【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード49:スタン・ウィンストン・スタジオの面接
ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!
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エピソード49:スタン・ウィンストン・スタジオの面接
『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシック・パーク』.. 80年代から90年代のハリウッド大作映画のクリーチャーのほぼすべてを生み出したと言っても過言ではない Stan Winston Studio(スタン・ウィンストン・スタジオ)。今回は、その思い出です。
>>> エピソード48:伝説のスタン・ウィンストン氏との思い出 のつづき
18歳でアメリカに渡り、19歳でこの業界に入って間もなく、20歳の頃、「スタン・ウィンストン氏のスタジオで、スピルバーグ監督の映画で実物大の恐竜を作っている」という噂を聞きました。当時、まだ駆け出しで、何の実力も、就労ビザもなかった私は、興奮すれども、そんなところで働くなんて、夢のまた夢の話でした。
最初のチャンスは、たしか22歳くらいの頃。
ある日、アパートに帰ると、スタン・ウィンストン・スタジオからメッセージが入っており、「アーティストを探している」ということでした。もう、留守電の前でガッツポーズをとって、1人跳ね上がって喜んだのをよく覚えています(笑)。
そして、面接の日時が決まり、ポートフォリオをもって、緊張しながら、スタン・ウィンストン・スタジオに行きました。その入口は、特殊造形のスタジオらしからぬ ものすごいキレイな作り。そして、そこから通されたところは、今や伝説のディスプレイルーム。そこには、今まで作られた数々の作り物たちが部屋じゅうに飾られているではありませんか!!
伝説のディスプレイルーム(※その当時から10年近く後のもの)
『シザーハンズ』や『ターミネーター』 のロボ、『エイリアン』のクイーンや『プレデター』、『ジュラシック・パーク』 のラプトルや Tレックスの頭部など、もう興奮して見まくっていた映画の本物の造形物が目の前に!!
こんなとこで落ち着けるわけがありません。ちびりそうなのを我慢するのに必死です。担当の人が、私のポートフォリオを見ている間も周りをキョロキョロしてしまいます。しかし、その興奮を隠して クールに装ったのが逆効果でした。そこまでの腕はないくせに、根拠のない若さからくる自信があったので、生意気に見られたのでしょう。残念ながら、その時は採用されませんでした。
次のチャンスは、それから5年ほど後にやってきました。
面白いことに、それは、以前書いた 自分の中の大きな壁を越えたときの事でした(※エピソード21:私に芸術の才能はない 参照)。1つの大きな壁を乗り越えたときには、本当にチャンスが来るものなんですね。(つづく!)
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