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説得力あるキャラクターの描き方:衣装デザイン

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ベルギー出身のビジュアルデベロップメントアーティスト Bram Sels氏 が説得力のあるキャラクター作成のヒントを紹介します。今回は「衣装デザイン」です


Bram "Boco" Sels
アートディレクター / ビジュアル デベロップメントアーティスト|ベルギー

※本チュートリアルは、書籍『Photoshop で描くキャラクター』からの抜粋です
>>> 「顔のデザイン&ペイント」
>>> 「髪の毛のペイント」

はじめに

何世代にもわたり、人々はファッションを通じて自己表現を行なってきました。コンセプトアーティストはこれを有効活用できます。

誰かの服装を見たとき、あなたはすぐに(もしかしたら無意識に)その人の性格を想像します。これは現実では人を誤解したり傷つけたりする偏見の一種ですが、映画やゲームの中ではピタリと当たっていることが多いのです。

これには理由があります。映画やゲームはペースが速いため、ある人物を一目見ただけで、その人がストーリーで果たす役割を判断しなければいけません。

舞台裏のコンセプトアーティストたちは、こうした特徴を表現するための専門的な知識を持っています。自己を表現し、過去を物語り、背景ストーリーで豊かなキャラクターと環境を作成するのが彼らの仕事です。前のセクションでは、キャラクター表現に髪の形状が役立つことを学びました。キャラクターの服装についても、同じことが言えます。

覚えておいてほしいのは、「コンセプトアーティストとして下すあらゆる決断が、デザインで伝えたい内容をサポートする」ということです。たとえば、キャラクターが悪役の場合、シャープで暗い衣装にすると気味悪さが裏付けられ、より邪悪に見えるでしょう。

ここでは、さまざまなマテリアル(素材)をペイントする方法、その知識を絵の中でボリュームに変換する方法、生き生きして立体的に見えるキャラクターの描き方など、キャラクターに興味深い衣装を与えるための便利な知識を学んでいきましょう。

01 ウォームアップ:歴史を踏まえる

今回は、少しタイプの違うウォームアップです。これまで考察していた「19世紀の勇ましいキャラクター」というテーマをそのまま進めることにしたので、再び ウィキメディア・コモンズを開き、その時代の衣装をリサーチしました。私はヒーローを作りたかったので、さまざまな軍服を見て、目に留まった衣装をさっと描いてみました(図01)。

とりわけ気に入ったのは、ドイツ軍兵士のロープ付きジャケット、将校のジャケットのボタン、そして、ブルーボーイスカウトの交差した革バンドです。同じ時代の絵画もいくつか閲覧しました。リファレンスはいくらあっても足りません。19世紀にまつわるあらゆるものを収集するため、フォルダをリファレンスライブラリに作成しましょう。

図01:19世紀の衣装の簡単なスケッチ

02 さまざまなマテリアル

衣装をペイントしていると、さまざまなマテリアル(素材)に遭遇することでしょう。マテリアルの色やテクスチャ、そして、光に対する反応はそれぞれ異なります。ウォームアップでは、衣装に使用できそうなマテリアルに着目し、別途それらをスケッチしました。

図02:衣装用のさまざまなマテリアル(素材)の研究。それぞれの下に明度の範囲があります

図02 を見ると、マテリアルによって明度に大きな差があることが分かります。それぞれの下に白黒で明度の範囲を示していますが、金属や金のマテリアルは、布地よりも多くの光を反射することが一目瞭然です。金属や金はハイライトが強く、周囲の環境をはっきりと反射します。暗い影を持つ布地はハイライトがほとんどありません。マテリアルによってテクスチャ(質感)も異なり、粗いものもあれば滑らかなものもあります。さまざまなマテリアルをペイントする場合も、顔と同じブラシを使用します。ただし、テクスチャモードのパターンは時々変更しています(図03)。

図03:使用したパターンとブラシテクスチャの設定サンプル

www.textures.com のようなサイトで、素晴らしいテクスチャが見つかることでしょう。新しいパターンを作成するには、画像をダウンロードして、Photoshop で開き、[編集]>[パターンを定義]をクリックします。

