2時間で描くコンセプトアート:「ファンタジー:静寂」

フリーランスコンセプトデザイナー Ioan Dumitrescu氏 が、写真をベースにしたスピードペインティングの制作過程を紹介します


Ioan Dumitrescu
フリーランス コンセプトデザイナー|ルーマニア

このチュートリアルでは、架空の歴史的景観をペイントします。人類の歴史とは関連性の低い別の世界を舞台に、魔法の土地のストーリーを作りましょう。そこでは、さまざまな物質が人の意志で(想像するだけで)折り曲げられます。

テーマに関するリファレンス画像を使わなくても、アイデアを得られることをお見せしましょう。さまざまなものに目を向けることが重要です。想像を広げ、ペインティングの条件に従って直観を働かせれば、思いがけないアイデアが湧いてくることでしょう。

今回は忍耐が重要です。空白のカンバスやアイデアの乏しさにひるまず、まったく新しいものを生み出せるまたとない機会と捉えましょう! チャンスをつかみ、失敗を受け入れることが、習得するための唯一の方法です。2時間掛けて、雰囲気や感を表現するためのさまざまな方法を模索すれば、努力は必ずや報われることでしょう!

01 リファレンスを見つける

今回は、特定のリファレンス画像を使いません。自分が持っている画像ライブラリをスクロールして、その中からインスピレーションが湧いてくるものを見つけました。私は、線路とその脇に停車している貨物列車の写真に決めました。

気に入ったのは、この写真がもたらす「感覚・寂しげで静穏な環境・優れたパターンを織りなすさび付いた貨物列車」です。これは GoPro という小型カメラで撮影しました。GoPro を散歩のときにポケットに忍ばせておけば、何か面白いものを見つけたときに手軽に撮影できます。

図01:静穏のひらめきを得た元の写真

02 ペインティング開始!

色をサンプリングし、現在の写真のパースに従ってペインティングを始めましょう。私はここから巨大な鋼鉄の砦を想像しました。カメラに向かって伸びる線路を、地面から空に向かって「流れ込む」砦の基礎として捉えます。これを追加することで、シーンはかつての面影を残しつつ、不吉で放棄された土地に変貌します。

図02:アイデアを決め、リファレンス画像を選んだら、ペインティングを始めましょう!

03 カンバスを広げる

たくさんの要素をシーンに取り込んだので、次は、カンバス右側を拡張してさらに開発できる空間を作りましょう。作業を制限するものはありません。ここまでで、初期アイデアをすべてスケッチしたかもしれませんが、もっと面白いものに作り替える時間は2時間あります。さらに突き詰めてみましょう。

図03:カンバスを右側に広げて、シーンにスペースをつくります

04 雰囲気を変える

現時点のイメージは、私の意図をまだ完全に反映していません。壮大かつ平穏な雰囲気に仕上げるのが最終目標です。これを実現すべく、建築物を主なコントラストの要素として捉え、その周りに手を加えましょう。スケールを大きくする必要がありますが、最終ステップで行います。まず、空を雲と霧で覆われた夕景に変えていきましょう。

元の写真を見返すと、この地面は雪で埋めるのが良さそうです。ここでは古い携帯電話で撮影した冬の写真から雪を選択、建築物と地面を覆っていきます。私は写真にある積もった雪の形状を気に入ったので、そのトーンと色を変更して環境に合わせました。空と調和して、すべてが静寂に包まれたシーンを心に思い浮かべましょう。

図04:空を変更し、地面に雪を追加して、静穏さを表現します