【特別寄稿】造形家 / 映画監督 片桐裕司の いろいろあっていいんじゃない?|エピソード96:最近の仕事 -『キャプテン・マーベル』

ハリウッドで彫刻家、キャラクターデザイナー、映画監督として活動。日本で開催する彫刻セミナーは毎回満席の片桐裕司さんのエッセーです。肩の力を抜き、楽しんでお読みください!


片桐 裕司 / HIROSHI KATAGIRI
彫刻家、映画監督

東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。
東京生まれ、東京育ち。1990年、18歳のときに渡米。スクリーミング・マッド・ジョージ氏の工房で働きはじめる。98年にTVシリーズ『Xファイル』のメイクアップでエミー賞受賞。その後、『ターミネーター』『エイリアン』『ジュラシックパーク』のキャラクタークリエーション等で有名なハリウッドのトップ工房スタンウィンストン スタジオのメインアーティストとして活躍(2000〜6年)『A.I.』『ジュラシックパーク』『タイムマシーン』『宇宙戦争』等の制作に携わる。現在、フリーランスの造形家、映画監督として活躍中。

エピソード96:最近の仕事 -『キャプテン・マーベル』

2015年 にクラウドファンディング での資金集めが成功した 私の監督作品『ゲヘナ~死の生ける場所』の制作のため、2年近くハリウッドの特殊メイク・造形業界から離れていました。

『ゲヘナ』もどうにか落ち着いて、「そろそろ稼がにゃー」と思ったのが 2017年の終わり。しかし、2年近く業界から離れていたため(と言っても どうしてもと頼まれて、3週間くらいは仕事しましたが)、定時でスタジオに通うのが 非常に億劫でありました。

離れていた時期の前半は、来る仕事を全部断っていたため、どうやら「ヒロシは自分の映画で忙しいからもう仕事はしない」と思われていた節もあり、仕事のオファーが長い事ありませんでした。したがって、久々の仕事探しの連絡をすることにしました。

「ここなら仕事があるだろう」と連絡したのは Legacy Effects というスタジオ。かつて、エイリアン・クイーン や、プレデター、ジュラシックパーク の恐竜などを生み出した 元 Stan Winston Studio(スタン・ウィンストン スタジオ)です。10年ちょっと前に オーナーである スタン・ウィンストン が亡くなって、諸々の事情で、スーパーバイザーたちが名前を変えて継承しました。

ここで最後に仕事をしたのは、以前書いた『AVP2』の直前。『アバター』が始まる直前だったので、14年くらい前でしょうか?(エピソード16:エイリアン vs プレデター vs アバター!? 参照)

2年ぶりくらいの特殊造形の仕事で、ここに連絡すると決めた理由は「人気のあるスタジオだから何かあるだろう」という期待と「家から車で10分かからない」距離だったからです。楽に通える!(笑)

とりあえず、携帯でスーパーバイザーに「仕事ないか?」ってテキストしたら、2分後くらいに「ウワァ 久しぶり! ちょっと待ってね!」と返信があり、その10分後に「来週から来てくれ!」という連絡が来ました。マーベルの仕事ということだけ教えてくれ、 ピンポイントの一発で決まって、超ラッキーのタイミングだったのです。月曜日に行ってみると、その仕事は『キャプテン・マーベル』とのことでした。

 

映画『キャプテン・マーベル』

アメコミに疎い私は、実は、キャプテン・マーベルを知りませんでした...

初日は もう「久しぶり~」って挨拶しまくりで、なかなか仕事にならずにいましたが、つい その前まで「また通う仕事はやだなー」って思っていたのが、昔の仲間に会うと「やっぱこれも楽しいなぁ」とすぐに思えてしまうので、仲間というのはありがたいものだとしみじみ感じますねぇ。

さて、仕事内容は『キャプテン・マーベル』に出てくるエイリアンのメイクアップ用の造形。多くは話せませんが、何種類か出てくるエイリアンの造形を全て 3人くらいでやりました。同じ種族がたくさん出てくるので、何人か違う役者の上に 同じ種類のエイリアンの造形をしたので、自分が作ったのはどの役者だったのか なんて覚えちゃいません。とりあえず、同じ種族なので(違うエイリアンも造形しましたが)。

 

この写真は最近ネットでリリースされたものですが、多分、自分のやつだとは思います。違うかもしれませんが

その時、まだ『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を見ていなかったので、これが どれほど重要なキャラかなんて 知る由もなかったです。「顎でけえな」くらいしか 感想なかったですから(笑)。ファンからしたら「愛がない」と言われてしまいそうですが、25年以上業界にいて 主役級のキャラの造形は いくつも経験してるので、特に もう愛はないです(笑)。ごめんなさい。だけども、仕事に対する愛はあります。

今年2018年は、日本での 彫刻セミナー もずいぶん忙しくなってきて、日本に 3週間滞在して LA(ロサンゼルス)に 5週間滞在。そして、また 日本で 4週間だとか、とにかく、行ったり来たりの生活で、LA にいる間は、この Legacy Effects で仕事をしています。プロジェクトの途中でも抜け出して、日本に行って、また 帰ったら、ここで仕事をする生活です。

その度にスーパーバイザーから「そういえば、日本国はもう営業してないって聞いたぞ」とジョークを交えた嫌味を言われながら、日本で 彫刻セミナー を開催しています。

こんな変則勤務 に対応してくれて 感謝ですが、何よりも、私が、他のアーティストの倍以上のスピードで造形をしているので、こういう仕事の仕方が許されるのだと思います。数週間の仕事でも、こなしている仕事量が半端ないので。「スピード」 これが 私が 20年以上磨いてきた技術で、今はどっぷりと その恩恵にあずかっているのです。

『キャプテン・マーベル』が終わる頃に『アバター2』の仕事がちょっとありました。これはもう 5年くらいちょこちょこ続いている異常なプロジェクトです。その時は 4~5人のアーティストで、同時に 1人1体同じ種族の造形をしたのですが、私は日本行きが控えてたので、他のアーティストの倍以上の速さでとっとと仕上げて、他のアーティストがまだ造形している中、残っていた『キャプテン・マーベル』の造形も ちゃっちゃと仕上げて 日本に来たのです。愛がないですね(笑)

最近の仕事のやり方はこんな感じです。

 

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