3Dアーティスト はじめの一歩:成功のための 10の秘訣
「3Dアーティスト はじめの一歩」シリーズの最終回です。今回は、20年の経験を活かし、Paul Hatton氏 が作品を成功に導くための 10の秘訣を紹介します
はじめに
「3Dアーティスト はじめの一歩」シリーズは、ソフトウェア、ハードウェア、リソース、チュートリアル などを順に取り上げ、3Dアーティストとしてのエキサイティングな旅の前準備、正しい方向に進むための要素を掘り下げます(※全6回)。
>> はじめの一歩:3Dモデリングソフト
>> はじめの一歩:レンダリングソフト
>> はじめの一歩:ハードウェア
>> はじめの一歩:チュートリアル
>> はじめの一歩:リソース
3Dビジュアライゼーションの世界に足を踏み入れたのは、新人のとき、私が19歳、右も左もわからない状態でした。そんな旅の途中で、多くの人々に助けられました(とても感謝しています)。このシリーズが、3Dアーティストを目指す人々にとって役立つガイドになることを願っています。
3Dアーティストとして向上し続けるための秘訣(画像提供:Mike Winkelmann)
3Dアーティストとして活動し始めたばかりの頃は、とても険しい学習曲線のせいでやる気をなくすことがよくあります。また、プロの制作した美しい作品を目にすると、自分とプロの間には 巨大な谷があるように感じられます。
・では、その架け橋になるものはないのか?
・それなりのレベルになれるのか、それとも、そこまで到達できないのか?
・自分に必要なものは何なのか?
このような疑問を持つのは、まったく普通のことです。巨星を目指すのもよいですが、初期段階では現実的であることが大切です。何かをマスターするのに数千時間かかるとしたら、行く手には長い道のりが待ちかまえています。浮き沈みは激しく、ストレスや喜びもあるでしょう。ある時は爽快な気分になり、またある時はなぜ始めたのだろうと思うこともあります。これからの紹介する秘訣が、困難な時期を乗り越えるのに役立ち、目標に向かって集中するための助けとなれば幸いです。
01. 毎日の練習
毎日練習することで、どんどん上達していきます
うまくなりたいなら、日々の学習と練習に専念してください。どんな分野でも言えることですが、あちこちに手を出すだけではうまくなりません。作業に没頭して、できるだけ多くの時間を費やしましょう。3Dアーティストとして雇用されているなら、これは簡単に達成できますが、副業の場合、夜間や週末に練習時間を確保する必要があります。
手早く上達するための方法の1つは「作業を速めること」です。もしワークフローを大幅に高速化したいなら、ショートカットを使いこなしてください。
02. フィードバックを得る
CG Architect のようなフォーラムに作品を投稿し、フィードバックを求めましょう
これまで、作品を公開することに不安を感じている多くのアーティストに出会いました。彼らは「見てもらう作品は完璧でなければならない」と考えていますが、それではいつまでたっても作品を世に出せません。不安を払拭したいなら、フォーラムやギャラリーで作品を公開し、他の人に見てもらいましょう。そうすれば、実際に作品を完成させるモチベーションになり、他の人はコメントを残してくれるようになります。こうしたフィードバックはとても貴重で、アーティストとして歓迎すべきものです。
03. 定期的にシェアする
作品を定期的にシェアしましょう(画像提供:Mike Winkelmann)
できるだけ頻繁に作品をシェアしましょう。作るものが多いほど、より優れたものになり、素早く目標に到達することができます。最も刺激的なアーティストの1人である Mike Winkelmann(Beeple)は、1年を通して毎日1枚のイメージを作成し、ブログで公開しています。それは、途方もない継続力です! 彼の決意は明らかですが、誰もが彼のように制作時間を確保できるとは限らないでしょう。しかし、「定期的に作品を作り、それを人々と共有すること」がいかに重要であるかがよくわかる事例です。
(※ Mike が毎日続けた NFT作品が約75億円で落札されたことが話題になりました。美術手帖:Beeple の NFT作品が約75億円で落札。現存アーティストのオークション記録第3位に)
04. つまらないことはしない
スクリプトを使い、退屈な反復作業をできるだけ省きましょう(画像提供:ScriptSpot)
