色づかいの極意。やってはいけない カラーパレットでの 5つのミス

カナダのイラストレーター Samuel Berry氏 が、やってはいけない カラーパレットでのミスと それらを防ぐ方法を説明します


Samuel Berry
フリーランス イラストレーター|モントリオール、カナダ


今回は「やってはいけない カラーパレットでの 5つのミス」を取り上げます。これらは伝統的な絵画とデジタルペインティングの両方に当てはまります。本チュートリアルは、そのどちらも対象としますが、今日、プロの仕事によく使われるデジタルペインティングに特に焦点を当てます。それでは、前置きは これくらいにして、先へ進みましょう。

1. 色が多すぎる

よくあるミスは、さまざまな色相の色を多用することです。リアリズムを追い求める余り、多くの人が、これをやってしまいます。典型的な例に「木に緑と茶色を使う」ことがありますが、それは場違いのように際立つでしょう。作成した すべての要素に色をふんだんに使うと、とても騒がしいイメージになります。そして、鑑賞者の目は、それぞれの「色そのもの」に気を取られ、伝えたい主題やメッセージから遠ざかります。

これを回避するには、カラーパレットを制限しなければなりません。退屈に聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。そのためにはたくさんの方法があります。たとえば、アンデシュ・ソーン(Anders Zorn) は、ほとんどの作品に制限されたパレットを用いていることで有名です(最も顕著なのは、黒・白・クリムゾンレッド・黄土色、そして フレンチウルトラマリンと憂鬱な黒のタッチです)。

彼は、現実的であることよりも、互いに正しく見えるように色を混ぜ合わせました。このようにパレットを制限すると、さまざまな色を加えても勝手に色が調和します。カラーパレットを選ぶときは、さまざまな色の統一が重要です。

アンデシュ・ソーンのカラーパレットを色相環とグラデーションバーにしてみると、やはり素晴らしい結果でした(つまり、こうした作業が不要だとわかりました)

2. 彩度が高すぎる

彩度は色の純度(鮮やかさ)を表します。多くの場合、彩度と明度は混同されています。そして、それは「色のぎこちない衝突」として表面化し、鑑賞者の注意を引いています。色の彩度が高いほどエネルギーも高まり、より注意を引くようになるため、全体の形状ではなく「目立たせたい要素」「焦点」に使用してください。控えめに意図を持って使用しましょう。大抵の場合、前述の「統一性と多様性」の原則を用いれば、そのような落とし穴を避け、不快感のない鮮やかな色になります。

3. 未調整な明度

3つめの大きなミスは「明度」に関するものです。これはカラーパレットとは関係がないようですが、明度構造が一様で尊重されていれば、その色は確実に同じ色調を保持できるでしょう。特に、今日のほとんどのクライアントワークはデジタルで行われ、色も混ぜ合わせる代わりに直接選んでいます。確かにこれは素晴らしいことですが、一方で簡単に明度構造を見失い、カラーパレットは台無しになります。一般的に、選んでいる色の明度と温度を考慮すれば、正しい選択をできることでしょう。

4. コンテキストが考慮されていない

これまでに軽くほのめかしましたが、ここでは「コンテキスト」に焦点を当ててみましょう。色の特性は環境によって変わるので、色を選ぶときは、それが配置されるコンテキストを考慮しなければなりません。それは「制限されたパレット」「彩度」「調整された明度」の組み合わせで構成されます。イメージのすべては、その周りの要素に依存します。つまり、あなたのメッセージを伝えるために、多くの関係を管理しなければなりません。たとえば、赤の種類を選択するときは「緑の隣で より赤く見える特性」に留意する必要があります。

有機的な形状では、これら 2種類のライティングが最大限に活用されています

5. リファレンスが正しく使われていない

これまで解説した内容をすべて念頭に置いて、リファレンスの使用について説明しましょう。リファレンス自体に何の問題もありませんし、私はリファレンスの使用を強く勧めます。そうすることによって真のアーティストへの道が遠のくこともありません。問題は「リファレンスをどう使用するか」です。「色」に関して、多くの人はパレットを「スポイト」で抽出しています。それで問題ありませんが、自分の絵の特性を考慮しなければいけません。使用するリファレンスが描いている絵のコンテキストと異なる場合、抽出した色は不自然に見える可能性が高いです。そこで、リファレンスは「ガイドライン」として使い、色を選択したら、コンテキストに合わせて調整するとよいでしょう。

最後に

ここまで最も一般的な5つのミスを見てきました。考えるべきことはたくさんありますが、前に言ったようにペインティングとは「ストーリーを語るため管理すべき関係の束」です。(色そのものと同様に)あなたが下すあらゆる決定は、その前の決定を通じて、全体を形成しているのです。しかし、覚えておいてほしいのは、コンセプト/アイデアに役立つならば、いつでも意図的に これらのミスを取り入れてよいことです。無計画に行わず、ルールの破り方を理解してください。そうすれば、簡単にカラーパレットを選択できるようになるでしょう。

 


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翻訳:STUDIO LIZZ (TK)
編集:3dtotal.jp