【インタビュー】リアルなものからデフォルメまで。キャラクターアーティスト 藤田 祐一郎 氏

「アート面でいうと、いつも挑戦的でかつ楽しさを感じるポイントはシルエットです」


藤田 祐一郎
キャラクターアーティスト|日本


Q. 自己紹介をお願いします

藤田祐一郎 といいます。ゲーム会社でキャラクターアーティストとして働いた後、現在は 株式会社 SAFEHOUSE にてキャラクターモデリングスーパーバイザーをしています。新しいソフトやワークフローの研究が好きです。また、リアルなものからデフォルメまで、いろんなスタイルのキャラクターを幅広く作ることを得意としています。仕事ではゲームエンジン向けのリアルタイムモデルを作ることが多いですが、個人制作ではプリレンダーのワークフローで制作することが多いです。

 

『Into the Cave』:『ディアブロ IV』のファンアート(左:最終イメージ / 中:Blender でのレンダリング画像 / 右:制作中のイメージ)

Q. 最新作の制作ワークフローをおしえてください

『ディアブロ IV』のファンアートである『Into the Cave』では、Blender の無料アドオン makehuman からボディのメッシュトポロジーを取ってきました。UV は調整しましたが、トポロジーは変更しませんでした。

この作品はプリレンダ画像にするつもりだったため、トポロジーは気にしませんでした。すべてのオブジェクトをスカルプトしたあと、基本的に ZBrush の Zremesher でリトポロジーを行い UV Master で UV をアンラップしました。そして、Blender でモデルと UVを整理して、シーンをレイアウトし、テクスチャは Substance Painter で描きました。ヘアグルーミング、ライティング、レンダリングは Blender で行い、Cycles でレンダリングしました。

 

オリジナルキャラクター

Q. 最新作での挑戦はありましたか? また、何か新しいことは学べましたか?

アート面でいうと、僕にとっていつも挑戦的でかつ楽しさを感じるポイントはシルエットです。リアルな作品であっても、「できるだけシンプルに」というのがシルエットのスタンダードなルールの 1つです。

また、この作品では配色も挑戦的でした。最初、上から暖色系のキーライトを当て、影(下)の部分を寒色系にしていましたが、これはこの作品においては間違いだと気付きました。というのも、上向きに暖色、下向きに寒色というのは、昼間の照明(太陽光が暖色、影の部分は空の色に照らされる)と同じで、「平和、普通、いつもの、つまらない」という印象になったからです。このイメージをよりドラマチックでアグレッシブなものに、また「ディアブロ」の世界観にあわせるために、暖色と寒色の上下を入れ替えました。

技術的には、Blender の Cyclesレンダラーを使って作品を作った初めての作品でした。基本的には十分な機能を持つレンダラーで、特にビューポートのノイズ除去やコンポジットシステムはイテレーションを上げてくれました。しかし、リージョンレンダリングする際に最後にレンダリングされた画像を消去されてしまうのは、ルックデヴには向いていないと感じました。

 

『Orc Bouncer』:個人制作のオリジナルキャラクター。さまざまな角度からのシルエットを意識しながら制作しました

Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください

最も影響を受けたのは、ドラゴンボールの 鳥山明さん です。どんなキャラクターを作るときもシルエットを重視しますが、その感覚は子供の頃に漫画を真似して描いたことで培われたものだと思います。他に好きなアーティストは、吉成曜さん、Simon Leeさん、Tooth Wuさん、Sangsoo Jeongさん、Bayard Wuさん、Maria Panfilovaさん、松浦聖さん...などなど、たくさんいます。

 

『雷神 Raijin:The Thunder-caller』:オリジナルキャラクター。Cubebrush のチャレンジ Artwar4 優勝作品

Q. 今後の展望についてお聞かせください

現在、Blender を使って AAAゲームのキャラクターを制作するチュートリアルを準備しています。制作過程をすべて録画していますので、全工程をご覧いただけます。時間がかかるのでいつ公開できるかはわかりませんが、なるべく早く完成させたいと思っています。個人制作では、リアルとデフォルメキャラの両方を作り続けたいと思っています。また、新しいソフトウェアやワークフローの探求も続けていきたいと思います。

 

『It's time to go home』:個人プロジェクト「Angel Flight 2042」より

 

藤田さん、お時間をいただきありがとうございました。(3dtotal.jp)


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編集:3dtotal.jp