フォトリアルなCG「兵士のポートレート」のメイキング

イタリアのキャラクターアーティスト Nicolo Granese氏 が、フォトリアルなCG作品「兵士のポートレート」のメイキングについて説明します(Maya、ZBrush、MARI、Knald 等使用)


Nicolo Granese
3Dキャラクターアーティスト|イタリア


はじめに

こんにちは、Think Tank Training Centre で学んでいる ジュニア キャラクターアーティストの Nicolo Granese です。今回のメイキングでは、中間学期の最終課題の制作プロセスを紹介します。このプロジェクトの主な目的は、1からキャラクターを作ることであり、中でも有機的なモデリングとスキンシェーディングに重点を置きました。コンセプトは Louie Palu氏 撮影のアメリカ海兵隊の兵士の写真です。

1. リファレンス

まず、兵士、装備品、衣服、そして、さまざまな顔の写真を集めます。このプロジェクトのねらいは似顔絵作りでなく「被写体をできるだけフォトリアルに見せること」です。そこで、収集した写真を 1つの画像にまとめました(顔、タクティカルベスト、戦闘用のスウェットまでを含む)。できるだけ解剖学的に正しいモデルにするため、他にも役立ちそうなイメージをいくつか入れています。

複数のリファレンスを1つの画像にまとめます

2. 頭部のスカルプディング

ZBrush で 球体 を作成し、頭部のブロックアウトから始めます。最初は、解像度を低くして一般的な形状をマークし、ダイナメッシュの解像度を徐々に上げながら、鼻・口・目・耳をスカルプトしていきました。最も難しかったのは口です。このとき、モデルをすべての角度から見ることが重要で、1つのビューだけに集中してはいけません。

これにより、モデルの全体像が見えてきて、形やボリュームがより正確になります。生気が感じられる形にするために、私は目の部分に多くの時間を費やしました。最後に Maya でリトポロジーを行います。正しくリトポロジーされた頭部を参照しながら、エッジループを適切な場所に配置します。

ダイナメッシュ(左)、リトポロジー(右)

ブロックアウト(左)、最終版(右)

3. タクティカルベストのモデリング

タクティカルベストとヘルメットは、Maya の基本形状からさまざまなベースメッシュをモデリング。ZBrush にそれらのモデルを読み込んでディテールを追加しました。ポケットなどの多くのオブジェクトは、必要に応じて修正された基本の立方体です。マガジン(弾倉)では、いくつかのリファレンス(側面・前面・上面・下面のすべてのビュー)を使い、写真の形状に沿ってモデリングしました。形はできるだけシンプルにするように心がけています。ローポリモデルが完成したら、キャラクターの体型に合わせて、[ソフト選択]でベースメッシュを修正します。

Maya のベースメッシュをモデリング

4. UV

UV は Maya で作成しました(Maya のツールが私のお気に入りです。特に UVツールキットはとても使いやすいので、手早く効率的に作業を行えます)。このキャラクターでは、テクスチャの解像度を上げるのに UDIM で UV を分割しました。

UV は UDIM で作成

5. テクスチャリング

まず、モデルを MARI にインポートして、Texturing.xyz で購入したテクスチャ(ディフューズとディスプレイスメント)を投影します。これは、ディテールに注意するだけの簡単な操作です(特に投影が歪まないように気をつける)。投影できたら、ディフューズマップを修正し、静脈や汚れのような小さなディテール、そして肌のさまざまな部分にトーンを加えていきます。肌のトーンに少し変化をつけるため、MARI のプロシージャル(特にクラウドノイズ)をたくさん使いました。

ディフューズマップを仕上げるため、肌の適切な場所に正しい部分がくるように気をつけながら、モデルにディスプレイスメントを投影します。場所によっては手の届きにくいものもあるので、テクスチャの投影とディスプレイスメントの正しい割り当てには、ちょっとした慣れが必要です。

2つの主要なパスを終えたら(まだ完成していませんが、次のステップのために一時中断)、ZBrush で黒い斑点や肌の不完全性といったディテールのスカルプトを始めます。続けて、ディスプレイスメントマップ(32ビットEXR)をエクスポートし、それを介して Knald(アンビエントオクルージョン(AO)・凸面・曲率・凹面などを作成できるプログラム)でいくつかのユーティリティマップを生成します。

マップを生成したら MARI にインポートして、肌にマイクロディテールを追加します。たとえば、AOパスで肌の内側の黒い斑点の汚れを加え、他のマップを組み合わせて、肌のディテールを表現しています。

ディフューズとディスプレイスメントを投影します

6. ライティング

今回のライティングはそんなに複雑ではありません。最終的なショットでは「兵士から見て右上のフィルライト」「左上のキーライト」「ヘルメットを照らす小さなトップライト」の3つを使用。もう1つのレンダリングでは、ライトを1つだけを使ってポートレートのスタイルを再現しています。この種のライティングは、スティーブ・ジョブズ氏の写真から着想を得たもので、人物の頭部を美しく見せるのにぴったりです!

キーライト、フィルライト、トップライトの 3点照明

7. グルーミング

眉毛とまつ毛は Maya の XGen で作成しました。[インタラクティブ グルーミング ツール]を使うのは初めてだったので、試しながら学んでいきました。XGen は非常に優れたツールで、今回のように基本的なことをするだけならそれほど複雑ではありません。いくつかの領域、たとえば、目の周りのエッジループを分離し、その領域をグルーミングしました。[密度]マップと[長さ]マップを多用して、よりリアルに仕上げています(ヘルプ

眉毛とまつ毛

8. シェーダ

レンダリングエンジンには V-Ray を使用します。高解像度(2,500px)に設定して、ノイズのしきい値(noise threshold)を 0.020 に下げました。これにより、レンダリング結果がきれいになります。また、レンダリング時間を短縮するために、V-Ray のオプションを最適化する必要がありました。これは頭部に SSS(サブサーフェススキャッタリング)を作成し、異なるディスプレイスメントを接続したためです(レンダリング時間が大幅に増加しました!)。

すべてのテクスチャを接続するには、Maya のハイパーシェードに関する知識が必要です。主な作業は頭部で、2つの異なるディスプレイスメント(Marine_LOD2DM.1001.exr、Displacement_1001.tif)と、ディフューズ、スペキュラなどの他のマップが適用されています。フォトリアルなルックを実現するには、時間をかけてすべてを設定しなければなりません。下図で頭部のシェーダを確認できます。

[ハイパーシェード]に表示された頭部のシェーダ

9. 最終レンダリング

 

最終レンダリング イメージ


編集部からのヒント:フォトリアルな CGキャラクターの制作テクニックを学習するには、書籍『3Dアーティストのための人体解剖学』『MAYA キャラクタークリエーション』をおすすめします。

 


翻訳:STUDIO LIZZ (TK)
編集:3dtotal.jp