図02 のボールのエッジにはつやの領域があります。ここに滑らかなライティング感を出すには、ボールのマスクエッジに[覆い焼きツール]と[焼き込みツール]を使用します。ハイライトはフリーハンドでペイントしています。

03 マネキン

ファッションデザイナーと同様に、解剖学的に正確なマネキンから始めましょう。これは、好きなように服を着せられるダミーと考えてください。そのほとんどは衣装で覆われるため、ディテールをあまり必要としませんが、大きなパーツを正確に描くことは大事です。ベースが不正確だと、後で修正するのがとても難しくなるので、必ず正確に作りましょう。

最終的にマネキンを 3体に複製。まったく異なる3つの衣装を作成できるようにしました。こうしておけば、特に、制作パイプラインでの柔軟な対応が可能となり、クライアントに複数の選択肢を提示できるので、1つの提案で進めるよりも確実です。

図04:衣装を着せる準備のできた 3体のマネキン

04 ふさわしい衣装を着せる

キャラクターに衣装を着せるのは楽しい作業です。キャラクターに生命を吹き込み、背景や生い立ちを与えていきましょう。

まず、ロープ付きジャケットと泥よけの付いたパンツを着た無骨で真面目な兵士を描きました。しかし、「地位を高めて、もっとヒーローらしく見せるためのロングコートが必要だ」と思い直しました。2番めのキャラクターでは、ロープ付きジャケットをそのままに、拍車の付いたブーツを取り入れ、馬の存在を示しています。

最後のキャラクターには、別の種類のコートを着せています。さらに、地位を高く見せるため、儀式用の剣を持たせました(図05)。

図05:3つの衣装デザイン。19世紀の衣装の要素を使用していますが、各要素を組み合わせ、
新しく個性的なものに仕上げています

05 明度を割り当てる

「明度」に関して言えば、3つの衣装デザインは多少異なります。それぞれの要素には、色や素材に応じて独自の明度の範囲があります(ステップ 02 参照)。それでもやはり、こうしたさまざまな要素は一体となって、キャラクターをサポートしなければいけません。

このことを念頭に「何を強調して何を強調させないか」を考えることが大事です。たとえば、図06 では、最初のキャラクターと2番めのキャラクターのロープ付きジャケットに、違いがあるのが分かりますか? 最初の方では、暗いジャケットに明るいロープ。2つめは、中間調のジャケットに明るいロープがデザインされています。

その結果、2番めのジャケットではロープが目立たなくなり、コートのボタンの方が強調されることが分かります。

図06:分かりやすいキャラクターを作成したければ、広い面積の明度を考慮することが大事です

06 立体化する

ベースとなる明度を決めたら、再びボリュームについて考えましょう。基本的には身体のペイントで触れたプロセスと同じですが、違いは、筋肉のペイントでなく、いろいろなマテリアルやしわをペイントすることです。

やり方はほとんど一緒です。身体を円柱として捉え、円柱のどちら側をペイントしているのかを考えながら、あとは常識に従って続けます。また、リファレンスを別ウィンドウで開いておくと便利でしょう。

私の場合、リファレンス無しでペイントすることはほとんどありません。

図07:光の方向と、光の方を向いている平面を考慮しながら、明度を強調します

プロのヒント:ヒストグラムを使用する

ヒストグラムは明度を把握するための良い方法です。[Ctrl]+[L]キーを押すと、選択したレイヤーの[レベル補正]ウィンドウが開きます。もしくは、[ウィンドウ]>[ヒストグラム]を通じてヒストグラムパネルを開くと、イメージ全体のヒストグラムが表示されます。

ヒストグラムは、明度ごとのピクセル数を示します。この図では、衣装レイヤーの曲線が左側に傾いていることが明白であり、明るさよりも暗さが多いと分かります。完全な黒(0)や完全な白(255)のピクセルはありません。真っ黒や真っ白はすぐにイメージをフラットでぼんやりさせてしまうので、注意すべき点です。

図08:ヒストグラムを時々確認して、明度のバランスをとり、キャラクターを生き生きとさせましょう


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