「嫉妬」というテーマで:『Envy』のメイキング

07 壁を乗り越える

1つの作品に長時間取り組んでも、上手く仕上げられないことがよくあります。時間を費やしたのに、結果は不十分なのです! 今回も時間をかけて顔を作成したものの、結果には満足していません。こういった場合、強制的に別パートの作業に移ります。

次はライティングに注目し、寒色系の緑の光をキャラクターの顔に当ててみましょう。Photoshop の[ソフトライト]と[乗算]モードでイメージの角を暗くすると、主なコントラストが顔に集中し、その結果、鑑賞者の視線がそこに集まります。また、手をペイントして光るパーティクルを加え、腰には鱗のテクスチャを加えます。

図08:顔のライティングを改善し、影を利用して全体のボリュームを強調します

08 顔と骨格

完成イメージがよりはっきりと見えてきました。寒色系の緑がかった肌をもつヘビの少女(または人魚)の肖像画になりそうです。彼女は暗闇の中でしか生きられず、そのせいで目がほとんど見えないのかもしれません。あるいは、かつて人間の少女だったのに今は呪われてこのような姿になっているのかもしれません。これを考慮して顔を描き直し、もっと柔らかくしていきます。

絵にナラティブを取り入れると意思決定を慎重に考えられるようになり、鑑賞者とイメージの関わりを強くします。顔立ちが決まったので次は体も描きますが、上に衣装を重ねるので控えめにしましょう。首と胸部の境目を調整し、肩と腹部を描きます。

図09:再び顔を描き直します。私はよく鏡や自分の写真をリファレンスとして使用します

09 コントラストとファッションデザイン

長時間にわたって描画していると、絵が少しくすんできて、コントラストが失われてきます。そこで、最終段階に近づいてきたら、絵にコントラストを取り戻しましょう。これを行うには、Photoshop で2つの機能を使います。

最初に[レベル補正]を適用、次に[特定色域の選択]で[レベル補正]したトーンを修正します。また、この段階で、金色の模様が施された透明な生地をスケッチします。ブラウスをひらひらさせて優美な効果を生み出し、イラストの神秘性を強調したいと思います。

図10:ここではソフトブラシを選択、柔らかく、滑らかで透明な生地の性質を伝えます

10 ヘビ

「嫉妬」というテーマを考えていると、「熱く火照った」イエローオレンジのヘビが少女の手の中にいるというアイデアを思いつきました。嫉妬は激しく強力で、中毒的な感情です。暖色系のヘビは、このキャラクターの寒色系の緑の肌に対して強いコントラストを生み出します。また、黄色いヘビは、少女の黄色い目と鱗で覆われた体を引き立ててくれます。

図11:オレンジのヘビが、このイメージとテーマを結びつけます

11 顔と手

キャラクターの顔と手は重要な焦点なので、このステップでこれらに戻ります。私の考えでは、キャラクターを描くときの最も重要なパーツになります。作成したい焦点に応じて、一部の領域からラフなブラシストロークを削除。その一方で、別の領域にはブラシストロークをさらに追加します。ここで肌にもテクスチャを追加します。

図12:キャラクターの顔と手を見直します

12 最後の微調整

主な作業はすべて完了しました。後は、髪の毛・頭飾り・さまざまなパーティクルエフェクトなどのディテールを仕上げ、絵に動きを取り入れるだけです。イメージの見た目を新鮮に保ちたいので、ディテールをあらゆる所に描くのはやめましょう。

図13:色と描画を微調整します

13 仕上げのエフェクト

最後のステップでは、ヘビが放つ暖かいグローを髪の毛や顔にまで広げて、嫉妬の象徴のインパクトを高めます。さらにヘビ自体を長くして、構図の曲線や流れを増やしたり、頭飾りを強調して、威厳の感覚を強めます。 Photoshop には[アンシャープマスク]フィルターや[ノイズ]フィルター(量は2.5 程度)など、イメージを仕上げるのに便利なエフェクトがあります。いろいろと試し、どれがイメージを向上させ、際立たせるか確認することをお勧めします。

ここで、ようやくリラックスできます。次の日の生産性がさらに高くなるよう、十分に働いた後には休憩が必要です。

 

図14:完成イメージ

※本チュートリアルは、書籍『続 デジタルアーティストが知っておくべきアートの原則 -感情、ムード、ストーリーテリング-』からの抜粋です


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翻訳:STUDIO LIZZ
編集:3dtotal.jp