諦めたくなる理由の1つが「飽きる」ことです。もちろん、クリエイティブ プロセスには、退屈で手間のかかる作業もあります。しかし、これによりプロセスの楽しさまで失われては元も子もないので、できるだけ避けたいと思うでしょう。その方法の1つは、自分でスクリプトを書いたり、スクリプトをダウンロードしたりして、「一般的なタスクを自動化すること」です。また、最初から作り直すのではなく、これまで作ったモデルをベースに、新しいシーンを作ることもできます。
05. 新しいことを学び続ける
著名ブログに目を通せば、新しいソフトウェアや技術の最新情報を得られます(画像提供:Ronen Bekerman)
私の場合、「新しいことを学んでいる」と実感できたときに楽しさを感じます。わからないことがわかり、実行できるようになると、爽快感があり、自分の上達を肌で感じられます。そのためには、できるだけ多くの新しいことを学びましょう。ソフトウェアの新機能や、新しい技術・手法に注目し、これらを日々の練習に取り入れることで、「楽しさ」の感度を高いレベルに保つことができます。
06. 先延ばしにしない
RescueTime のようなアプリで、自分が何に時間を使っているのか把握しましょう
すべてのアーティストはこのアドバイスに耳を傾ける必要があるかもしれません。私たちの周りは五感を刺激するもので溢れかえり、1日のうち数分どころか数時間無駄にすることだってあります。しかし、最高の3Dアーティストになる努力を続けるためにも、こうした誘惑を絶ち、できるだけ先延ばしを避けなければいけません。ウェブサイトやアプリの利用を監視・制限できるツールをダウンロードしてください。自分を律し、目標を忘れないようにしましょう。
07. 学んだことを実践する
チュートリアルで学んだことを実践する(画像提供:Autodesk)
チュートリアルを見たり、ブログを読んだりするのもよいですが、実践しない限り上達することはありません。学んだら、実行する習慣を身につけましょう。次のプロジェクトの一環として行なったり、日々の学習に取り入れたりしてください。そして覚えておいてほしいのは、「練習すればするほど楽になる」ということです。
08. プラグインを活用する
Forest Pack Pro などのプラグインを活用し、ワークフローを高速化します(画像提供:ITOO Software)
本シリーズのリソース編では、1人だと難しい作業、時間がかかりすぎて割に合わない作業をプラグインで行うことの重要性を説きました。制作プロセスの重要な部分に時間を割けるように、無料/有料のプラグインを活用してみてください。
09. ポストプロダクションを活用する
ポストプロダクション ツールを使えば、レンダリングを次のレベルに引き上げることができます(画像提供:Nejc Soklic)
私が3Dアーティストのキャリアを開始した頃は、すべてをレンダリングで完成させなければならないと思っていました。なんという間違いをしていたことでしょう! 私の場合、それが創造性を阻害していました。Photoshop や After Effects ならすぐに実現できるような要素・エフェクトを、レンダラーで作ろうとして時間をかけすぎていたのです。ポストプロダクション ツールを使う場合は、非破壊的なワークフローで進めてください。そうすれば、すべてのプロセスを再実行しなくても、新しいレンダリングイメージを差し替えるだけで済みます。
10. 制作を楽しむ
最高の3Dアーティストを目指し、その旅を楽しんでください
制作を楽しんでください。結局のところ、楽しめなければ、何の意味もありませんから。人生は楽しむものです。自分が楽しめることはどんどんやり、楽しくないことでも楽しめる方法を探してみましょう。優れた3Dアーティストになるためには、「楽しいから始めた」という初心を忘れてはいけません。心を燃やし、その炎を絶やさないでください!
最後に
「3Dアーティスト はじめの一歩」シリーズもこれで最終回です。ソフトウェア、ハードウェア、チュートリアル、リソース、そして、最後に、あなたが目指す 3Dアーティストにうまくなれるように、10の秘訣で締めくくりました。このガイドが、お役に立てば幸いです。
編集部からのおすすめ: 色、構図.. アートのセオリーを学ぶ/再発見するには、書籍『デジタルアーティストが知っておくべきアートの原則 改訂版』そして、『続 デジタルアーティストが知っておくべきアートの原則』をおすすめします。