ハリー・ポッター風キャラクター「The History Teacher」のメイキング

CGジェネラリスト Darko Mitev氏 が、映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』にインスパイアされ、制作したキャラクター「The History Teacher」のメイキングを紹介します(ZBrush、Maya 等 使用)


Darko Mitev
CGジェネラリスト


このプロジェクトのアイデアは、映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』 鑑賞後に生まれました。子供の頃から「ハリー・ポッター」などのファンタジーと魔法の世界が大好きなので、映画に登場するクリーチャーを見て、童心に帰り、そんな作品を制作してみたくなりました。

1. リファレンス収集

映画鑑賞後、帰宅し、自分の作りたいものを明確にするためにリファレンスを探し始めました。頭の中にある漠然としたアイデアは、強力なビジュアルをかたちにするほど明確ではなかったため、まず、ムードボードを作成し、デザインプロセスをはじめることにしました。

リファレンス

2. コンセプトスカルプト

その後、流れに任せて、ZBrush で スカルプトを始めました。当初、頭の形はとてもスタイライズ(様式化)しており、プロポーションも強調されていました。しかし、現実的なルックにするには、それらをトーンダウンさせ、よりリアルな人間のプロポーションや頭の形に戻す必要があると気づきました。まず、ダイナメッシュとシンプルな球から始め、初期形状を大まかに作成しました。ベーススカルプトに満足したら、メッシュをデシメーション、リトポロジーのために Maya にエクスポートしました。

UV、セカンダリフォーム、詳細なディスプレイスメントとカラーマップ

3. 予期せぬ後退

キャラクターモデルが整ってきたので、服のモデリング、片眼鏡やパイプなどのプロップ(小道具)を追加。大まかにライティング設定をして、テストレンダリングすることにしました。ところが、イベント FMX 2017 の後、急遽、アイルランド、ダブリンの Brown Bag Films への就職が決まったのです。私は、自国を離れ、ダブリンへ引っ越し、新生活の準備しなければなりませんでした(新生活が整うまで 5ヶ月近くを要しました)。そんなある日、Instagram で Kris "Antropus" Costa が素晴らしい作品「Portrait of a Master: Dick Smith (ディック・スミスのポートレート)」を公開していました。それを見て、私のキャラクター制作に戻り、仕上げなければいけないことを思い出しました。

初期モデル

4. 再調整

Kris のモデルを見た後、このモデルの最後に手を加えたバージョンを開き、最も低いサブディビジョンレベルに進み、最も高いサブディビジョンレベルを削除しました。 そして、デフォルトの ZBrush プロジェクトから頭蓋骨を読み込み、それを抽出して シーンに読み込みました。頭蓋骨を配置してみると、すぐに、モデルの問題点(鼻が大きすぎる、目が離れている、頭蓋骨全体の形状がおかしい)が浮き彫りになったので、それらをすべて修正しました。最初の調整パスで作業を終えた後、よりリアルな人間のプロポーションになるように 身体と衣装を大きくして、帽子も追加しました。

ZBrush で再調整したモデル

5. UDIMベースのUV と ディスプレイスメントペイント

クローズアップでレンダリングしたかったので、UDIMワークフローを利用しました。満足いく解像度を得るため、頭部に 5つの UDIM を使用。それぞれに 8Kテクスチャを適用して、そこから、モデルを MARI に書き出し、ディスプレイスメントマップをペイントしました。しかし、このままだとモデルの形状が誇張されるため、投影(プロジェクション)の一部が少し引き伸ばされ、適切に配置されません。

クローズアップでレンダリングしたかったので、UDIMワークフローを利用しました

6. 最終スカルプト&ディテール

MARI でディスプレイスメントをペイントしたら、モデルを ZBrush に読み込み、XYZアルファを使用して、モデルの伸びた領域にディテールを投影、シームを修正します。同様に しみや静脈などのディテールも追加しました。

ディテール

7. テクスチャとシェーディング

テクスチャリングでは Mudbox に切り替えました。Texturing XYZ のテクスチャコレクション を使い、偏光テクスチャの投影(プロジェクション)から始めました。しかし、私のキャラクターモデルには特有のカスタムディテールがたくさんあるので、希望する 肌のトーンとディテールをキャプチャするために、上から多くを手塗りしています。その後、粗さマップと SSSマップをペイントしています。

Mudbox でテクスチャリング

8. Xgen

ヘアとファーには Maya の Xgen を使用しています。顔をいくつかの部分に分け、個別の「ディスクリプション」を作成。2つの「コレクション」としてまとめました。Xgen を適切に機能させるには、Mayaプロジェクトフォルダ構造が必要なので ご注意ください。トラブルを避けるため、Xgen で作業を始める前にプロジェクトを設定しましょう。モデルのさまざまな部分に、グルーム可能なスプラインとガイドの組み合わせを使用しました。

Xgen で体毛を作成

9. ライティング

技術はシンプルにしたかったので、素晴らしい HDRIライトを1つ、特定目的のライト(リムライト、フォグライトなど)を1〜2つ使用しました。HDRI画像は HDRI Heaven のものをいくつか使用しました。すべて 16Kなので、今回のライティングでは驚異的なディテールを表現できました。最終イメージは Arnold でレンダリングしています。作成したテクスチャとモデルが正しく機能し、本番環境で動作するのを確認するために、極端なクローズアップを含む さまざまなライティングとカメラアングル設定でテストしました

HDRIライティングとテクスチャリング

最終イメージ


編集部からのおすすめ:ZBrush による制作テクニックを学ぶには、書籍『ステップアップのための ZBrush ガイド』『ZBrush キャラクター&クリーチャー』をおすすめします。

 


翻訳:STUDIO LIZZ (TK)
編集:3dtotal.jp