【インスピレーション】デジタルヒューマン / 3Dポートレートの歴史(2003 – 19年)

2013年:私こそが、その危険だ! 「Walter White」

制作:Marko Ivanovic
2013年の作品を選ぶのには苦労しました。ここに、自分の作品を出すことにとても躊躇しましたが、関連するすべてのアートを見つけるため "Best CG Portrait"(ベスト CG ポートレート)というキーワードで Google 検索したところ、皮肉にもすぐに「Walter White」がリストされたのです。そういうわけで、客観的な立場から他の作品を選んだように、自分の作品もリストアップすることにしました。

これが最高のポートレートではないと知っています。つまり、Luc Begin氏 の作品のような画期的なものは表現されていません。しかし、その時代の文化的アイコンの CGポートレートを制作することは有効な試みと言えるでしょう。多くの人々は「キャラクターをCGで再現する」という名誉ある試みを称賛しています。

個人的なことを言わせてもらえるなら、大事なのは「私自身の成長がとてもよく出ている」ことです。2009年にインスピレーションを受けた「少年」は、リアリズムの境界を押し広げる集団的努力に関与する「男」へと成長したのです。これは「努力が報われるかどうか疑問に思っている人々」に伝えたい大事なストーリーです。努力を続け、嫌になるまで 前に進めば「今日のインスピレーション」「明日の現実」になることでしょう。

「Walter White (ウォルター・ホワイト)」(制作:Marko Ivanovic)

2014年:「Happy Birthday Nana」「Robert De Niro」

制作:Dan Roarty / Hossein Diba
ご存知のように、退屈で静的、動きや生気のない無表情なポートレートを作成するアーティストもいます。しかし、ある瞬間をとらえた表情によって、生命の本質を伝える 別の取り組みがあります。2人のアーティストが、これを試みて、ポートレートを進化させ、見事に成功させました。 Dan Roarty氏 の「Happy Birthday Nana (ハッピーバースデー、ナナ)」と Hossein Diba氏 の「Robert De Niro (ロバート・デ・ニーロ)」を選出します。驚いたことに、これらの作品は共に 2014年に発表されました。2人の表情から想像して「ロバート・デ・ニーロが消息不明だったナナとついに再会した場面」に見えると言う人もいたことでしょう。

「Happy Birthday Nana (ハッピーバースデー、ナナ)」(制作:Dan Roarty)

「Robert De Niro (ロバート・デ・ニーロ)」(制作:Hossein Diba)

2015年:「Self-portrait」

制作:Marco di Luca
2015年の注目すべき作品は、Marco di Luca氏 の「Self-portrait (自画像)」です。この作品は以前から取り組まれてきたものですが、ついに 彼は KeyShot で並外れた仕事を達成しました。これは KeyShot のレンダリングエンジンと先進的なスキンワークが使用された最初のポートレートの1つです。

「Self-portrait (自画像)」(制作:Marco di Luca)

2016年:「Harley Quinn / Margot Robbie」「Michonne」

制作:Dan Roarty / Marco di Luca
2016年、前述の先駆者2人が帰ってきて、画期的な個性と親密さを備えた作品で 私たちを驚かせます。Dan Roarty氏 の「Harley Quinn / Margot Robbie (ハーレイ・クイン / マーゴット・ロビー)」と Marco di Luca氏 の「Michonne (ミショーン)」は、温かみあるポートレートの個人的な指標となっています。驚くほど素敵で、鑑賞者を 感情の瞬間に引き込みます。

「Harley Quinn / Margot Robbie (ハーレイ・クイン / マーゴット・ロビー)」(制作:Dan Roarty)

「Michonne (ミショーン)」(制作:Marco di Luca / ドラマ『ウォーキング・デッド』より)

2019年:「Stan, The Man」

制作:Kris "Antropus" Costa
神のいない宗教はありません。信奉する記事の数や賛美する Pinterest ボードを考えると「3Dポートレートには宗教がある」と言っても過言ではないでしょう。Kris "Antropus" Costa 卿 は、皆から崇拝されている神の化身です。2019年、これまで見たことのないような作品がもたらされました。そのようなディテールは「実物からアートを作成・複製する」ことに使われるべきであり、その逆(アートから実物が作られる)にならないことを望みます。

Kris がどんな薬を飲んでいるのかわかりません。それを使えば 10年以上(あるいは2-3年?)傑出しますが「陰謀論を引き起こす妄想に取り憑かれる」という副作用があります。おそらく、"チャーリー・シーン" と呼ばれる薬かも知れません(Kris氏の現在のプロフィールは、ILM のリードバンカー、陰謀理論家、占い師)。冗談はともかく、彼が成し遂げた偉業は シュールレアリスムとの境界であり、サイケデリックな物質の影響を通して見るようなディテールを実現しながらも、顔の全体的な構造と完全性は維持されています。皆さん、努力と献身は報われるのです!

「Stan, The Man (偉大な男、スタン・ウインストン)」(制作:Kris "Antropus" Costa)

「Stan, The Man (偉大な男、スタン・ウインストン)」(制作:Kris "Antropus" Costa)

新時代の幕開け

3Dマスターの先人たちは、次世代へ何かを残して、退いていくことを望んでいます。絶えず変化する新技術を考えたとき、3Dの未来がどうなっていくのかは不確実であり、特定スキルの妥当性を予測することはできません。現在においても、3Dスキャン/3Dプリント、人工知能、等々、新しく開発中のさまざまな技術があります。 これからの新しい世代は、古くからの技術を極めるのではなく、新しい技術を組み合わせ、これまでにない効率性、堅牢性、革新的な方法によって、リアリズムを実現することでしょう。インスピレーションを得るのは良いでしょうが、ゲームのルールが完全に書き変わる新しい世界において、過去のマスターをなぞるだけでは不十分でしょう。

 


編集部からのおすすめ:リアルな CGキャラクターの制作テクニックを学ぶには、書籍『3Dアーティストのための人体解剖学』『MAYA キャラクタークリエーション』をおすすめします。

 


翻訳:STUDIO LIZZ (TK)
編集:3dtotal.jp