1時間で描くスピードペインティング「ファンタジー:水路」

韓国出身のコンセプトアーティスト Sung Choi氏 のスピードペインティングの入門チュートリアル「ファンタジー:水路」を紹介します


Sung Choi
コンセプトアーティスト/イラストレーター|米国

はじめに

このチュートリアルは、スピードペインティングの入門編です。スピードペインティングは、頭の中に面白いアイデアやビジュアルが浮かんだとき、素早く形にしておくのに最適です。たまたま何かを見て、脳内でインスピレーションが駆け巡っているときは実行しましょう。

アイデアが浮かんだら、まずシンプルな白黒のスケッチから開始。この2つの明度を使えば、魅力的な構図とライティングを両方同時に表現できます。私にとってこのパートは最も重要であり、最終イメージをはっきりと描けるように多くの時間を掛けます。

01 初期のラフスケッチ

何よりも最初に行うことは、ラフな線画を描くことです。この段階では大体のストーリーと構図が分かれば良いので、細かく描く必要はありません。

初期コンセプトは「未知の環境の巨大な水路網、そして、遠くに見えるキャラクターと騎乗生物(クリーチャー)」です

図01:基本アイデアと構図を示すラフスケッチ

02 形状を描く

作成したラフスケッチをガイドにして、主な形状をいくつか描いていきましょう。それぞれの形状に異なる明度を設定し、個別レイヤーに配置してください(不透明度は変更せず100%で作業すると、上に形状をペイントしても色が重複しません)。

このタイミングでは、最小限の明度を使用しながらライティングをよく検討し、シーン全体の構図に専念しましょう。私は別のプロジェクトで、ぴったりのスケッチが見つかるまで、1時間以上かけることもあります。それぞれの形状の作成には、不透明度100%のシンプルなブラシを使用します。今回は Photoshop のデフォルトブラシの1つ、円ブラシを使いましょう。

図02:主な形状を描く

03 色を試す

形状を描いたら、色をテストしてカラースキームの検討を始めましょう。イメージのいたるところでアースカラーを使う予定なので、独特のカラーパレットを試してください。それと同時に、リファレンス写真を使ってさまざまなテクスチャも配置してみます。

図03:色とテクスチャを試す

04 反射を追加する

反射を追加するため、イメージ全体を統合したレイヤーを作成して([Ctrl]+[Shift]+[Alt]+[E]キー)、垂直に反転してください。続けて、水の形状のレイヤーにクリップ([Ctrl]+[Alt]+[G]キー)、水平線でちょうど反転するように動かします。

さまざまなカラースキームを試すだけではダメで、それが違和感なくストーリーと調和しなければいけません。シーン内の色は常にその環境の影響を受けるので、空と地面の色は極めて重要です。水面に映った空の反射が不自然にならないよう、控えめに調和させましょう。

図04:反射は絵に奥行きとリアリズムを加えるのに最適です

05 バリエーション

空の色に少し変化をつけた後、周囲に紫がかった色を使うことにしました。こうすると、シーンがあまり退屈になりません。また、手元にあるテクスチャを基に、岩の形状を修正します。地面に赤い葉をいくつか加えて色味に変化をもたせても良いでしょう。

図05:鑑賞者を退屈させないためには、どんなイメージでもバリエーションが重要な要素になります

06 岩と植物

大きく張り出している部分の前に岩を加えるなど、さらにディテールを加えていきます。ここでは明度に注意しましょう。オリジナルの明度に比べて、ステップ05 で加えた明度が高過ぎるように感じます。必要に応じて調整に時間をかけてください。

植物などの背景要素を追加し、面白味のある領域を作っていきます。構図の邪魔をしては困るので、控えめにしましょう。植物にはカスタムブラシを使い、さまざまな明度の緑で背の高い草の塊をペイントします([ブラシ]メニューの[カラー]を使用)。

図06:植物と岩を加えると絵がまとまります

07 仕上げ

シーンに必要なすべての要素を並べたら、少し時間を掛けてラフなエッジや形状のクリーンアップを行います。仕上げは、絵をクリーンアップしてすべての要素にまとまりを持たせることが目的です。 その後、[レベル補正]や[カラーバランス]を使って、コントラストをいくらか追加(やり過ぎに注意)。最後に新規レイヤーを1 つ作成し、[混合ブラシツール]でもう1 度だけエッジを整えましょう。これでスピードペインティングは完成です。

 

図07:完成イメージ

※本チュートリアルは、書籍『スピードペインティングの極意』からの抜粋です

 


編集部からのおすすめ: フォトバッシュやブラシのテクニックで 素早く絵を仕上げる技法、スピードペインティングを学ぶには 書籍『スピードペインティングの極意』や 書籍『Photoshop で描くデジタル絵画 完全改訂版』をおすすめします。

 


翻訳:STUDIO LIZZ
編集:3dtotal.jp