【インタビュー】そのキャラクターはサムライ。キャラクターアーティスト Yulia Sokolova氏

ロシア出身、スペイン在住のキャラクターアーティスト Yulia Sokolova氏 は、3Dでキャラクターをデザイン・モデリングしています。彼女が「SAMURAI (サムライ)」の制作で克服した課題について、詳しく見ていきましょう


Yulia Sokolova
キャラクターアーティスト


Q. 自己紹介をお願いします

こんにちは、Yulia Sokolova です。私は、湖と山に囲まれたロシアの小さな町で生まれました。現在は太陽の降り注ぐスペインに居を移し、フリーランスの 2D/3Dキャラクターアーティストとして、アドベンチャーゲームのコンセプトデザインやキャラクターモデリングに取り組んでいます。

子どもの頃からビデオゲームやアニメーション映画に夢中でした。しかし、この業界で 3Dアーティストとして働き始めたのは最近のことです。それ以前にもゲーム開発経験はありますが、2010年頃のソーシャルネットワーク向けだったので、Flash のベクターグラフィックや 2Dアニメーションが中心でした。その後、『Disney's Star Darlings』の各種アセットを作ったり、モバイルアプリのステッカー(スタンプ)やアイコンを描いたりする仕事も経験しましたが、この頃になると、それだけでは物足りなくなり、もっと複雑で新しいことに挑戦したいと思い始めました。

2018年、3Dウェポンアーティストの婚約者のアドバイスを受け、キャラクターデザインと3Dモデリングを再開すると、インスピレーションが湧いてくるようになり、自分の仕事に情熱を見出せるようになりました。また、Mold3D Academy の2学期のコースを修了してスキルに磨きがかかり、大きな1歩を踏み出すことができました。

★Disney's Star Darlings | The Power of Twelve : Part 3(9分13秒)

Q. 制作ワークフローをおしえてください。今回のアイデアはどこから得ましたか?

Artstation で開催された「Feudal Japan」コンテストで Kati Sarin S氏 のコンセプト(SAMURAI)を見て、すぐに制作に取り掛かりました。Kati氏のスタイルは私のスタイルにとても近く、3Dで表現したときのルックをすぐに想像できたので、ZBrush でスカルプトを開始しました。

Q. 制作で苦労したこと や 新しい学びはありましたか?

今回のプロジェクトでは、いくつか意識したことがあります。まず、Tポーズのままにしたくないので、キャラクターのプレゼンテーションにこだわることにしました。とはいえ、リアルタイム キャラクターなので、ZBrush でポーズをつけるとスキンウェイトやテクスチャが気になります。そこで、Maya で簡単なリグを作って、ポーズをとらせることにしました。

もう1つは、単純さと複雑さのバランスを保つことです。スタイル的には、ディテール(しわや折り目、マテリアル、テクスチャなど)を最小限に抑えることを目標にしつつ、同時に、肌・衣装・武器などのマテリアルが同じに見えないように、リアリズムをできるだけ出したいと思いました。

Q. 仕事や個人プロジェクトで他に使用しているソフトはありますか

ゲーム用のさまざまなモデルを制作するときは、複数のソフトウェアを使っています。いつも ZBrush でスカルプトを開始し、ハイポリモデルができたら Maya に読み込んで、リトポロジーと UVを制作します。続けて、Substance Painter でベイクしてすべてのテクスチャを作成します。手描きのテクスチャを作成するときは、Photoshop3D-Coat を使うこともあります。

最後は美しいレンダリングと最終的なプレゼンテーションのために、Marmoset Toolbag ですべてをまとめ、シーンを設定し、ライトやマテリアルなどを調整します。もし私のレンダリングプロセスの舞台裏を知りたいのであれば、Marmoset のウェブサイトにある 私の記事 をチェックしてみてください。

Q. ポートフォリオをアップデートする秘訣・ヒントがあればおしえてください

アートポートフォリオを構築するときに学んだ素晴らしいヒントは「新作をアップロードしたら、古い作品を削除する」です。そうすれば、ポートフォリオの品質はあなたのスキルと共に成長(向上)し、きちんと整理された状態に保たれます。

もう1つのヒントは「平凡な作品の束にするのではなく、4~5つの強力な作品で構成する」です。過去の作品は自分の進歩を追跡するのに役立つと言う人もいるでしょう。それは真実ですが、通常は別フォルダに分ける、あるいは Instagram や Twitter のようなプラットフォームで作品を維持するようにしています。

