アートの基本:構図

構図は、優れたアーティストが絵を描き始める際に最初に考える要素です。しかし、構図とはいったい何でしょう?

基本的に、構図とはイメージ内における要素の配置のことです。見る人の視線がイメージ全体に行き渡るよう誘導し、絵を興味深いものにする、視覚的な語彙だと言えます。描き始めから面白みのある絵にするために欠かせない、最初のステップです。どのようなディテール、魅力的な色、照明、動きも、構図の代わりにはなりません。構図の理論には数百年にわたり用いられてきた規則がありますが、自分の構図には常に、新しく面白い方法を取り入れて構いません。型にはまらず、自由に考えてみてください。ここでは、構図の概要を説明し、構図を学ぶことによって何が実現できるのか、そして、その過程で何を発見できるのかを見ていきます。

古代ギリシャ人は黄金分割を内包する黄金長方形を使用しました。黄金長方形とは、辺の長さの比が約1:1.618の長方形です。この比率を用いると、求心力のある焦点を持った、極めてバランスのとれた収まりのよい構図を作ることができます。黄金比で長さを分ける黄金分割は、人間を含め、多くの生命体に見ることができます(図01)。

図01

その黄金長方形から派生したのが「三分割の法則(三分割法)」です。三分割の法則は、より幅広いアスペクト比に対応できるよう黄金分割を適合させたものです。フレームを上下左右に三分割すると、分割線が交差するところに焦点が4つできます(図02)。

たとえば『Under a Rock』では、三分割の法則を用いて、分割線で複数の焦点を作り出しています。メインの焦点は建物であることが分かります(A)。そして、補助的な焦点を2つ、分割線の近くに配置しています。1つめは、遠景に見える風力発電地帯(B)、2つめは、残り2つの交点(C、D)をつなぐ、コンセプト上極めて重要な岩の構造です。

図02

三分割の法則は縦長のフレームにも適用できます。『Queen of Candasce』では、分割線のすぐ近くに飛行船を配置しました(図03)。

図03

メインの焦点は、必ずしも分割線の交点上に配置する必要はありません。構図を検討するときは、コントラストが重要であることを覚えておいてください。コントラストが適切に表現できていれば、求心点の近くでなくても、その領域を際立たせることができます。

コントラストを作る方法はたくさんあります。最も簡単なのは、光と影を用いる方法です。そのほか、素材、色相や彩度、緊張感とバランス、円や四角といった形状のコントラストがあります。図03では、飛行船と巨大な構造物を求心点の近くに配置しました。このイメージの場合、飛行船と構造物の間にある直接的な繋がりを示すことが、ストーリー上非常に重要だったからです。下の方にある求心点2つには、アクションが起こる環境を残しました。

このイメージにはもう1つ、どのようなアスペクト比でも利用できる簡単な技を用いています。それは、大きな前景要素を入れるというものです。人間の目は左から右へと情報を追うようにできているため、左側に大きな前景要素を入れると、そこがイメージ全体の入口のような役割を果たすため、見る人を絵の世界に引き込んで視線を誘導しやすくなります。

この技に触れたところで、もう1つ、似たような技を紹介しましょう。画像内にフレーム(この絵の場合は大きな逆L字)を配置するという方法です。こうするとフレーム内の領域に焦点が絞り込まれ、見る人の視線が安定します。

簡潔でとても美しいイメージになるため、書籍の表紙によく用いられます(図04)。この手法は手軽に使え、焦点を当てたい領域を際立たせて、イメージ全体に堂々とした雰囲気を演出したいときに非常に効果があります。

図04

三分割の法則を用いるときは、それに囚われ過ぎて厳密にルールに従うことがないように気を付けてください。退屈で冴えない絵になってしまう恐れがあります。分割線に従うのは最初のうちだけにして、何の変哲もない構図を繰り返すようになる前に、できるだけ早く卒業しましょう。

簡潔な構図が最も効果的な場合もあります。シンプルな方が効果的なこともあるのです(図05)。たとえば、遠近法を用いて、見る人をイメージの中に引き込み、視線を直接焦点へ誘導するという方法があります。この場合、遠近法の線が求心力のある線です。シーン内にあるオブジェクトを何でも利用して、焦点を指し示します。また、映画、絵画、写真などで用いられる「ヴィネット」と呼ばれるテクニックを使ってもよいでしょう。ヴィネットとは、基本的に、画面のエッジと四隅を暗くして視線を囲い込む方法です。クイックスケッチなどに用いると非常に効果的です。

図05

構図では、ごく小さな変化が最終結果にとても大きな影響を及ぼす場合があります。水平線を傾けるといった変化は、イメージに躍動感を生み出す方法として優れています。図06-07は、スリル、サスペンス、アクションが満載のストーリーだったので、水平線を傾けることで雰囲気ががらりと変わりました。イメージに物語性が生まれ、ドラマとアクションが表現されるため、見る人の反応も変わってきます。

図06

図07