Photoshop 使用、『放棄された宇宙港』のメイキング

南米エクアドルの コンセプトアーティスト Marco Espinosa氏 が 個人制作作品『放棄された宇宙港』のメイキングを紹介します(Photoshop 使用)


Marco Espinosa
コンセプトアーティスト|エクアドル

はじめに

こんにちは、私は Marco Espinosa です。これから、個人制作作品『Abandoned Port (放棄された宇宙港)』のメイキングを紹介します。正直なところ、納得いく仕上がりにできるスキルが身につくまで 作業を延ばしていたので、かなりの時間を要しましたが、この制作では多く学びがありました。本記事が皆さんのスキルアップや制作の手助けになれば幸いです。

01 アイデアを発展させる

どんな種類のペインティングでもそうですが、最初のステップではクールなアイデアを想像し、それをスケッチしていきます。私はこのような環境に取り組む場合、全体的な構図を整え、興味深い形を見つけるために、白黒のサムネイルスケッチを作ります。当初のアイデアは「川のそばの市場にある宇宙港」で、ブラジルのスラム(ファヴェーラ)のように家を積み上げたら面白いと思いました。そして、そのアイデアをさらに発展させていきました(これからの手順を見ていくとわかります)。

白黒のサムネイル

02 リファレンスを収集する

スケッチを終えたら、それがベースになります。多くのアーティストは最初にリファレンスを収集しますが、私のワークフローでは 2番目のステップです。まず、自分の知識のみを存分に使って スケッチし、次に、膨大な数の写真を参照して、作品を改善していきます。Pinterest ボードを作成すれば、画像の管理・保存に役立つでしょう。その後、プロジェクトで使えそうな画像を PureRef にドロップします。

リファレンス画像

03 構図を決める

この段階でパースと構図を修正し、シェイプ(形状)と「ネガティブスペース」を通して、鑑賞者の目を宇宙船(焦点)に導きましょう。私は、視線を逸らす余白は残さないように心がけ、代わりに船や雲の要素を描いて、焦点に導いています。

パース線

04 写真を活用してシーンを構築する

宇宙船のデザインには、廃車になったフォルクスワーゲン・ビートルの面白味のある正面を試し、その形状の一部を最終デザインに残しました。その後、リファレンス写真を使って ラフスケッチを作成しました。絵画のようなルックを与えるため、Photoshop の[フィルター]>[ノイズ]>[ダスト&スクラッチ]を適用し、見映え良くなるまでスライダーをいじります。

ラフスケッチ

05 ムードを決める

お気に入りの構図ができて、全体的なアイデアが明確になってきました。しかし、私は現時点のムードに確信が持てず、夜のシーンのほうが面白いと感じました。この段階はまだスケッチなので、改善したい部分がたくさんあります。昼光から夜へ移行するには、最初にカラーリファレンスを設定し、色情報を持つすべてのレイヤーの色を一致させます([イメージ]>[色調補正]>[カラーの適用])。

(※編集部注:[カラーの適用]を使ったワークフローについては チュートリアル「墜落した Xウイング。コンセプトアート『A game while waiting』のメイキング」 もご覧ください)

ムードを変更する

06 もう1度想像して、やり直す

さらに発展させるタイミングですが、気に入らない点がいくつかあります。確信の持てないものに多くの時間を費やす前に やり直すことにしました。前と同じ方法で、建物の構造・彫像・アスファルトのテクスチャなど、より多くの情報を含む写真を使って修正していきます。

再スタート

07 空気遠近法と取り入れる

空気遠近法は非常に重要です。遠くにあるものを空に溶け込ませて合わせれば、イメージに現実世界のような奥行きを加えられるでしょう。図の後景の建物は、空気遠近法を適用した単なるシェイプ(形状)です(この作業で 私は[グラデーションツール]を使います)。各建物を別々に作成し、イメージが平坦に見えないようにしてください。

空気遠近法

08 ディテールに取り組む

地面にはアスファルトのテクスチャを使い、不透明度を少し下げて、描画モードで馴染ませます。ソフトな[消しゴムツール]で まっすぐなエッジを整え、[スタンプツール]で不要な穴を覆いましょう。テクスチャやディテールを作成する方法は、写真だけではありません。壁にはテクスチャブラシを使い、コンクリートとサビの自然な感じを与えています。

テクスチャを適用する

09 ライトと霧の効果

ライトは作品の中で最もホットなスポットになるケースもありますが、今回は別の目的で使いました。宇宙船の後ろの街は遠く離れているので、ライトは気を散らすほど明るくありません。さらにこれらのライトにも空気遠近法を適用し、光源が遠ざかるほど、その強度を弱めます。この「霧の効果」は、シーンに微妙なムードと神秘性を加えるのに、うってつけの手段となりました。

ライトと霧の効果

10 グラフィックの追加と仕上げ

最後のステップでは、信憑性のあるシーンに感じられるように、グラフィティ(落書き)とゴミを配置しました。このグラフィティは、よく見かけるものです。品質にこだわる必要はありませんが、このシーンに合う内容にしましょう。このような場合、「政治的な意見の対立」がいつも役立ちます。ラテンアメリカ人の私は、路上で この種のグラフィックをよく目にします。

手前の破壊された机は、イマジナリーラインを誘導して焦点に導くのをサポートします。また、左の建物には、人影を配置しました。これは、視線誘導に「棒を持った男」「鳥」を描くのを避けたかったからです。

 

最終イメージ

 


編集部からのおすすめ: フォトバッシュやブラシのテクニックで 素早く絵を仕上げる技法、スピードペインティングを学ぶには 書籍『スピードペインティングの極意』を、Photoshop を使ってペイントする方法を学ぶには 書籍『Photoshop デジタルペイントの秘訣』をおすすめします。

 

 


翻訳:STUDIO LIZZ (TK)
編集:3dtotal.jp