説得力あるキャラクターの描き方:顔のデザイン&ペイント

ベルギー出身の ビジュアル デベロップメントアーティスト Bram Sels氏 が説得力のあるキャラクターを描くためのヒントを紹介します


Bram "Boco" Sels
アートディレクター / ビジュアル デベロップメントアーティスト|ベルギー

※本チュートリアルは、書籍『Photoshop で描くキャラクター』からの抜粋です

はじめに

肖像画の描写は何世紀も前から行われています。カメラの発明以前、人々は、主に自分を永遠に残すために肖像画を利用してきました。しかし、より迅速に、経済的に同じ目的を達成できる「写真」が発達するにつれて、肖像画は人気を失っていきました。

ところが最近では、実際の役者を想像上の背景に配置したり、実在しないリアルなキャラクターを作成するコンセプトアートの発展に伴い、肖像画の手法が再び人気を取り戻しています。

こういったキャラクターを作成するには、生きているような肖像画を描くテクニックを身に付けることが重要です。ここでは、頭蓋骨が頭部の基礎であること、頭蓋骨によって顔に当たる光の分布が変化することを重点的に学習します。

さらに、光の方向によって人の見た目ががらりと変わることや、顔がさまざまな色の領域でできていることを紹介していきます。リアルで想像力豊かな顔を1からペイントできるように、必要な知識をすべて身に付けていきましょう。

01 ウォームアップ:上品なキャラクター

新しい作品に取り掛かる際はウォームアップが大事です。今回はウィキメディア・コモンズを開き、膨大なライブラリを閲覧しました。これは楽しい作業で、さまざまな年代や対象物を閲覧するたびに、自分のリファレンスライブラリが広がります。

最終的に20世紀の紳士のグループを見つけ、そのうちの数人をスケッチしました。こういった描画の練習を行うときは、「目」という要素がいかに人物の性格を特徴づけているかを考えます。顔ひげも素晴らしいですね(私にもあんな口ひげが似合えばいいのに)。

図01:ウィキメディア・コモンズで研究した5つの頭部のスケッチ(それぞれ約10分)

02 頭蓋骨は素晴らしい!

「毎年少なくとも1度は頭蓋骨を描く練習をする」とメモしてください。これは面白いテーマです。たとえば、顎が頭蓋骨の他の部分につながる様子や、額と頬骨が頭部の輪郭を形作っている様子など、人間の頭部の仕組みがよく理解できます。描く際は、解剖学的に正確な頭蓋骨をリファレンスとして用意すると良いでしょう。

頭蓋骨を描いていると、基本的にいくつかのシンプルな形状から成り立っていることに気付きます。すなわち、側面を切り取った球形があり、そこから丸みを帯びた四角形の顎が突き出しています。このようなシンプルな形状を理解すれば、頭部のペイントは完成したも同然です。

図02:机の上の頭蓋骨の研究。右側は、基本的なプリミティブシェイプに単純化したもの

03 顔のライティング

前の手順に出てきたシンプルな形状を出発点として、その上に残りの顔立ちを作成します。最初に顔立ちをシンプルにしておけば、ライティングがとても楽になります。図03 では鼻が顔から突き出していて、目は(当然)丸く、それに応じて照らされていることに着目してください。

図03 の中央と右側にある2 つのライティングスキームは初歩的なものですが、コンセプトアートではよく使用されます。

中央の頭は上からの光で照らされ、右の頭は下からの光で照らされています。光の方向によって、照らされる平面もあれば、影に隠れる平面もあります。光に対する平面の向きを常に頭に入れておきましょう。光の方を真っすぐ向いている平面は、必ず最も明るくなります。

図03:ライティングの条件によって、頭への影響が異なります

04 独自のキャラクターを作成する

ステップ 01 のウォームアップからヒントを得た私は、疲れてゴツゴツした、品のある19世紀風の顔を作ろうと思いました。架空のTVゲームのメインキャラクターを作成したかったので、ひげを生やした白人のヒーロータイプに決めました。

前の手順の基本形状をベースに作業を始め、上手くできたら、その上にディテール用のレイヤーを乗せ、下絵はその都度、整然と削除していきます。この手順で重要なのは、顔のパーツの構成をよく観察することです。目にまぶたがついている様子や、その仕組みを見てみましょう。鼻の造形や、口が重なり合う平面から構成される様子にも着目してください。

図04:頭の線画。顔立ちで個性を出そうとしています

05 顔のマスキング

身体のときと同様に、線画の下にマスクの役割を果たすレイヤーを作成しました。すべてのペイントをマスクの範囲内にとどめながら、その上の線に影響を与えないようにするためです。これらの線はいずれ削除され、下にある要素とブレンドされます。

単色のマスクを作成すると、頭部のシルエットがはっきりと見えてきます。ここにも多くの特徴が表れており、たとえば、滑らかで薄い髪の毛は、両耳の上と額の両側でシルエットを切り出しています。顎ひげと左の眼窩についても同じことが言えます(図05)。

図05:マスクを作成しながら、シルエットも確認

06 主な平面を大まかに描く

前セクションの身体と同じライティングスキームで、顔の最も大きいパーツを描き始めました。後で集中的に作業できるよう、髪の毛は別のレイヤーに配置。身体と同様に白黒から始め、明度を正確に表すことに専念します。

この手順では、顔が平面から成り立っていることを理解しましょう(役立ちます)。光源に直面する平面の大部分は光を受け、最も明るくなります。また、急激に遷移する部分(鼻の前面)もあれば、滑らかに遷移する部分(額)もあります。

図06:ライティングスキームを念頭に置きながら、顔の明度を簡単に描きます