フォトリアルな CGポートレート『The Legend Lives』のメイキング
ブラジルのキャラクターアーティスト Emerson eCello氏 が、リアルなキャラクターポートレートの作成テクニックとワークフローを解説します(※ソフトの基本機能だけを使用)
はじめに
3Dスキャン・高解像度のテクスチャマップ・写真のアルファブラシなどがあれば、簡単にリアルなポートレートを作成できます。しかし、それらが手元にない場合はどうしますか?
このチュートリアルでは ZBrush の基本ツールで肌のディテールを作成するためのテクニックを紹介します。さらに MARI で高精細なスキンマップを一から描き、Maya の XGen で髪の毛をグルーミングし、Arnold でリアルなシェーダをレンダリングします。CGI業界で最も強力なソフトウェアを利用したこのワークフローには、フォトリアルなキャラクター制作に役立つ情報が含まれています。
01 ベースメッシュから始める
ベースメッシュは自作するか、ZBrush の DemoHeadプロジェクトを使用します(独自のベースメッシュを作成すれば、解剖学のスキルを磨けることでしょう)。まず、移動ツールでベースメッシュをリファレンスにできるだけ近づけますが、この段階のトポロジーは気にしないでください。ZBrushインタフェースにある[ウィンドウ透明度]スライダを使えば、後ろにリファレンスを表示して、イメージプレーンを使わずにリファレンスを切り替えることができます
優れたベースメッシュがあれば、新しいポートレートプロジェクトを始めるときに役立ちます © Emerson ëCello
02 フォームを形成する
一次フォームができたら、[ClayBuildup]と[DamStandard]ブラシで筋肉に沿ってモデルの主要な形(二次フォーム)を整え、プロポーションが正しいことを確認します。この段階のモデルのサブディビジョンレベルは気楽に考えてください(大体100万ポリゴンに留めます)。頭部はこれで十分です。
適度なサブディビジョンレベルの一次フォームと二次フォーム © Emerson ëCello
03 リトポロジーとUV
ZBrush から大体6万ポリゴンの頭部を OBJ形式でエクスポートします。Maya にインポートしたらメッシュを選択し、ライブオブジェクトにします([修正]>[ライブ サーフェスにする])。では[モデリング ツールキット]を使い、モデルの新しいローポリメッシュを作成しましょう(※1)。ローポリ版が完成したら、UVマップを生成し、それを複数の UV(UDIM)に分割します
※1:リトポロジーに関しては、こちらの記事もご参照ください 「ゲームキャラクターをつくる – モデリング編:08 ローポリモデルの作成」
表面を流れるトポロジー。UVマップを分割することで、ディテールまでしっかりと表現できます © Emerson ëCello
完成したベースメッシュ © Emerson ëCello
04 毛穴のベースを作る
通常のサブディバイド([ジオメトリ]>[ディバイド])を実行した基本プレーンから始め、ソファのボタンのようなものをスカルプトしましょう。ここで組み込んだディテールの量が、あとで近距離の細かいレンダリングに反映されることを覚えておいてください。このモデルからアルファブラシを作成し、「Pore Brush」という名前で保存します。
ユニークな毛穴(pore)を作成し、アルファとして保存しておけば、今後のプロジェクトで利用できます © Emerson ëCello
05 ディテールのスカルプト
頭部の新しいローポリモデルを ZBrush に再インポートします。先ほどと同じように100万ポリゴンになるまでサブディバイドし、[サブツール]>[投影]>[全て投影]ボタンで、古い OBJ のディテールを新しいOBJに再投影していきます。
では、ディテールを作成しましょう。[HDジオメトリ]>[HDディバイド]でモデルを3回サブディバイドし、マウスをモデルの上に置いて[A]キーを押し、HDモードに入ります。作成した[Pore Brush]を選択、[DragRect]オプションで毛穴を1つずつ配置していきます(※ビデオをご覧ください)。この頭部全体を仕上げるのに2時間ほどかかりました。
急いではいけません。全体にディテールを施すには時間がかかります © Emerson ëCello