けのマシンについて理解できたら、次は レンダリングについて考えてみましょう。まず、CPU レンダリングです。

モデリングやアニメーションには、クロックスピードの速い CPU が最適です(画像提供:Unsplash Christian Wiediger)

02. CPUレンダリング

CPU のコア数を最大にすれば、CPUレンダリングは高速になります(画像提供:Unsplash)

レンダリングを計算するには 2つの方法があります。1つは CPU で、2つめは GPU です。レンダリングが始まって以来、CPUレンダリングが主流でしたが、近年は GPUレンダリングが実用的になり、場合によっては より優れた選択肢になりつつあります。

作品を CPU でレンダリングしたいなら、マシンに搭載されている CPU のコア数を最大限活用する必要があります。これは、レンダリングの仕組みを理解すれば、納得できるでしょう。レンダリングされたイメージは「バケット」と呼ばれる画像の小さなセクションに分割され、各バケットは CPU の異なるコアに送られます。つまり、コア数が多ければ多いほど、1度にレンダリングできるバケット数が多くなり、完了までの時間が短縮されるわけです。このとき、クロックスピードは特に問題ではありません。

また、ローカルのレンダーファームやオンラインのレンダーファームなど、使用中のマシン以外の CPUコアを利用することもできます。この機能は、一連のイメージをレンダリングして動画にする場合に特に有効です。レンダーファームが登場する前は、動画のレンダリングが完了するまで、数日~数週間待たされるのが当たり前でした。

繰り返しになりますが、AMDIntel は数十コアの優れた CPU を作っています。レンダリングでは、コア数とコアのクロックスピードをトレードオフすることになるでしょう。なぜなら、これらを両立させるのは非常に難しく、ハードウェアが熱に耐えられなくなるからです。モデリングとレンダリングで適度に両立するシステムにすることも、好みに応じてどちらかに傾けることもできます。

03. GPUレンダリング

GPUは、イメージを高速かつ効率的にレンダリングすることに長けています(画像提供:Unsplash)

近年、GPUレンダリングは爆発的に普及し、その勢いはとどまるところを知りません。GPUレンダリングのプロセスはCPUと非常に似ていますが、GPU の特徴として「特定のタスクを高速処理できること」が挙げられます。GPU は数千個のコアを持ち、膨大な数の画像計算を同時に行います。これは、モデル・マテリアル・ライティングを更新すると、レンダリングがリアルタイムに表示される「インタラクティブ レンダリング」に最適です。

このように GPUレンダラーは高速処理できるという利点がありますが、欠点もいくつかあります。通常、その品質はCPUレンダラーで達成できるものに比べて劣ります。GPUレンダラーがサポートする機能セットも、CPUレンダラーに比べて少ない傾向にあります(その差は年々縮まっています)。また、GPUで処理できるシーンサイズには制限があります。これは、GPU のオンボードメモリが CPU に比べて少ないためです。しかしこの制限も、コンピュータのメインメモリを使ってレンダリング処理することで克服しています(Redshift など)。

もし検討するなら、優れた GPU を製造している NVIDIA や AMD のものをお勧めします。

まとめ

この記事では、3Dビジュアライゼーションでハードウェアを選ぶ際の注意点を紹介し、主に CPU・GPU・ディスクストレージ・RAMについて解説しました。他にも考慮すべき点はありますが、上記はすべてのプロセスの核となるものです。まず、モデリング・アニメーション・CPUレンダリング・GPUレンダリングのどれに重点を置くかを決め、それに合わせて判断しましょう。モデリングに重点を置き、クロックスピードの速い CPU を選択するなら、レンダリング速度の低下をレンダーファームで補うことも忘れないでください。

 

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>> CPUベンチマークテスト
>> GPUベンチマークテスト

 


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編集:3dtotal.jp