1時間で描くスピードペインティング「ファンタジー:巨大遺跡」

コンセプトアーティスト James Paick氏 が、写真をベースにしたスピードペインティング、幻想的な巨大遺跡の描き方を紹介します


James Paick
コンセプトアーティスト/クリエイティブディレクター|米国

はじめに

このチュートリアルでは、私のフォトライブラリで見つけたテクスチャを使って、幻想的な巨大遺跡の描き方を紹介しましょう。

まず、良い写真のリファレンスライブラリが手元にあることは重要です。インターネット上でもたくさん見つかりますが、外に出て自分自身で撮影した写真に勝るものはありません。現在作業中の作品にぴったり合う露光量・風景・コントラストで、アイデアや想像力をかき立てる面白いランドマーク・雲の塊を撮影しましょう。自然界だけでなく建物やその他の人工物にも、魅力的で精巧な建築要素がたくさん含まれています。

01 シルエットから始める

初期段階では、目指しているコンセプトについて考えてみましょう。私は「ムードのあるライティングで照らされた自然景観にある遺跡」というコンセプトに決めました。まず、背景に使用する適切なリファレンスを探しましょう。前述のとおり、選択肢はたくさんあります。ここで使用するのは、撮影旅行に出かけたときに撮った写真で、背景の空に最適です。

次は遺跡のシルエットを作りましょう。興味をかき立てるものならば、どんな建築のテクスチャから作ってもかまいません。さまざまな円やアーチ形状を使用し、人工的かつ有機的な雰囲気を目指してください。

図01:ムードのある空を背景に、背後から照らされた力強い形状から始める

02 シルエットを塗りつぶす

前述のリファレンス写真を集める旅行で、このシルエットを塗りつぶすのに最適なある建物の外観の写真を撮りました。まず、反復テクスチャでメインの球体を塗りつぶしましょう。

次に、球体をコピーし、[自由変形]で小さくします。この小さめの形状を遺跡の隅に配置。土台に使用できそうなテクスチャの面白い部分を見つけ、それをコピー、ミラーリングしてデザインを作ります。

このとき、明度と色相・彩度を忘れずに調整してください。テクスチャリングが背景と合わない色相や色温度になると問題になります。また、テクスチャが正しい平面上に位置するように、パース線の使用をお勧めします。

図02:テクスチャと反復形状を用いてシルエット内部の形状をデザインする

03 分析・調整・修正

少し時間を空け、一歩離れてデザイン全体を見渡しましょう。このとき、さらにデザイン調整して、強調・発展させる方法がないかを確認します。ときどきインスピレーションの源泉や、頭の中にあるアイデアについて再考すると良いでしょう。このデザインをコンセプトに近付けるには、影のアクセントや反復形状の一部を強調する必要があると気づきました。自分のデザインに満足するまで、発展と修正を続けてください。

図03:反復形状やモチーフを使用して、遺跡の雰囲気を強調する

04 デザインを微調整する

絵にディテールを加えながら、ブラシでデザインを微調整していきます。私はこの段階を「ステッチ」と呼んでいます。ペイントによって、フォトテクスチャとデザインをステッチする(縫い合わせる)からです。混み合った領域にディテールを追加するとともに、鑑賞者が目を休めるシンプルな形状の領域も作りましょう。反復形状やデザイン要素を用い、有機的かつ人工的な雰囲気のデザインに微調整するのが目的です。

図04:形状やリズムをさらに研究し、ファンタジーの雰囲気を醸し出す審美的なデザインを作る

05 ライティングと仕上げ

デザインが決まったら、ライティングと雰囲気の強化、そして最後の細かい修正に専念します。ここでは主に表面のマテリアルとディテールに焦点を当てましょう。これはペイント全体の最終段階ですが、最も時間をかけることもあります。スピードペインティングでは、描き込みたい衝動を抑えるためにカンバスを小さくしておきます。イラストではなく、全体のコンセプトに重点を置くようにしましょう。

 

図05:最終イメージ

※本チュートリアルは、書籍『スピードペインティングの極意』からの抜粋です

 


編集部からのおすすめ: フォトバッシュやブラシのテクニックで 素早く絵を仕上げる技法、スピードペインティングを学ぶには 書籍『スピードペインティングの極意』や 書籍『Photoshop で描くデジタル絵画 完全改訂版』をおすすめします。

 


翻訳:STUDIO LIZZ
編集:3dtotal.jp