【インタビュー】芸術基盤はギークの世界:デジタルスカルプター Rafael Mustaine氏
フリーランス デジタルスカルプター Rafael Mustaine氏 が『死霊のはらわた (原題:The Evil Dead)』にインスパイアされたキャラクター「アッシュ」のスカルプティング、そして、仕事と並行して個人制作をすることの意義について語ります
Q.自己紹介をお願いします
名前は Rafael、ブラジルのサンパウロで生まれました。アクションフィギュア業界でフリーランス デジタルスカルプターとして活動し、中国のフランチャイズ キャラクターを開発しています。CG を始めたのは12年前ですが、当時のインターネットに簡単なチュートリアルはなく、YouTube や、学生・アーティストと情報交換できる SNS も発達していませんでした。こうした貴重なリソースがなくても制作を続けられたのは、好奇心があったからです。好奇心があれば成長でき、いずれチャンスが訪れるでしょう。
「Ash Evil Dead」のToolbag ビュー
Q. 制作ワークフローをおしえてください。アイデアはどこから得ましたか?
仕事と並行し、アーティストとしての向上と発展のため、個人プロジェクトを研究開発するのが好きです。今回紹介するプロジェクトは「Ash Evil Dead」です。私は『死霊のはらわた(原題:The Evil Dead)』シリーズのファンなので、このキャラクター制作はとても楽しいものでした。
制作プロセスはシンプルです。今回、ベースとなるカートゥーンスタイルのコンセプトを模索したのですが、これまでやってきたリアリズムと正反対のスタイルを体験でき、とても楽しめました。最終結果にも満足できたので、3Dプリントして、机の上に飾ろうと思っています。
「Ash Evil Dead」のプロセス
Q. 制作で苦労したことはありますか? 新しい学びはありましたか?
慣れない新しいスタイルや、良い質感を出すための新しいツール、レンダリング、マッピング、ブレンドシェイプなどを試せたので、とてもやりがいがありました。このプロジェクトのおかげで、カートゥーンスタイルのテクニックを向上させることができました。今回、最も重要だったのは、自信と落ち着きを持って発生したすべての問題に対処することでした。
Q. 仕事や個人プロジェクトで他に使用しているソフトウェアはありますか?
ZBrush、3ds Max、Photoshop、Marmoset Toolbag を使っています。これらのツールで、仕事と個人プロジェクトを開発しています。デジタルツールはクリエイターの日常生活に欠かせないものですが、良い結果を得るためには、しっかりとした芸術的素養、学習、そして献身も重要です。
ブラックパンサー ZBrushビュー
ブラックパンサー
Q. ポートフォリオをアップデートする秘訣・ヒントがあればおしえてください
仕事として受けたプロジェクトは機密性が高く、常に公開できるとは限りません。また、スタジオの許可が必要なので、時間もかかります。そのため、私はプロの仕事と並行し、常に個人プロジェクトを進めています。こうして私は、SNS上で好きなときに情報を公開できる自由とパワーを手に入れたのです。
最近は、個人プロジェクトとプロの仕事を合わせたオンライン ポートフォリオを通じて、多くの仕事を受けています。私からのヒントは、プロの仕事だけにこだわらず、常に勉強・練習し、うまくいったプロジェクトでオンラインプロフィールを更新していくことだと思います。
サイクロップス
Q. SNS を使っていますか? お気に入りのハッシュタグをチェックしていますか?
特定のグループには属していませんが、芸術的なコンテンツ・アクション・戦士・中世・SF・絵画・ゲーム・コミック・映画などを常に探すようにしています。私の芸術基盤はギークの世界であり、そのすべてから刺激を受けています。インターネットの力で、毎日のように新しいテーマやスタイルが登場し、クリエイターは何かしらの刺激を受けて革新的なものを生み出しているのです。
ドレイクソルジャーのToolbag ビュー
Q. 芸術的な目標はありますか?
ゲームや映画のプロデューサーとして、次世代のために素晴らしいキャラクターや美しいストーリーを開発し、一目置かれるアーティストになることです。私が最も重視しているのは、楽しみながら、アイデアやスタイルを試し、みんなの記憶に残るキャラクターとして生命を吹き込むことです。
サノスアーマーのToolbag ビュー
Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください
私は伝統的なドローイングと彫刻のトレーニングを受けているため、影響を受けたアーティストは何人もいます。グレン・ビルプ、フランク・フラゼッタ、アンドリュー・ルーミス、ジャック・カービー、カラヴァッジオ、ベルニーニ など。
こうしたアートの基礎があったからこそ、私はCG業界でアナトミー(解剖学)・構造・プロポーション・ボリューム・構図・写真などを意識しながら開発することができました。芸術を学び、偉大な巨匠を探すことは重要で、スキルアップにも役立ちます。献身的な努力を何年も続ければ、大きな成果がもたらされることでしょう。
サノスアーマーのToolbag ビュー
Q. 近年の作品についてお聞かせください
仕事として受けたプロジェクトに関しては残念ながら明かせませんが、個人プロジェクトを開発していて、とても楽しんでいます。定期的に私のSNSに登場するでしょう!
▼ Rafael Mustaine氏 の最新作は 以下のSNSで確認できます。
・ArtStation
・Instagram
編集部からのおすすめ: 色、構図.. アートのセオリーを学ぶ/再発見するには、書籍『デジタルアーティストが知っておくべきアートの原則 改訂版』そして、『続 デジタルアーティストが知っておくべきアートの原則』をおすすめします。