「愛情」というテーマから発想を得て:『誰かを愛する』のメイキング

07 経験に基づいて

私はスケッチを始める前からずっと、シスジェンダー、ノンバイナリー、または両性具有のカップルを描くべきか真剣に悩んでいました。サムネイルからも分かるように、この作品の取り組み方を決めかねていたので、ジェンダーの部分を曖昧にしていたのです。最終的に、失った愛と切望の痛みに関する私自身の記憶、個人的な経験に基づいてシスジェンダーの方向で進めることにしました。ただし、2人がキスしている幽霊のようなキャラクターについては特定の人物を想定せず、シスジェンダーのカップルではない人物を参考にしています。

図07:すべての要素を慎重に吟味しましょう

08 最初のブレンド

私はいつもシェーディングプロセスを、擦筆(円筒状に巻いた紙、ブレンドツール)で素早く進めます。擦筆を使えばキャラクターの構造を描き出し、光源の位置を決定して、陰影の入った形状をデザインできます(デジタルで作業しているなら、[指先]ツールで実行できます)。また、大きなドローイングの場合、指でブレンドしています。このステップは、後で陰影のディテールを入れるための基礎作りです。

図08:擦筆で陰影の基礎を作ります

09 ラフなシェーディング

擦筆とグラファイト鉛筆(またはグラファイトスティック)を交互に使い、すべての陰影に形状と最初のトーンを追加します。濃い明度はあまり入れずに、陰影をさらに加えるための下地を作ります。このステップでは、思いも寄らないライティングとシェーディングのアイデアを得られるので、リファレンスが鍵になります。ただし、私はリファレンスにあまり頼らず、そこから必要な情報だけを抜き出して、自分の美的センスでフィルタリングします。

図09:完成した陰影の基礎

10 最終レイヤーのディテール

私のお気に入りは、陰影の上にディテールを入れるステップです。ここでは小さなスケールで作業を進め、自然に任せて全体のデザインをもう1 段階引き上げます。焦点の位置も決定し、最も面白い領域にフォーカスします。対照的に、他の領域はラフなまま残します。

図10は、スキャンしてデジタルで色を入れる前の最終スケッチです。ネガティブスペースでシルエットを引き立てている点など、スケッチの明確さとデザインを気に入っています。

図10:陰影の上に線画を追加します

11 大まかに色を入れる

色を少し加えて、イメージを仕上げていきましょう。この作業はデジタルで行います。まず、完成したグラファイトのスケッチをスキャンして、Photoshop でクリーンアップします。次に、別レイヤーでシルエットに単色を入れ、作業したいドローイングの一部を簡単に選択、区別できるようにします。このレイヤーは選択範囲として使うので、そこに描画しないようにしましょう。手描きで作業しているなら、半透明な媒体である「水彩絵の具」を使えば、乾いた後に上から鉛筆で上書きできます。

図11:各シルエットに明確な色を追加します

12 カラーパレットの発展

ここでカラーレイヤーをさらに追加します。この色がスケッチの環境を決定づけることになります。キャラクターがいる場所や、彼らが誰かとキスをしているという点を除き、シーンの情報があまりないので、これを機会に色とライティングで場所を表現します。私はこの2人をクラブやパーティといった人工の明かりの下に配置したいので、複数色の光源を使います。

図12:カラーパレットの実験

13 完成イメージ

単純な背景を追加し、シルエットを加えて、作品を統一します。手で着色したときに付く汚れを再現するため、色とトーンのぼかしのスポットをいくつか重ね合わせます。これでイラストは完成です! 今後、皆さんが自分の作品を制作する際に、ここで紹介した思考プロセスが、慎重な決断を下すためのヒントになることを願っています。

 

図13:完成イメージ

※本チュートリアルは、書籍『続 デジタルアーティストが知っておくべきアートの原則 -感情、ムード、ストーリーテリング-』からの抜粋です


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翻訳:STUDIO LIZZ
編集:3dtotal.jp