Youtube の GDCチャンネルの動画「Killer Portfolio or Portfolio Killer? Industry Artists Weigh In(必勝のポートフォリオになるか、それとも台無しのポートフォリオになるか。業界のアーティストが重視すること)」では、いくつかの本当に有用な推奨事項を紹介し、さまざまなポートフォリオを見るときに、業界で仕事の候補者を選ぶ方法について議論されています。

★Killer Portfolio or Portfolio Killer? Industry Artists Weigh In(必勝のポートフォリオになるか、それとも台無しのポートフォリオになるか。業界のアーティストが重視すること)(64分13秒)

Q. SNSを使っていますか? お気に入りのハッシュタグをチェックしていますか?

はい。私は2D/3Dグラフィックス・ゲーム・アニメーションに関するいくつかのウェブサイトのメンバーです。そこにあるすべてのコンテンツに目を通すのは難しいですが、何か特定のものを探しているときは、役立ちそうな内容を確実に発見できるでしょう。

3dtotal:他のアーティストのインタビューをチェックしたり、チュートリアルを読んだり、ギャラリーを見たりします。

80.lv:インスピレーションを与えてくれる記事やチュートリアルがあります。さまざまなスタジオの求人情報も掲載されています。

Polycount:WIP(作業中)のスレッドをチェックしたり、ヘルプやフィードバックを探したりするのに重宝しているウェブサイトです。また、雇い主や従業員のための掲示板もあります。

ZBrushCentral:その名のとおり、デジタルスカルプターにとって居心地の良い場所です。

Artstation:自分のポートフォリオを展示したり、お気に入りのアーティストをフォローしたり、コンテストに参加したりできる有名な場所。興味深く刺激的なコンテンツや仕事のオファーもたくさんあります。

最後に、私は Twitter と Instagram で多くの人をフォローしています。これらのプラットフォームは、便利なヒント・WIP・スケッチを共有するのに最適な場所です。

Q. あなたにとって同僚の批評は重要ですか

他のアーティストと同じように、フィードバックや評価は必要不可欠だと思っています。コメントや批評のおかげでスキルに磨きがかかり、新しいキャラクターを作るたびにレベルアップできています。同時に、ポジティブなフィードバックをもらえたり、さまざまなギャラリーで紹介されたりすると、インスピレーションを得ることもできます。そして、新しい個人作品を作ったり、新しい技術を試したりするためのモチベーション維持にもつながります。

Q. 芸術的な目標はありますか

まだ道半ばなので、素晴らしい AAAゲームのプロジェクトやアニメーション映画に携わりたいです。プロのチームの一員となり、大きなスタジオで開発プロセスのニュアンスを学べるのは素晴らしい経験になると思います。

Q. お気に入りのアーティストは誰ですか? 手描き/デジタルどちらでもかまわないので、理由も一緒におしえてください

好きなアーティストの名前をすべて挙げるのは困難です! まず、私のスタイルに多大な影響を与え、貴重なフィードバックをくれたのが、Dylan Ekren、J Hill、Dachi Gog です。

そして、以下の人々は本当に素晴らしいものを生み出しています。Danny Mac、Olga Anufrieva、Shane Olson、Matt Thorup、Marc Brunet、Shayleen Hulbert、Michael Vicente (Orb)、Yekaterina Bourykina、Maria Panfilova。彼らは、たくさんの便利なテクニック・ワークフロー・チュートリアルを共有しているので、ぜひ その作品をチェックしてみてください。

Q. 最新作や次回作についてお聞かせください

いくつかのモデルがありますが、完成までに最終調整が必要です。すでに述べたように、私は個人プロジェクトに取り組みながら、新しいことを試しています。

その1つは、PBR の装飾品を使ったややリアルなスタイルのキャラクター です。もう1つは、いくつかのアセットを持つ クリーチャー です。また、あるゲームのために作っているキャラクターもいくつか紹介できることでしょう。エレガントな衣装で面白い設定になると思います。ご期待ください。

 

>> Yulia Sokolova氏 のチュートリアル:スタイライズ・サムライ:リアルタイム キャラクター『SAMURAI』のメイキング

 


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翻訳:STUDIO LIZZ (TK)
編集:3dtotal.jp