息をのむ景色:『ドラゴン サイトシーイング』のメイキング

フランス、リヨンのイラストレーター&コンセプトアーティスト Klaus Pillon氏 が、息をのむ景色『ドラゴン サイトシーイング』のメイキングを共有します(Photoshop使用)


Klaus Pillon
イラストレーター&コンセプトアーティスト


これから、私の個人制作作品『ドラゴン サイトシーイング』の制作ステップと思考プロセスを説明します。それらはプロの仕事の場合でもほぼ変わりません。構図、ストーリーテリングの重要性、その伝達方法についての考えを紹介しましょう。また、効率的にディテールの作業に取り組めるように、ワークフローを特定の順序で進めることについても説明します。

ステップ01:スケッチ

個人制作なので内容に制限はありません。私は、さまざまな国や地域を旅し、新しい動物を目にすることからインスピレーションを得ました。その気持ちを再現しながらも、ひねりを加えるため、ドラゴンを描くことにしました(ドラゴンが嫌いな人はいませんよね?)。まず、Photoshop で線画をスケッチして、構図を大まかに描きます。心の中の大まかなアイデアから始め、その周りを構築していき、追加・変更していくのが私の好みです。進めていくうちに面白くなっていきます。線画は素早く変えられるので、ストーリーが少しずつ現れてきます。このやり方によって、スケッチプロセスは有機的で楽しいものになることでしょう。

この段階では、ディテールをあまり描き込まず、ラフに留めます

ステップ02:リファレンス

とても重要なステップです。ここで、絵に含める要素のルックについて多くの決定を下していきます。私の求める雰囲気、周囲の様子、ドラゴンの肌/皮のテクスチャを伝えるため、ライティングの設定についてリサーチしました。存在しない要素に関する選択肢にも基準となるものは必要です。リファレンスボードがあると真実味を出す助けとなることでしょう。たとえば、この絵には未来的な車が描かれています。もし、実際の車の写真を参照しなければ、このデザインは一貫性と説得力に欠けるルックになったことでしょう。

リファレンスとして使用した写真

ステップ03:明度と色を大まかにペイント

集めたリファレンスを基に、明度と色を大まかにペイントしていきましょう。ここはライティングに注力する段階です。課題は、焦点(大きなドラゴン)を最も目立させながらも、前景のキャラクターも十分に引き立つようなライティングにするです。そこで、私は、夕方のライティングを選択、ドラゴンと空との間に素敵なコントラストを加え、前景の明度をグループ化、面白いシルエットを作りました。

この段階ではラフに保つように努めています。ディテールは必要ありません。そうすれば、さまざまな光源が各要素にどう影響するかに集中できます

ステップ04:最も困難な部分から手をつける

明度と色が正しく見えてきたら、ディテールの作業に移ります。通常、私は、最も鑑賞者の目を引き付けるところである焦点、そのディテールから始めます(この絵ではドラゴン)。ただし、今回は車にパンチがなく、シーンを損なっているように感じたため、手直しが必要だと感じました。現実に基づいた説得力が必要です。また、この部分が私のコンフォートゾーン(居心地のいい場所)から少しずれていました。車が正しく見えると、他の部分の見映えも良くなるとわかっていたので、時間をかけて デザインを変更し、リファレンスを確認しながら、満足できるまで、線を洗練させました。スケッチの段階で上手く見えても、何かがおかしいと感じたら、私は何度でもやり直します。

最終的なかたちになるまで、何度もデザインを変更します

ステップ05:メインの焦点

それでは、メインの焦点であるドラゴンに取り組みます。繰り返しますが、絵の要素に ある程度の階層(前景・中景・後景)を持たせることで、焦点の数を減らします。これにより、ある領域は、他の領域より少し粗く感じられ、作品全体にわたって、焦点に鑑賞者の目を誘導します。このドラゴンでは、筋肉の動きに従いながら、肌にテクスチャ写真をいくつか配置して、ある種の解剖学的構造を組み込みました。そして、その上にペイントを重ね、程よいディテールを加え、テクスチャと合わせています。

ドラゴンは まだ粗いのですが、他の領域の作業を進めるには十分なディテールです

ステップ06:前景のキャラクターにディテールを加える

車とドラゴンの作業を終えたら、次はキャラクターです。簡単なプロセスです。光源を残すことを意識しながら(太陽は左に。空を環境光として)、ディテールを維持します。また、シルエットをできるだけ読みとりやすく、面白みを保つように努めました。SFの雰囲気を高めるため、衣装はジャンプスーツにしています。ところで、この時点まで、私は、キャラクターがこの場所にいる理由について考えていませんでした。そこで、彼らの隣にカメラを加えて、ナラティブ(鑑賞者が体験できるストーリー)を改善しました。そして、ドラゴンのディテールを完成させ、道路とその周辺にテクスチャやペイントを加えました。

さまざまな要素を個別レイヤーに分けて作業すると、より柔軟に対応できます

ステップ07:空のディテールと仕上げ

最終段階では、空に雲を加えてディテールを描きます。また、残りの要素に干渉しないようにラフな感じを維持します。遠くのドラゴンとは距離があるので ディテールを描き込みません。大気中の霧によって、メインのドラゴンを前に押し出し、周囲を飛ぶ小さな鳥を加え、スケール感を演出します。ここで、見て欲しいものに視線が集中するように エッジを描き始めます。

やがて、作業を終わりの時がきます。私は、ディテールとラフな要素のバランスを面白く保ち、やり過ぎないように心がけています

編集部からのヒント

正確なパース、色と光で作るムード.. 幻想的な絵を描くには、書籍 『Photoshopで描くSF&ファンタジー』を、絵における「感情、ムード、ストーリテリング」の技法を学ぶには、書籍『続 デジタルアーティストが知っておくべきアートの原則』 をお勧めします。

 


翻訳:STUDIO LIZZ (TK)
編集:3dtotal.jp